つぶ問2-4(財務諸表論)―棚卸資産


【解答】
設問1
① 原価法  ② 最小単位  ③ 正味売却価額  ④ 使用価値  ⑤高い方 (*③と④は順不同)

設問2
通常、固定資産は単独で使用しているのではなく複数を組み合わせて利用することで、キャッシュ・フローの獲得に貢献する。そのため、その獲得する単位でグルーピングを行う必要がある。しかし、割引前将来キャッシュ・フローが多いグループと少ないグループを組み合わせてより大きい単位でグルーピングをしてしまうと、全体で割引前将来キャッシュ・フローが帳簿価額を上回り、少ないグループで減損損失が計上されないことが生じてしまう。そのため、グルーピングにあたってはキャッシュ・フローを生み出す最小の単位とされている。

【解説】
財務諸表論では注記が問われることもあります。ありとあらゆる注記を覚えることは難しいですが、理論の学習で出てくる内容については、解答できるようになることが望ましいです。

設問1
空欄の中でも特に①は「低価法」ではなく「原価法」です。法人税法などを同時に勉強している方は「低価法」としないように気をつけてください。

評価損を計上する処理について、有用な原価を繰り越すための処理と考えるならば取得原価基準に含まれるため、財務諸表では「原価法」という注記がされます。この考え方については、本誌10月号もしくは9月7日のつぶ問を確認してください。
②については次の設問2の解説、③~⑤も本誌2018年10月号もしくは前回のつぶ問を確認してください。

設問2
今回はグルーピングを行う理由とグルーピングの方法の論拠の2つが問われています。棚卸資産では品目ごとに評価損を計上しますが、解答にあるように固定資産では複数を組み合わせて企業が利用することによりキャッシュを獲得しています。店舗の建物だけ、陳列棚だけ、レジの機械だけ、という形でバラしても、あまり意味がありません。そこで、キャッシュを獲得する単位でグルーピングを行って、割引前将来キャッシュ・フローと比較を行うことになります。

グルーピングを行う範囲はキャッシュ・フローを生み出す最小単位とされます。例えば、グループAの帳簿価額が100千円・割引前将来キャッシュ・フローが150千円、グループBの帳簿価額が100千円・割引前将来キャッシュ・フローが80千円の場合、別々に見ればグループBで減損が必要になるところ、合体すると帳簿価額200千円・割引前将来キャッシュ・フロー230千円となり、減損が不要という判定になってしまいます。さらに、グループを大きくしていくと、企業全体が1つのキャッシュ・フローを生み出す単位と考えられなくもありません。そのため、固定資産をバラしても意味がないですが、グループを大きくしすぎても回収可能性を反映できないため、最小の単位を用いることになります。

つぶ問は、2018年9月号~2019年8月号までの連載「独学合格プロジェクト 簿記論・財務諸表論」(中村英敏・中央大学准教授/小阪敬志・日本大学准教授)に連動した問題です。つぶ問の出題に関係するバックナンバーはこちらから購入することができます。

【つぶ問】一覧
つぶ問1-1(財務諸表論)
つぶ問1-2(財務諸表論)
つぶ問1-3(財務諸表論)-概念フレームワーク
つぶ問1-4(財務諸表論)-企業会計原則
つぶ問2-1(財務諸表論)-棚卸資産の評価
つぶ問2-2(財務諸表論)―棚卸資産の評価
つぶ問2-3(財務諸表論)―固定資産の減損
つぶ問2-4(財務諸表論)―棚卸資産
つぶ問3-1(財務諸表論)―リース
つぶ問3-2(財務諸表論)―資産除去債務
つぶ問3-3(財務諸表論)―資産除去債務
つぶ問3-4(財務諸表論)―研究開発費
つぶ問3-4(財務諸表論)―研究開発費
つぶ問4-1(財務諸表論)―有価証券
つぶ問4-2(財務諸表論)―有価証券
つぶ問4-3(財務諸表論)―有価証券
つぶ問4-4(財務諸表論)―有価証券
つぶ問5-1(財務諸表論)―引当金・繰延資産、退職給付
つぶ問5-2(財務諸表論)―引当金・繰延資産、退職給付
つぶ問5-3(財務諸表論)―引当金・繰延資産、退職給付
つぶ問6-1(財務諸表論)―純資産(各項目、自己株式、新株予約権)、包括利益
つぶ問6-2(財務諸表論)―純資産(各項目、自己株式、新株予約権)、包括利益
つぶ問6-3(財務諸表論)―純資産(各項目、自己株式、新株予約権)、包括利益
つぶ問6-4(財務諸表論)―純資産(各項目、自己株式、新株予約権)、包括利益
つぶ問7-1(財務諸表論)―外貨、デリバティブ、ヘッジ、税金、税効果
つぶ問7-2(財務諸表論)―外貨、デリバティブ、ヘッジ、税金、税効果
つぶ問7-3(財務諸表論)―外貨、デリバティブ、ヘッジ、税金、税効果
つぶ問7-4(財務諸表論)―外貨、デリバティブ、ヘッジ、税金、税効果
つぶ問8-1(財務諸表論)―特商、工事収益、新収益認識
つぶ問8-2(財務諸表論)―特商、工事収益、新収益認識
つぶ問8-3(財務諸表論)―特商、工事収益、新収益認識
つぶ問8-4(財務諸表論)―特商、工事収益、新収益認識
つぶ問9-1(財務諸表論)―CF計算書、会計上の変更
つぶ問9-2(財務諸表論)―CF計算書、会計上の変更
つぶ問9-3(財務諸表論)―CF計算書、会計上の変更
つぶ問9-4(財務諸表論)―CF計算書、会計上の変更
つぶ問10-1(財務諸表論)―連結、のれん
つぶ問10-2(財務諸表論)―連結、のれん
つぶ問10-3(財務諸表論)―連結、のれん
つぶ問10-4(財務諸表論)―連結、のれん
つぶ問11-1(財務諸表論)―企業結合、事業分離
つぶ問11-2(財務諸表論)―企業結合、事業分離
つぶ問11-3(財務諸表論)―企業結合、事業分離
つぶ問11-4(財務諸表論)―企業結合、事業分離


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