全31回のプログラムで、税理士試験・財務諸表論に強くなる!
論点ごとに本試験に類似したミニ問題を用意しました。まずは問題1にチャレンジし、文章全体を何度か読み直したところで問題2(回によっては問題3も)を解いてみましょう。そして、最後に論述問題を解いてください。
長島正浩
(茨城キリスト教大学経営学部教授)
まずは問題にチャレンジ!
税効果会計は,企業会計上の( ① )又は( ② )と課税所得計算上の( ③ )又は( ④ )の認識時点の相違等により,企業会計上の( ⑤ )又は( ⑥ )の額と課税所得計算上の( ⑤ )又は( ⑥ )の額に相違がある場合において,法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金(法人税等)の額を適切に( ⑦ )することにより,法人税等を控除する前の( ⑧ )と法人税等を合理的に( ⑨ )させることを目的とする手続である。
税効果会計を適用しない場合には,課税所得を基礎とした法人税等の額が( ② )として計上され,法人税等を控除する前の企業会計上の利益と課税所得とに差異があるときは,法人税等の額が法人税等を控除する前の( ⑧ )と期間的に( ⑨ )せず,また,将来の法人税等の支払額に対する影響が表示されないことになる。
問題1
文中の空欄( ① )から( ⑨ )にあてはまる適切な用語を示しなさい。
「法人税等」を何とみるかについては,主に2つの説(考え方)がある。その説を2つ答えなさい。
問題2
「法人税等」を何とみるかについては,主に2つの説(考え方)がある。その説を2つ答えなさい。
解答
問題1
① 収益
② 費用
③ 益金
④ 損金
⑤ 資産
⑥ 負債
⑦ 期間配分
⑧ 当期純利益
⑨ 対応
問題2
(1) 費用説
(2) 利益処分説
基本的な考え方
・税効果会計基準においては、法人税等を費用と捉えている。
・税効果会計の方法には、資産負債法と繰延法があり、税効果会計基準では、資産負債法を採用している。
論述問題にチャレンジ!
税効果会計の方法とは?
資産負債法
資産負債法とは、会計上の資産又は負債の金額と税務上の資産又は負債の金額との間に差異があり、会計上の資産又は負債が将来回収又は決済されるなどにより当該差異が解消されるときに、税金を減額又は増額させる効果がある場合に、当該差異(一時差異)の発生年度にそれに対する繰延税金資産又は繰延税金負債を計上する方法である。したがって、資産負債法に適用される税率は、一時差異が解消される将来の年度に適用される税率である。
繰延法
繰延法とは、会計上の収益又は費用の金額と税務上の益金又は損金の額に相違がある場合、その相違項目のうち、損益の期間帰属の相違に基づく差異(期間差異)について、発生した年度の当該差異に対する税金軽減額又は税金負担額を差異が解消する年度まで貸借対照表上、繰延税金資産又は繰延税金負債として計上する方法である。したがって、税効果会計に適用される税率は期間差異が発生した年度の課税所得に適用された税率である。
繰延税金資産はなぜ資産としての性格を有するのか?
繰延税金資産は、将来の法人税等の支払額を減額する効果を有し、一般的には法人税等の前払額に相当するため。
〈執筆者紹介〉
長島 正浩(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師、会計事務所(監査法人)、証券会社勤務を経て、資格予備校、専門学校、短大、大学、大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後、松本大学松商短期大学部准教授を経て、現在に至る。この間30年以上にわたり、簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。
※ 本記事は、会計人コース2020年1月号別冊付録「まいにち1問 ポケット財表理論」を編集部で再構成したものです。
〈バックナンバー〉
第1回:キャッシュ・フロー計算書
第2回:1株当たり当期純利益
第3回:金融商品会計①
第4回:金融商品会計②
第5回:金融商品会計③
第6回:棚卸資産会計①
第7回:棚卸資産会計②
第8回:収益認識会計
第9回:固定資産会計①
第10回:固定資産会計②
第11回:ソフトウェア会計
第12回:研究開発費会計
第13回:繰延資産
第14回:退職給付会計
第15回:資産除去債務