【解答】
(問1)意思決定有用性
(問2)まず「意思決定との関連性」とは,会計情報が投資家の意思決定に積極的な影響を与えることを意味し,投資家の予測や行動が改善されるような情報価値を有する会計情報には,意思決定関連性がある。他方,「信頼性」とは,会計情報が信頼に足ることを意味し,会計情報が一部の関係者の利害に偏らないという中立性,また会計情報が測定者の主観に左右されないという検証可能性,そして企業の活動事実と会計上の項目とが明確に対応するという表現の忠実性の3つの下位概念によって支えられている。「意思決定との関連性」と「信頼性」は,一方を重んじれば他方が軽んじられるという,トレード・オフの関係にある。(283字)
【解説】
討議資料「財務会計の概念フレームワーク」における会計情報の質的特性について,意思決定有用性の構造に関する問題です。
概念構造については,2018年9月号(財務諸表論)の「【図表4】会計情報の質的特性の概念図」を把握することが重要です(以下に再掲します)。
意思決定有用性は,投資家が企業の不確実な成果を予測するのに有用であるという性質です。
この基本的要請を満たすため,あらゆる会計基準の規定の背景には,対象とする取引や事象について,投資家の意思決定に有用な会計情報を提供するという目的があります。
今後,各種会計基準の原文を読み進めていけば,「有用な情報を提供する」という趣旨のフレーズに出会うことが多々あるでしょう。そのような考え方の背後に,本問で確認したような意思決定有用性に関する概念構造があることを知っておくことは,とても重要です。
概念そのものを理解することは簡単ではありませんが,下記の【図表】のような図(またはイメージ)としてとらえておけば,知識の整理が行いやすくなるでしょう。
つぶ問は、2018年9月号~2019年8月号までの連載「独学合格プロジェクト 簿記論・財務諸表論」(中村英敏・中央大学准教授/小阪敬志・日本大学准教授)に連動した問題です。つぶ問の出題に関係するバックナンバーはこちらから購入することができます。
【つぶ問】一覧
つぶ問1-1(財務諸表論)
つぶ問1-2(財務諸表論)
つぶ問1-3(財務諸表論)-概念フレームワーク
つぶ問1-4(財務諸表論)-企業会計原則
つぶ問2-1(財務諸表論)-棚卸資産の評価
つぶ問2-2(財務諸表論)―棚卸資産の評価
つぶ問2-3(財務諸表論)―固定資産の減損
つぶ問2-4(財務諸表論)―棚卸資産
つぶ問3-1(財務諸表論)―リース
つぶ問3-2(財務諸表論)―資産除去債務
つぶ問3-3(財務諸表論)―資産除去債務
つぶ問3-4(財務諸表論)―研究開発費
つぶ問3-4(財務諸表論)―研究開発費
つぶ問4-1(財務諸表論)―有価証券
つぶ問4-2(財務諸表論)―有価証券
つぶ問4-3(財務諸表論)―有価証券
つぶ問4-4(財務諸表論)―有価証券
つぶ問5-1(財務諸表論)―引当金・繰延資産、退職給付
つぶ問5-2(財務諸表論)―引当金・繰延資産、退職給付
つぶ問5-3(財務諸表論)―引当金・繰延資産、退職給付
つぶ問6-1(財務諸表論)―純資産(各項目、自己株式、新株予約権)、包括利益
つぶ問6-2(財務諸表論)―純資産(各項目、自己株式、新株予約権)、包括利益
つぶ問6-3(財務諸表論)―純資産(各項目、自己株式、新株予約権)、包括利益
つぶ問6-4(財務諸表論)―純資産(各項目、自己株式、新株予約権)、包括利益
つぶ問7-1(財務諸表論)―外貨、デリバティブ、ヘッジ、税金、税効果
つぶ問7-2(財務諸表論)―外貨、デリバティブ、ヘッジ、税金、税効果
つぶ問7-3(財務諸表論)―外貨、デリバティブ、ヘッジ、税金、税効果
つぶ問7-4(財務諸表論)―外貨、デリバティブ、ヘッジ、税金、税効果
つぶ問8-1(財務諸表論)―特商、工事収益、新収益認識
つぶ問8-2(財務諸表論)―特商、工事収益、新収益認識
つぶ問8-3(財務諸表論)―特商、工事収益、新収益認識
つぶ問8-4(財務諸表論)―特商、工事収益、新収益認識
つぶ問9-1(財務諸表論)―CF計算書、会計上の変更
つぶ問9-2(財務諸表論)―CF計算書、会計上の変更
つぶ問9-3(財務諸表論)―CF計算書、会計上の変更
つぶ問9-4(財務諸表論)―CF計算書、会計上の変更
つぶ問10-1(財務諸表論)―連結、のれん
つぶ問10-2(財務諸表論)―連結、のれん
つぶ問10-3(財務諸表論)―連結、のれん
つぶ問10-4(財務諸表論)―連結、のれん
つぶ問11-1(財務諸表論)―企業結合、事業分離
つぶ問11-2(財務諸表論)―企業結合、事業分離
つぶ問11-3(財務諸表論)―企業結合、事業分離
つぶ問11-4(財務諸表論)―企業結合、事業分離