ようこそ!税理士事務所専門相談室『メンタル飯田』へ!ー第4回 税理士受験生のアルバイト先のおすすめは?


飯田先生のアドバイス

税務署も選択肢の1つ!

税務署でのアルバイトは、税務署の仕事を知る絶好の機会!

税理士の仕事は納税者の存在があってはじめて成り立ちます。
納税者がお客様ということになるのですが、それに対峙する機関として国税局や税務署があります。
税理士の役割について、国税庁のHPでは以下のように書かれています。

【税理士制度】
1 概要

税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼に応え、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命としています。税理士制度は、このような公共的使命を負っている税理士が納税義務者を支援することによって、納税義務を適正に実現し、これによって、申告納税制度の適正かつ円滑な運営に資することを目的として設けられたものです。昭和26年に税理士法が施行されて以来、税理士制度は時代の推移とともに変化する社会の要請に応えて、申告納税制度の定着と発展に寄与するとともに、納税義務の適正な実現、納税者に対する税知識の普及、国家財政の確保に大きな役割を果たしています。
(出所)国税庁HP

そして、税理士は資格の取得ルートによって大きく2つのタイプに分けることができます。

会計2科目と税法3科目に合格して資格を得られる試験組税理士と、もともと国税庁や国税局や税務署で一定期間勤務したことで税法の受験が免除され税理士資格を取得するというOB税理士

私は、高卒なので、国税勤務23年が税法免除の条件でした。
大学を卒業してから国税で勤務したという人の場合は、23年より短くなります。
国税局や税務署の中で仕事をしたことがある人は、税法免除の期間に達していなくても大きく分けるとOB税理士となります。
現状、OB税理士と試験組税理士の割合は五分五分といったところでしょうか。
支部の税理士会などに参加してみると、先輩後輩という意識が強いこともあってか、OB税理士の方が参加率が高いように思います。

残念なのは、OB税理士と試験組税理士の間に溝ができてしまうということです。

OB税理士の大半は、定年退職後に税理士登録をしたという方です。
税理士登録を済ませ、初めて税理士会に参加すると、署長まで勤め上げたのか、上席国税調査官といって管理職にならずに退職したのかも話題に上がります。
普通科何期生、国税専門官何期生ということで退職して税理士になってからもその序列は存在します。
たとえば、30代になるのを待たずに税理士になったという方が税理士会に参加した場合、ご自身の親よりもまだ年上の人でも、先輩税理士にペコペコ頭を下げている光景を目の当たりにするという場面に出くわし、ビックリしてしまうということがあるかもしれません。

そうは言っても、税理士資格を取得したからには、ご自身が所属している業種の団体がどういうものなのかを知るために、一度は税理士会に参加することも必要かと思います
同業者で考え方によってはライバル同士なので、税理士会の同じ支部の税理士と交流を深めることに、少し抵抗を感じる方もいるかもしれませんね。
それでも、試験組税理士としては、国税や税務署のことを知っているOB税理士と差をつけられないために、税務署がどんな仕事をしているのかを知っておく必要はあると思うのです

そこで、税理士資格を取得するための勉強中の方におすすめしたいのが、国税局や税務署でアルバイトをするということです。

“税務署のアルバイト”ってどんな仕事?

税務署が1年の中で最も忙しいのは、言わずと知れた確定申告の時期です。
年が明けて、本来は2月16日から3月15日までを確定申告というのですが、準備などもあるので、確定申告の時期の少し前から臨時のアルバイトを急募します。

各税務署にはレギュラーさんといって、何年もの間、1年中アルバイトに来ている女性がいました。
その方々に加えて、確定申告の時期だけアルバイトを増やすのです。時給がそんなに高くないのと、本当にピンポイントの短期間のアルバイトなので、どこかの税務署長のご子息や国税の関係者のご家族がアルバイトに来られることが多かったと記憶しています。

国税は、男女雇用機会均等法が施行されるまで、高卒は男子しか採用がなかった世界。
今でも男性が大半を占めています。
この確定申告の時期だけは若い女性の声があちらこちらに響きわたり、1年の中で一番、職場が華やかになるともいえます。

ある年、高校生や短大生に混じって、30代後半とおぼしき男性がアルバイトに来ていました。
女性の多くは、事務仕事をしていたのですが、その男性は、駐車場の整備や荷物運びなど、若手の税務職員に指示されながらいろいろな仕事をこなしていました。
ほとんどのアルバイトは、確定申告が終わる3月末にはアルバイトを終了しますが、その男性は、4月になっても引き続き、レギュラーさんと一緒にアルバイトに来ていました。

