つぶ問5-2(財務諸表論)―引当金・繰延資産、退職給付


【解答】


 負債とは、過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源を放棄もしくは引き渡す義務、またはその同等物をいう。


① 賞与は支払いが将来であっても、支給時までに従業員から労働サービスを提供されたことに対する対価として払うものである。また、社内規程で支給が明示されている場合や過去から継続して支給する労使慣行が存在する場合には、企業に賞与を支給する義務またはその同等物が存在すると認められる。よって、賞与引当金は負債の定義を満たす。

② 貸倒引当金は、経済的資源を放棄または引き渡す独立した義務を表すものではなく、既に資産として計上されている金銭債権から得られるキャッシュの減額を表すための評価勘定である。よって、負債の定義を満たさない。

③ 修繕引当金は、将来に行う固定資産等の修繕の費用を計上した際の貸方項目であるが、当該固定資産の使用方法の変更や除却といった企業の意思決定により将来の修繕を行わないこともできる。よって、修繕自体が義務とはいえないため、負債の定義を満たさない。


【解説】

 負債の定義は、一言一句正確とまではいかないとしても、「経済的資源」「義務」といったキーワードは書けるようにしておくことが求められます。

 引当金が負債に該当するか否かは解答のとおりです。貸倒引当金については、強引に考えれば法的手続きにより貸倒れが確定した時には金銭債権を放棄しなければならない義務が存在すると言えなくもないですが、その際の処理は金銭債権を直接減らせばよいだけです。また、貸倒引当金が設定されるのは貸倒れの確定前であり、この段階では企業に金銭債権を放棄しなければならない義務が存在しません。修繕引当金についても、資産を使用し続ける場合には定期的な修繕や点検が法的に求められるケースがあるかもしれませんが、使用を停止するという企業の意思決定により回避できるため、義務には該当しません。

つぶ問は、2018年9月号~2019年8月号までの連載「独学合格プロジェクト 簿記論・財務諸表論」(中村英敏・中央大学准教授/小阪敬志・日本大学准教授)に連動した問題です。つぶ問の出題に関係するバックナンバーはこちらから購入することができます。

【つぶ問】一覧
つぶ問1-1(財務諸表論)
つぶ問1-2(財務諸表論)
つぶ問1-3(財務諸表論)-概念フレームワーク
つぶ問1-4(財務諸表論)-企業会計原則
つぶ問2-1(財務諸表論)-棚卸資産の評価
つぶ問2-2(財務諸表論)―棚卸資産の評価
つぶ問2-3(財務諸表論)―固定資産の減損
つぶ問2-4(財務諸表論)―棚卸資産
つぶ問3-1(財務諸表論)―リース
つぶ問3-2(財務諸表論)―資産除去債務
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