つぶ問9-3(財務諸表論)―CF計算書、会計上の変更


【解答・解説】

(1) A会計方針の変更:遡及適用を行う

 自発的な変更だけではなく、新しい会計基準が公表されたことで処理方法を変更する場合も会計方針の変更に該当します。

(2) Fその他(認められる処理):遡及適用を行わない

 問われているのは、数理計算上の差異の位置づけです。年金資産の場合、当期首(前期末)の実際の年金資産×長期期待運用収益率と実際の収益率の差異であり、過去の財務諸表項目の金額の不確実性等から生じるものではないため、見積りの変更には該当しません。

(3) Fその他(認められる処理):行わない

 平均残存勤務期間は企業が「会計方針」として定めるものではなく、過去の実績等から定まるものであるため、本問は会計方針の変更には該当しません。

 なお、本問のように費用処理年数が延長となった場合には、当期に発生した数理計算上の差異から適用し(本問では12年)、過年度に発生した未認識数理計算上の差異は元の年数のまま(本問では10年)で費用処理します。もし、費用処理年数が短縮となった場合には、当期に発生した数理計算上の差異だけではなく、過去に発生した未認識数理計算上の差異も当期より短縮後の年数で費用処理します。具体的には、当期首に残っている未認識数理計算上の差異について、10年から既経過年数を控除した年数で費用処理します。

(4) D会計方針の変更と会計上の見積りの変更を区別できない場合:行わない

 減価償却方法は「会計方針」であるため、これを変更する場合は正当な理由が必要です。もっとも、「使用実態を踏まえて」とあるように、減価償却方法の変更は当初に見積った予測消費パターンの変化を反映させるものであるため、見積りの変更と区別できない場合に該当します。

(5) C会計上の見積りの変更:行わない

 当初見積って今まで適用してきた耐用年数を「使用実態」により変更するため、見積りの変更に該当します。

(6) Fその他(認められる処理):行わない

 有価証券の保有目的は、企業がどのような意図で保有しているかという実態を踏まえて決まるものであるため、会計方針や見積りには該当しません。

 そして、変更そのものは利益操作(例えば値下がりしている時に評価損を避けるために、売買目的→その他へ変更するなど)を防止するため制限されているものの、運用方針の変更でトレーディング取引を行わない場合に売買目的からその他へ変更することは認められています。

(7) Gその他(認められない処理)

 満期保有目的に分類するには、取得の当初から満期まで保有する意図が必要です。したがって、保有の途中から満期まで保有する方針に変わったとしても、満期保有目的の債券へ変更することは認められません。満期保有目的の債券は時価評価を行わないことから、時価評価逃れを防ぐために、分類にあたっては厳格なルールが設けられています。

(8) E過去の誤謬の訂正:行う

 昨年度中に倒産していたことが判明していたならば、本来は昨年度中に破産更生債権へ該当するという判断を行わなければなりません。よって、過去の処理に誤りがあるため、過去の誤謬の訂正に該当します。

 もし、昨年度中に取引先の財政状態が悪化していたが、当該取引先が巧妙な粉飾決算を行っていて昨年度中には分からず、当期になって判明して貸倒懸念債権や破産更生債権へ分類したという場合には、過去の誤謬の訂正には該当しません。

(9) B表示方法の変更:行う

 表示の分類の変更であるため、表示方法の変更に該当します。

(10) Fその他(認められる処理):行わない

 昨年度までと当期では、この「定期預金」の性質(満期までの期間)が変わったことにより表示項目が変わったものであるため、表示方法の変更には該当しません。(もし表示方法の変更に該当してしまうと、満期まで1年超残っている昨年度も流動資産の「現金及び預金」に含めるという不都合が生じます。)

(11) Gその他(認められない処理)

 現金及び現金同等物の範囲は目安として3ヵ月以内が示されていますが、これは取得日から3ヵ月以内であり、当期末からではありません。よって、もともと含めていなかった定期預金について、満期が近くなったからといって、現金及び現金同等物に含めることは認められません。

つぶ問は、2018年9月号~2019年8月号までの連載「独学合格プロジェクト 簿記論・財務諸表論」(中村英敏・中央大学准教授/小阪敬志・日本大学准教授)に連動した問題です。つぶ問の出題に関係するバックナンバーはこちらから購入することができます。

【つぶ問】一覧
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つぶ問1-2(財務諸表論)
つぶ問1-3(財務諸表論)-概念フレームワーク
つぶ問1-4(財務諸表論)-企業会計原則
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