あるとき、その男性と話をする機会があり、なぜ、時給の安い税務署でずっとアルバイトをしているのか尋ねたところ、彼は、日中は税務署でアルバイトをしたあと、夜は税理士資格を取得するため、専門学校に通っているということでした。

最初はどんなアルバイトでもいいと思っていたそうなのですが、確定申告の時期にアルバイトに来てみて若手の職員と仲良くなれて、このまま続けていれば税務署でどんな仕事をするのかがわかるかもしれないと思い、辞めずに1年続けてみようと思ったというのです。

1年経ってその年の終わり、彼はアルバイトを辞めました。税理士に試験に合格したのです。

この方のように、将来税理士になることを見据えて税務署でアルバイトをするということは、同世代の税務職員の方と仲良くなれるし、将来、税理士の資格を得て活躍するさいにも、その繋がりをもっていることが国税からの情報を得る手だてになると思います。

税理士事務所で勤務しながら、税理士資格を得るために、勉強をされているという方はたくさんいらっしゃると思います。
事務所に入ったときは、資格をとることをサポートするという約束だったとしても、いざ入ってみると日々の業務に終われ、夜に専門学校へ行けなくなったという方もいるようです。

税理士の資格を取得するまでは、長い道のりです。
どのみち長い道なのであれば、少し遠回りすることもアリなのではないかと思うのです。

税理士になってからは、ご自身が独立開業された所轄の税務署とお付き合いすることになります。
若手の頃、アルバイトをしていたときに一緒に仕事をした職員が、のちにその税務署に署長として赴任してくることがあるかもしれません。
納税協会の要人とも早い段階で顔見知りになることができるかもしれません。

税理士の中には、国税局や税務署を敵対視する傾向にある方もいらっしゃるようです。
でも、独立した公正な立場で国税当局と良好な関係を築くほうが、クライアント、ひいては経済社会全体の発展につながると思います。
将来、税理士として働く際の人脈を築いておくという意味でも、税務署で、確定申告の時期だけではなく1年間、アルバイトをしてみるというのはいかがでしょうか。

その経験は、後々、あなたの糧となって力を発揮できる日がくると思います。

<著者プロフィール>
飯田 真弓
(いいだ まゆみ)
元国税調査官”おかん税理士”
飯田真弓税理士事務所 代表税理士
一般社団法人日本マインドヘルス協会 代表理事

◆経歴
昭和57年3月 京都府立城陽高等学校普通科卒業
昭和57年4月 初級国家公務員試験採用(普通科女子一期生)
税務大学校大阪研修所に首席で入校
昭和58年7月~平成20年7月 大阪国税局管内の税務署で勤務
税務調査の最前線で延べ700人あまりの経営者の調査を行う。
平成14年4月~平成18年3月 放送大学教養学部に在籍、卒業
平成20年7月 国税を退職
平成20年9月 税理士として独立・開業
平成24年3月 内閣府の支援事業者に選ばれ一般社団法人を設立し代表理事に就任
国税調査で培ったノウハウと大学、その他で学んだ知識と持ち前の感性で、日本の中小企業とそれをサポートする税理士及び税理士事務所・税理士法人等の企業力(人間力・交渉力・コミュニケーション力・傾聴力)をアップさせるための業務を行う。

◆資格
税理士、産業カウンセラー、健康経営アドバイザー、日本芸術療法学会正会員

◆近況
全国の法人会、納税協会、税理士会、商工会議所、経営者団体で税務調査の講演やセミナーを行う傍ら、個別カウンセリングや傾聴トレーニング、企業に出向きコミュニケーションが活性化し離職率が低下する研修も実施。
2021年2月、NHKあさイチ「ことしの確定申告」を監修。週刊ダイヤモンド2021.5/1.8合併特大号に『持続化給付金、食事宅配、あと一つは?税務署が狙うコロナ禍「三つの急所」』、『元国税調査官が教える 要注意!「ダメ税理士」図鑑』を寄稿。
著書に『税務署は見ている。』、『税務署は3年泳がせる。』(ともに日本経済新聞出版社・累計9万部を超えるロング&ベストセラー)、『B勘あり!』(日本経済新聞出版社)、『調査官目線でつかむセーフ?アウト?税務調査』、『「顧客目線」「嗅覚」がカギ!選ばれる税理士の回答力』(ともに清文社)がある。

●バックナンバー
第1回 毎日領収書の貼り付け作業ばかりやらされてるんです・・・。
第2回 税務調査で経営者に怒鳴られた!
第3回 社長さんに“税理士の資格、持ってないの?”といわれてしまったんです。


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