連載 『会計士・税理士・簿記検定 財務会計のセンスが身につくプチドリル』(本試験直前総復習13)ー 研究開発費


長島 正浩(茨城キリスト教大学教授)

*税理士、会計士論文式試験直前の総復習として、本連載の復習問題を再掲載します。

Q1(空欄補充)
重要な投資情報である研究開発費について,企業間の(  ①  )を担保することが必要であり,費用処理又は(  ②  )を任意とする従来の会計処理は適当でなかった。
研究開発費は,発生時には(  ③  )を獲得できるか否か不明であり,また,研究開発計画が進行し,(  ③  )の獲得期待が高まったとしても,依然としてその獲得が(  ④  )とはいえない。そのため,研究開発費を資産として貸借対照表に計上することは適当でない。
また,仮に,一定の要件を満たすものについて(  ②  )を強制する処理を採用する場合には,( ②  )の要件を定める必要がある。しかし,実務上客観的に判断可能な要件を規定することは困難であり,抽象的な要件のもとで(  ②  )を求めることとした場合,企業間の(  ①  )が損なわれるおそれがあると考えられる。
したがって,研究開発費は発生時に費用として処理することとした。

A
① 比較可能性
② 資産計上
③ 将来の収益
④ 確実である
*研究開発意見書三2
『繰延資産としての開発費とこの研究開発費とでは対象の範囲が異なる』(桜井23版,214頁)

Q2 従来資産計上が認められていたときの具体的な科目を2つ答えなさい。

A
(1) 試験研究費
(2) 開発費
*研究開発意見書二
『“試験研究費”は研究開発費として発生時に費用処理することになるため繰延資産にはなりえない』(繰延資産当面の取扱い3(5))

Q3 研究とは何か?

A
研究とは,新しい知識の発見を目的とした計画的な調査及び探究をいう。
*研究開発会計基準一1
『研究は調べたり発見したりすること』

Q4 開発とは何か?        

A
開発とは,新しい製品・サービス・生産方法(製品等)についての計画若しくは設計又は既存の製品等を著しく改良するための計画若しくは設計として,研究の成果その他の知識を具体化することをいう。
*研究開発会計基準一1
『開発とは研究に基づいて何かを作り出すこと』

Q5 研究開発費にはどのような原価要素があるか? 

A
研究開発費には,人件費,原材料費,固定資産の減価償却費及び間接費の配賦額等,研究開発のために費消されたすべての原価が含まれる。
*研究開発会計基準二
『特定の研究開発目的にのみ使用され,他の目的に使用できない機械装置や特許権等を取得した場合の原価は,取得時の研究開発費とする』(「注解」注1)

Q6 研究開発費を費用として処理する方法にはどのような方法があるか?

A
費用として処理する方法には,一般管理費として処理する方法と当期製造費用として処理する方法がある。
*研究開発会計基準「注解」注2
『当期製造費用として処理した場合,棚卸資産原価に算入され結果として資産計上されることがある』

Q7 「一部改正」で改正されたところとは?           

A
企業結合により,被取得企業で行われていた研究開発活動の途中段階の成果(仕掛研究開発)を取得した場合,企業結合により受け入れた他の資産の取扱いとの整合性をより重視して,識別可能性の要件を満たす限り,その企業結合日における時価に基づいて資産として計上するところ。
*研究開発会計基準「一部改正」5項
『企業結合においては研究開発費にもパーチェス法が適用される』

◎復習しましょう!
1.CF計算書
2.一株当たり当期純利益
3₋1.金融商品会計①‐⑦
3₋2.金融商品会計⑧‐⑭
3‐3.金融商品会計⑮‐⑳
4-1.棚卸資産会計①‐⑥
4-2. 棚卸資産会計⑦‐⑫
5‐1.収益認識会計①‐⑦
5₋2.収益認識会計⑧-⑫
6.リース会計①‐⑥
7.固定資産の減損①‐⑩
8.ソフトウェア会計①‐⑥

〈執筆者紹介〉
長島 正浩
(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師,会計事務所(監査法人),証券会社勤務を経て,専門学校,短大,大学,大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後,松本大学松商短期大学部准教授を経て,現在に至る。この間35年以上にわたり,簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。

*本連載は,『会計人コース』2020年1月号付録『まいにち1問ポケット財表理論』に加筆修正したものです。


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