
大阪成蹊大学経営学部・准教授 笠岡恵理子
皆さん、こんにちは。
大阪成蹊大学で簿記および財務会計を担当している笠岡恵理子です。
公認会計士試験において、2027年第I回短答式試験から、財務会計論、管理会計論、監査論の3科目において英語での問題が出題されることになりました(公認会計士・監査審査会 2025)。
「なぜ英語で?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これは、企業におけるグローバル化に伴って、英語で会計を理解し、コミュニケーションを取ることの重要性が高まってきたことを表していると考えられます。
今回のコラムでは、英語で会計基準を学ぶことの重要性が高まってきた背景についてお話したいと思います。皆さんの「なぜ英語で?」という疑問に対する1つの解答になれば幸いです。
国際財務報告基準とは
以前は、それぞれの国において会計基準が策定され、国によって会計基準が異なっていました。しかしながら、企業がグローバル化するにつれ、各国で会計基準が異なることが、会計基準の理解の障壁となるようになりました。
例えば、親会社が日本企業で、アメリカに子会社を持っている場合、親会社は日本基準、子会社はアメリカ基準で財務諸表を作成することになります。そのため、それぞれの会計基準を理解することや親会社と子会社を連結する際に調整が必要になることなど、さまざまな課題が生じていました。
そこで、企業のグローバル化に伴って、さまざまな国が適用できる会計基準を策定しようという目的で作成されたのが国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards: IFRS)です。IFRS財団のサイトによると、現在世界160の国や地域でIFRSが適用されています(IFRS Foundation 2025)。
IFRSを英語で読むことの重要性
IFRSは、IFRS財団における国際会計基準審議会(International Accounting Standards Boards: IASB)によって作成されています。
このIFRS財団は、イギリスを拠点としており、会計基準は英語で作成されています(IFRS Foundation)。もちろん、日本語に翻訳したものもありますが、原文とその翻訳のニュアンスが異なることによって、内容が適切に理解されないことなどが懸念されます(田中 2025)。また、他の国では、その国の言語が持つ特徴によって、英語を上手く翻訳できない場合やその国に対応する言葉がない場合などがあります。
したがって、IFRSを原文のまま理解するということは、その適切な意味を捉えるためにも重要と考えられます。
日本でも本当に英語は必要なの?
現在、日本の上場企業は、日本基準、アメリカ基準、IFRS、修正国際基準のいずれかを適用することが認められています。そして、これらのうちIFRSを適用する企業は年々増加傾向にあり、日本取引所グループ(2026)の2026年2月末のデータでは、上場している日本企業3,930社のうち、現在294社がIFRSを適用しています。
数にすると全体の14分の1程度ですが、IFRSを適用する企業は大企業が多く、2025年6月時点の株式会社東京証券取引所(2025)のデータではIFRSを適用している企業の時価総額は、日本の上場企業全体の半分弱を占めています。また、経済産業省(2025)の『海外事業活動基本調査』が示す日本企業が海外に持つ子会社の数は、24,000社程度になっており、特にASEAN地域にある子会社は全体の30%を占め、その割合が高くなっています。
このように、多くの企業が海外進出を行っており、日本企業のグローバル化がうかがえます。また、世界の共通言語である英語を使ってビジネスの場でコミュニケーションが取れることは、その国の文化、社会および人を理解するために必要と考えられます。
次回は、世界におけるIFRSの適用状況と他国の会計教育に触れ、IFRSを英語で学ぶことの重要性について、もう少し深く考えていきたいと思います。
【参考文献】
IFRS Foundation. “Who We Are,” https://www.ifrs.org/about-us/who-we-are/#about-us(2026年3月27日閲覧)
IFRS Foundation. (2025). “Analysis of the IFRS Accounting Jurisdiction Profiles,” https://www.ifrs.org/use-around-the-world/use-of-ifrs-standards-by-jurisdiction/#analysis-of-the-169-profiles(2026年3月27日閲覧)
株式会社東京証券取引所(2025)「「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の開示内容の分析」、https://www.jpx.co.jp/news/1020/um3qrc000001sb1a-att/um3qrc000001sb4c.pdf(2026年3月27日閲覧)
経済産業省(2025)『海外事業活動基本調査 第54回調査結果』、https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00550120&tstat=000001011012&cycle=7&year=20240&month=0&tclass1=000001023635&tclass2=000001229185(2026年3月27日閲覧)
公認会計士・監査審査会(2025)「公認会計士試験における英語による出題について」、https://www.fsa.go.jp/cpaaob/kouninkaikeishi-shiken/20251216.html(2026年3月27日閲覧)
田中弘(2025)「国際会計基準(IFRS)の誤訳は誰が責任を負うのか―どんなルールでも思いのままに作れる「魔法の杖」―」『経済貿易研究』第51巻、pp.35-65
日本取引所グループホームページ(2026)https://www.jpx.co.jp/(2026年3月27日閲覧)
笠岡 恵理子(かさおか えりこ)
大阪成蹊大学経営学部准教授、博士(商学)。
関西学院大学大学院商学研究科博士課程後期課修了後、関西学院大学商学部助教を経て現職。ASEANにおけるIFRSの適用状況、各国の社会的および文化的背景がIFRSの適用に与える影響、マレーシアを中心としたアジアおよび東南アジアにおける英語での会計教育、日本におけるクラウド会計の導入状況などを研究している。日本会計研究学会、国際会計研究学会、日本経済会計学会、日本簿記学会に所属。詳しい著者情報はこちら(https://researchmap.jp/kasaoka)を参照。
著書に『IFRS国際会計基準の基礎』(共著、中央経済社)や『会計学の研究方法』(共訳、中央経済社)などがある。









