連載 『会計士・税理士・簿記検定 財務会計のセンスが身につくプチドリル』(本試験直前総復習4)ー 金融商品会計②


長島 正浩(茨城キリスト教大学教授)

*税理士、会計士論文式試験直前の総復習として、本連載の復習問題を再掲載します。

Q8(空欄補充)
時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券である( ① )については,( ② )にとっての有用な情報は有価証券の期末時点での( ③ )に求められると考えられる。したがって,( ③ )をもって貸借対照表価額とすることとした。また,( ① )は,売却することについて事業遂行上等の制約がなく,時価の変動にあたる評価差額が企業にとっての( ④ )と考えられることから,その評価差額は( ⑤ )として処理することとした。

A
① 売買目的有価証券
② 投資者
③ 時価
④ 財務活動の成果
⑤ 当期の損益

*金融商品会計基準70項
 『売却してもしなくてもそこに判断があるかぎり運用成果である』

Q9(空欄補充)
満期まで所有する意図をもって保有する社債その他の債券(「満期保有目的の債券」)は,( ① )をもって貸借対照表価額とすることを原則とするが,一定の条件のもとで( ② )に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とする。
子会社株式及び関連会社株式は,( ① )をもって評価する。

A
①   取得原価
②   償却原価法

*金融商品会計基準16項,17項
『売却を予定しないものは時価評価しない』

Q10(空欄補充)
その他有価証券の( ① )は( ② )にとって有用な投資情報であるが,その他有価証券については,事業遂行上等の必要性から直ちに売買・換金を行うことには制約を伴う要素もあり,評価差額を直ちに( ③ )として処理することは適切ではないと考えられる。

A
①   時価
②   投資者
③   当期の損益

*金融商品会計基準77項
『売却することに制約があるのならそれは運用成果ではない』

Q11 その他有価証券の評価差額の取扱いについて,2通りの方法を説明しなさい。


(1) 評価差額の合計額を純資産の部に計上する。
(2) 時価が取得原価を上回る銘柄に係る評価差額は純資産の部に計上し,時価が取得原価を下回る銘柄に係る評価差額は当期の損失として処理する。

*金融商品会計基準18項
『⑴全部純資産直入法・⑵部分純資産直入法』

Q12 満期保有目的の債券はなぜ時価評価せずに償却原価法で評価するのか?


時価が算定できるものであっても,満期まで保有することによる約定利息及び元本の受取りを目的としており,満期までの間の金利変動による価格変動のリスクを認める必要がないから。

*金融商品会計基準71項
『売却を予定しないものは時価評価しない』

Q13 子会社株式はなぜ時価評価せずに取得原価で評価するのか? ただし,もし時価評価しなければならないとすれば,どのような場合か?

A
子会社株式については,事業投資と同じく時価の変動を財務活動の成果とは捉えないという考え方に基づいているから。
ただし,子会社株式について,その時価が著しく下落したときは,回復する見込があると認められる場合を除き,時価をもって貸借対照表価額とし,評価差額は当期の損失として処理しなければならない。

*金融商品会計基準73項,20項
『売却せざるをえない状況になったら時価評価する』

Q14 その他有価証券は直ちに売却しないのになぜ時価評価しなければならないのか?


(1)企業の財務活動の実態を適切に財務諸表に反映させ,投資者に対して的確な財務情報を提供することが必要であるから。
(2)企業の側においても,取引内容の十分な把握とリスク管理の徹底及び財務活動の成果の的確な把握のために必要であるから。
(3)国際的視点からの同質性や比較可能性が強く求められており,金融取引の国際的レベルでの活性化を促すためにも,金融商品に係る我が国の会計基準の国際的調和化が重要な課題となっているから。

*金融商品会計基準64項(1)(2)(3)
『世界中みんなやっているから日本もやるか!』

◎復習しましょう!
1.CF計算書
2.一株当たり当期純利益
3₋1.金融商品会計①

〈執筆者紹介〉
長島 正浩
(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師,会計事務所(監査法人),証券会社勤務を経て,専門学校,短大,大学,大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後,松本大学松商短期大学部准教授を経て,現在に至る。この間35年以上にわたり,簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。

*本連載は,『会計人コース』2020年1月号付録『まいにち1問ポケット財表理論』に加筆修正したものです。


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