本試験、合格発表、「その先」のこと―キャリアについて考えよう!
- 2026/8/31
- キャリア戦略

脇田弥輝(税理士)
【編集部より】
8月には税理士試験、公認会計士論文式試験が実施され、11月には両試験とも合格発表があります。税理士受験生の場合は次の科目の受験勉強を始めている人もいますが、いずれにせよ合否のわからない状況を数か月の間過ごすことになります。 本試験や合格発表、「その先」を見据えて、今何を考えておくとよいでしょうか。経験豊富な実務家の方々からメッセージをお寄せいただきました。
合格発表を待つ今だからこそ、「試験の先」を考えてみよう
8月の税理士試験、公認会計士試験を受験された皆さん、本当にお疲れさまでした。
試験が終わってホッとしたのも束の間、11月の合格発表まで、なんとも落ち着かない時間が続きますね。
税理士試験であれば、すでに次の科目の勉強を始めている人もいるでしょう。一方、5科目目を受験して官報合格を待っている人は、「受かっていたら、もう勉強しなくていい。でも、落ちていたら……」という、なんとも宙ぶらりんな状態かもしれません。「受かっている気もする」「いや、あそこを間違えたからダメかもしれない」と、何度も頭の中で試験をやり直しているかもしれません。
でも、結果は11月まで変わりません。だったらこの時期、少しだけ「試験の先」のことを考えてみませんか。
合格はゴールではなく、次のスタート
試験勉強をしていると、どうしても「合格すること」が人生の大きな目標になります。
もちろん、それでいいと思います。私自身も受験生の頃は、とにかく「合格したい!」と思って勉強していました。でも、税理士になってから振り返ると、合格はゴールではありませんでした。むしろ、そこからがスタートでした。
・税理士になったら、どんな仕事をしたいのか。
・どんなお客様と関わりたいのか。
・勤務を続けるのか、転職するのか、いつか独立するのか。
・専門分野をつくるのか。
・仕事以外の時間をどう過ごしたいのか。
資格を取ったからといって、すべてが決まるわけではありません。でも、「選べること」は確実に増えていきます。だから、合格発表を待つ今の時期に、「受かっていたら何をしよう?」と考えてみてほしいのです。
・転職サイトを眺めてみる。
・興味のある税理士法人や監査法人を調べてみる。
・実際に働いている人の話を聞いてみる。
・独立している人の発信を読んでみる。
すぐに何かを決めなくても大丈夫。「こんな働き方もあるんだ」「私はこういう仕事が好きかもしれない」…そんなふうに、試験の外側に少し目を向けてみるだけでいいと思います。
もし不合格だったら?
そしてもう一つ。考えたくないことかもしれませんが、「もし不合格だったら?」ということも、少しだけ考えておいてもいいと思います。これは、「落ちることを想定しましょう」という意味ではなく、不合格だったときに、自分の人生まで否定しないためです。
私は税理士試験に何度も不合格になっています。最初に受験した簿記論は不合格。翌年は簿記論と財務諸表論を受けて、両方とも不合格でした。あの頃は、「いつまでやっても受からないんじゃないか」「こんなに時間もお金も使って、家族に迷惑かけてまで続けていいのかな」と思ったこともありました。
でも、その翌年に簿記論に合格しました。その後もすべて順調だったわけではありません。
今になって思うのは、試験の結果は、その年、その日の「結果」であって、自分自身の価値を決めるものではないということです。
勉強したことは、合格しなければ意味がないのか
試験勉強は、合格という結果が出ないと、「今年一年、何だったんだろう」と思ってしまいがちです。でも、決してゼロではありません。税法や会計の知識はもちろんですが、それだけではありません。
・仕事が終わって疲れていても机に向かったこと。
・朝早く起きて勉強したこと。
・遊びたい日にも予定を調整したこと。
・模試でひどい点数を取っても、また次の答練を受けたこと。
・家族や仕事とのバランスに悩みながら、それでも続けたこと。
そこには、知識だけではない力…「長い期間、一つの目標に向かって努力した経験」が身についています。これは、合格できなかったからといって消えるものではありません。
仕事をしていれば、思うようにいかないことはたくさんあります。
そんなとき、「私、あの試験勉強を何年もやったじゃん」と思えることがあるんです。受験勉強中には気づかなくても、その経験に助けられる日は、きっとあります。
合格でも、不合格でも、人生は続いていく
11月、合格という文字を見たら、思いっきり喜んでください。ここまで頑張った自分を、ちゃんと褒めてあげてください。そして、次は「資格をどう使っていくか」を考えてみてください。
もし不合格だったら、落ち込んでいいです。悔しがっていいです。すぐに「来年頑張ります!」なんて思えなくてもいいと思います。でも、少し時間がたったら、「じゃあ、私はここからどうしよう?」と考えてみてください。
もう一度受験する。勉強方法を変える。仕事とのバランスを見直す。科目を変える。少し休む。…選択肢はいくつもあります。
大切なのは、不合格を「終わり」にしないこと。合格も、不合格も、長い人生の途中にある一つの出来事です。
11月までの時間を「待つ時間」にしない
合格発表までは、まだ時間があります。結果を予想して一喜一憂するだけの2~3ヵ月にするのは、もったいないです。試験が終わった今だからこそ、会いたかった人に会ったり、読みたかった本を読んだり、仕事について考えたり、家族との時間を楽しんだり。
そして少しだけ、「資格を取った先で、私はどんなふうに働きたいんだろう」「どんな人生にしたいかな」と考えてみてください。
税理士になること、それ自体が人生の目的ではありません。資格は、自分が望む人生に近づくための、とても強力な「道具」の一つです。
そして、試験勉強を続けてきた時間も、合格するためだけの時間ではありません。身につけた知識も、努力する力も、時間をやりくりする力も、何度転んでもまた立ち上がった経験も、全部、これからの自分の中に残っていきます。
11月に届く結果がどちらだったとしても、皆さんが積み重ねてきたものまでなくなることはありません。合格の先にも、不合格の先にも、ちゃんと道があります。
だから、まだ結果の分からない今は、少し顔を上げて、その先を見てみてください。次の一歩は、合格発表の日からではなく、今日から踏み出しましょう。
<執筆者紹介>
脇田弥輝
脇田弥輝税理士事務所代表
出産後、会計・税務知識ゼロから税理士を目指す。個人税理士事務所、税理士法人勤務を経て2016年開業。同年4月より東亜大学通信制大学院法学専攻非常勤講師。
著書
・『教えてみき先生! 税法論文ってどう書くの?』(中央経済社)
・『改訂 ダンゼン得する知りたいことがパッとわかる青色申告と経費・仕訳・節税がよくわかる本』(ソーテック社)他











