【解答】
(問1)③
(問2)1.② 2.③ 3.② 4.②
【解説】
連結財務諸表作成の基礎的前提となる、連結基礎概念に関する問題です。〔文章〕の内容は、企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(以下、連結会計基準)51項の引用(一部修正)です。わが国では親会社説を採用しつつも、経済的単一体概念と整合的な取扱いが相当数採用されているという現状にあります。
(問1)
親会社説と経済的単一体説の説明は、しっかり押さえておきましょう。2つの立場の違いは、連結財務諸表による情報提供を誰のために行うか、という視点の違いを起点として、連結上の資本や利益の範囲の違いとして表れます。
ちなみに、経済的単一体説の説明文は、①です。
(問2)各連結手続きと連結基礎概念の関係
1.親会社説では、親会社株主に帰属する部分のみが連結上の資本と利益を構成しますので、連結上の当期純利益も親会社株主に帰属する部分のみからなります。他方、経済的単一体説に立った場合、すべての連結会社の株主持分が連結資本を構成することになるため、連結上の当期純利益も親会社株主だけでなく非支配株主に帰属する部分を含むことになります。なお、連結会計基準では、経済的単一体説的な当期純利益を表示しつつも、非支配株主に帰属する当期純利益を控除することで、最終的には親会社株主に帰属する当期純利益を表示することとしています。
2.全面時価評価法については、経済的単一体説のみと整合するように思えますが、親会社説に立った場合でも「親会社が支配を獲得した時点で、子会社の資産および負債もそのすべてが親会社の支配下に入る」と考えることができます。このため、全面時価評価法はいずれの基礎概念にも基づく方法といえます。
3.設問文はいわゆる全部のれん法のことを説明しています。IFRSや米国基準で採用されている方法であり、非支配株主持分に係るのれんが計上されるため、経済的単一体説と整合的であると考えられています。連結会計基準では、購入のれん法(親会社株主持分に係るのれんのみを計上する方法)が採用されています。
4.アップ・ストリーム取引によって生じた未実現利益を消去した場合、親会社説では、親会社持分相当のみを消去する(非支配株主持分相当については、企業集団外部者との取引による実現した利益とみる)ことになります。他方、設問文にあるような全額消去・持分按分負担方式による修正は、経済的単一体説に基づく処理ということになります。
つぶ問は、2018年9月号~2019年8月号までの連載「独学合格プロジェクト 簿記論・財務諸表論」(中村英敏・中央大学准教授/小阪敬志・日本大学准教授)に連動した問題です。つぶ問の出題に関係するバックナンバーはこちらから購入することができます。
【つぶ問】一覧
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つぶ問1-2(財務諸表論)
つぶ問1-3(財務諸表論)-概念フレームワーク
つぶ問1-4(財務諸表論)-企業会計原則
つぶ問2-1(財務諸表論)-棚卸資産の評価
つぶ問2-2(財務諸表論)―棚卸資産の評価
つぶ問2-3(財務諸表論)―固定資産の減損
つぶ問2-4(財務諸表論)―棚卸資産
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つぶ問3-2(財務諸表論)―資産除去債務
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つぶ問3-4(財務諸表論)―研究開発費
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