長島正浩
(茨城キリスト教大学経営学部教授)
全31回のプログラムで、税理士試験・財務諸表論に強くなる!
論点ごとに本試験に類似したミニ問題を用意しました。まずは問題1にチャレンジし、文章全体を何度か読み直したところで問題2(回によっては問題3も)を解いてみましょう。そして、最後に論述問題を解いてください。
まずは問題にチャレンジ!
包括利益を表示する目的は,期中に認識された取引及び経済的事象( ① を除く。)により生じた( ② )を報告することである。包括利益の表示によって提供される情報は,投資家等の( ③ )が企業全体の事業活動について検討するのに役立つことが期待されるとともに,( ④ )との連携(純資産と包括利益とのクリーン・サープラス関係)を明示することを通じて,財務諸表の理解可能性と( ⑤ )を高め,また,国際的な会計基準との( ⑥ )にも資するものと考えられる。
問題1
文中の空欄( ① )から( ⑥ )にあてはまる適切な用語を示しなさい。
問題2
クリーン・サープラス関係の意味を説明しなさい。
解答
問題1
① 資本取引
② 純資産の変動
③ 財務諸表利用者
④ 貸借対照表
⑤ 比較可能性
⑥ コンバージェンス
問題2
クリーン・サープラス関係とは,ある期間における資本の増減(資本取引による増減を除く。)が当該期間の利益と等しくなる関係をいう。
基本的な考え方
・個別財務諸表においては、当期純利益にその他の包括利益の内訳項目を加減して包括利益を表示する。
・連結財務諸表においては、 包括利益のうち親会社株主に係る金額及び非支配株主に係る金額を付記する。
・その他の包括利益の内訳項目は、その内容に基づいて、その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、為替換算調整勘定、退職給付に係る調整額等に区分して表示する。
論述問題にチャレンジ!
包括利益とは?
包括利益とは、ある企業の特定期間の財務諸表において認識された純資産の変動額のうち、当該企業の純資産に対する持分所有者との直接的な取引によらない部分をいう。当該企業の純資産に対する持分所有者には、当該企業の株主のほか当該企業の発行する新株予約権の所有者が含まれ、連結財務諸表においては、当該企業の子会社の非支配株主も含まれる。
包括利益を表示する計算書の2つの形式とは?
包括利益を表示する計算書は、①当期純利益を表示する損益計算書と当期純利益にその他の包括利益の内訳科目を加減して包括利益を表示する包括利益計算書からなる形式(2計算書方式)と②当期純利益の表示と当期純利益にその他の包括利益の内訳科目を加減した包括利益の表示を1つの計算書(損益及び包括利益計算書)で行う形式(1計算書方式)のいずれかによる。
包括利益と当期純利益のそれぞれの情報の有用性の優劣は?
包括利益の表示の導入は、包括利益を企業活動に関する最も重要な指標として位置づけるということではなく、当期純利益に関する情報と併せて利用することにより、企業活動の成果についての情報の全体的な有用性を高めることにある。したがって、投資者等の利害関係者から広く認められている企業の経営成績としての当期純利益に関する情報の有用性を高めることを前提としており、包括利益の表示によって当期純利益の重要性を低めるものではない。包括利益の表示の導入は、当期純利益の計算方法を変更するものでもない。
〈執筆者紹介〉
長島 正浩(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師、会計事務所(監査法人)、証券会社勤務を経て、資格予備校、専門学校、短大、大学、大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後、松本大学松商短期大学部准教授を経て、現在に至る。この間30年以上にわたり、簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。
※ 本記事は、会計人コース2020年1月号別冊付録「まいにち1問 ポケット財表理論」を編集部で再構成したものです。
〈バックナンバー〉
第1回:キャッシュ・フロー計算書
第2回:1株当たり当期純利益
第3回:金融商品会計①
第4回:金融商品会計②
第5回:金融商品会計③
第6回:棚卸資産会計①
第7回:棚卸資産会計②
第8回:収益認識会計
第9回:固定資産会計①
第10回:固定資産会計②
第11回:ソフトウェア会計
第12回:研究開発費会計
第13回:繰延資産
第14回:退職給付会計
第15回:資産除去債務
第16回:税効果会計
第17回:ストック・オプション会計
第18回:自己株式
第19回:準備金の減少
第20回:純資産の部の表示
第21回:株主資本等変動計算書
第22回:企業結合会計①
第23回:企業結合会計②
第24回:事業分離会計
第25回:連結会計
第26回:外貨換算会計
第27回:過年度遡及会計