【経済ニュースを読み解く会計】会計士試験にも英語の出題が―他国での英語による会計教育の現状


大阪成蹊大学経営学部・准教授 笠岡恵理子

【編集部より】
話題になっている経済ニュースに関連する論点が、税理士試験・公認会計士試験などの国家試験で出題されることもあります。でも、受験勉強では会計の視点から経済ニュースを読み解く機会はなかなかありませんよね。
そこで、本企画では、新聞やテレビ等で取り上げられている最近の「経済ニュース」を、大学で教鞭を執る新進気鋭の学者に会計・財務の面から2回にわたり解説していただきます(執筆者はリレー形式・不定期連載)。会計が役立つことに改めて気づいたり、新しい発見があるかもしれません♪ ぜひ、肩の力を抜いて読んでください!

皆さん、こんにちは。

大阪成蹊大学で簿記および財務会計を担当している笠岡恵理子です。

前回は、IFRSとは何かということ、英語でIFRSを理解すること、およびビジネスの場において英語でコミュニケーションを取ることの大切さについて述べました。
今回は、各国におけるIFRSの適用状況と英語での会計教育の状況について述べて紹介します。

各国におけるIFRSの適用状況

前回、現在多くの国や地域がIFRSを適用していることを述べました。

IFRS財団はこの適用状況を国や地域といった地理的要素で分析しており、それぞれヨーロッパ44、アフリカ40、中東13、アジア・オセアニア35、南北アメリカ37となっています。また、すべてのもしくはほとんどの上場企業に対してIFRSを強制適用している国や地域が148、日本のように企業が任意で適用している国や地域は12、そして、IFRSを適用していない国や地域は9となっています。この9の国や地域については、アメリカ、インド、インドネシア、中国、ベトナムなどが含まれています(IFRS Foundation 2025)。

この適用状況は、その国の文化的および経済的要素が影響していると言われています。それらの要素には、各国の経済的状況、他国との政治的・経済的関係、法制度、会計専門家の能力、文化などが含まれると考えられています(Kasaoka 2025)。

会計はビジネスの共通言語である

「会計はビジネスの共通言語である」と言われるように、会計はビジネスの場において重要な役割を果たしています。また、会計用語は日常会話で使う言語と異なるため、その用語と意味を知ることが必要とされます。会計を英語で学ぶことに難しさを感じる人は多いかもしれませんが、会計基準の内容を日本語で学び、把握した上で、英語でその用語を知ることによって、英語での会計の理解を促進させることができると考えられます。

先ほど紹介したように、さまざまな国がIFRSを適用していることから、ビジネスの場で世界の共通言語である英語は重要な役割を果たしていると考えられます。また、各国の大学において、英語で会計の授業を行っている大学もあります。

他国における英語での会計教育

前回、日本ではASEAN地域に進出している企業が多いと述べましたが、ASEAN諸国では、インドネシアおよびベトナムを除いた国でIFRSが適用されています(IFRS Foundation 2025)。

これらの国のうち、シンガポールでは、英語を公用語としており、教育において英語が使用されています(矢頭 2015)。また、マレーシアの多くの大学で、すべての授業が英語で行われています。マレーシアでは、公用語はマレー語とされており(外務省 2023)、中学校から高校にかけて主としてマレー語で授業が行われています(全国都道府県教育長協議会総合部会 2020)。

しかしながら、マレーシアは多民族国家のため、他の民族とコミュニケーションを取る場合、英語が用いられます(全国都道府県教育長協議会総合部会 2020)。また、社会や企業のグローバル化が進む中で、英語教育の重要性が高まってきたこと、および科学技術分野における国際的な競争に対応するため、英語教育が発展してきました(久志本・鴨川 2024;手嶋 2004)。

そのため、これらの国では、IFRSを英語で学ぶ環境が整っており、学生には会計基準を英語で理解し、他国の企業との取引などにおいて、英語でコミュニケーションを取る能力がある程度備わっていると考えられます(笠岡 2026)。特にマレーシアでは、公用語がマレー語であることから、英語へのハードルは日本語を公用語とする日本とそれほど相違がないことが想定されます。

IFRSの内容をより忠実に理解するために、そして世界各国の人々とビジネスを行うためにも英語でIFRSを理解できる環境を作っていくことは、日本においてもこれから必要になっていくと考えられます。


2回にわたって、英語で会計を学ぶことの重要性について述べてきましたが、皆さんの会計の勉強を「なぜ英語で?」という疑問を解くカギになったでしょうか。

訪日外国人の増加や企業のグローバル化に伴い、日常においても、ビジネスにおいても英語でコミュニケーションを取る機会が増えてきました。また、その中で他国との文化的背景の違いに気付くことがあります。

そうしたことを体験し、それを知識として蓄えながら、さまざまな国の人とコミュニケーションを取ることは、非常に重要なことだと感じています。

【参考文献】
IFRS Foundation. (2025).  “Analysis of the IFRS Accounting Jurisdiction Profiles,” https://www.ifrs.org/use-around-the-world/use-of-ifrs-standards-by-jurisdiction/#analysis-of-the-169-profiles(2026年3月27日閲覧)
Kasaoka, E. (2025). “The Societal and Cultural Differences and the Adoption of IFRS in ASEAN Countries,” International Review of Business, No.24, pp.19-47.
外務省(2023)「マレーシア基礎データ」、 https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/malaysia/data.html(2026年3月27日閲覧)
笠岡恵理子(2026)「マレーシアにおける国際財務報告基準導入の経緯と会計教育」『大阪成蹊教職研究』第5号、pp.1-12。
久志本裕子・鴨川明子(2024)「マレーシアの教育の歴史と現状―先行研究に見る国民統合とグローバリゼーション」『マレーシア研究』第13号、pp.34-54。
全国都道府県教育長協議会総合部会(2020)「諸外国における外国語教育―アジア諸国の事例から学ぶ―」『平成29-令和元年度第1期海外調査事業報告書』、http://www.kyoi-ren.gr.jp/_userdata/pdf/report/R01_kenkyuu_5sougou.pdf(2026年3月27日閲覧)
手嶋將博(2004)「マレーシアにおける教育言語改革の課題―教育言語としての英語の導入をめぐって―」『言語と文化』第16号、pp.46-66。
矢頭典枝(2015)「シンガポールの言語状況と言語教育について―現地調査から―」『アジア諸語を主たる対象とした言語教育法と通言語的学習達成度評価法の総合的研究―成果報告書(2014)―』、pp.59-75。

笠岡 恵理子(かさおか えりこ)
大阪成蹊大学経営学部准教授、博士(商学)。
関西学院大学大学院商学研究科博士課程後期課修了後、関西学院大学商学部助教を経て現職。ASEANにおけるIFRSの適用状況、各国の社会的および文化的背景がIFRSの適用に与える影響、マレーシアを中心としたアジアおよび東南アジアにおける英語での会計教育、日本におけるクラウド会計の導入状況などを研究している。日本会計研究学会、国際会計研究学会、日本経済会計学会、日本簿記学会に所属。詳しい著者情報はこちら(https://researchmap.jp/kasaoka)を参照。
著書に『IFRS国際会計基準の基礎』(共著、中央経済社)や『会計学の研究方法』(共訳、中央経済社)などがある。


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