
公認会計士・税理士 荒井優美子
合格者のボリュームソーン
2025年11月21日に発表された、令和7年公認会計士試験(2026年)合格者調では、合格者の40%弱が大学在学、約47%が大学卒業者とされ、職業別合格者調では、学生、専門学校生、無職の合計が合格者の85%も占めることが報告されています。
税理士試験と異なり、会計士試験では大学在学中又は卒業後に試験勉強を開始し、合格するパターンが圧倒的に多く、合格年齢も25歳未満が62%、25歳以上30歳未満が26%です。
税理士の5科目到達者(令和7年度)の30歳未満の割合は32%に過ぎないことと対照的で、会計士試験合格者は、より長いキャリア選択ができることになります。
以下では、会計士試験合格者と税理士試験合格者のキャリア選択について、筆者の経験を基に説明していきます。
公認会計士試験合格後にどこを目指す?
公認会計士試験合格者が公認会計士として登録するためには、3年以上の実務経験(業務補助)と実務補習が必要とされます。
業務補助等の要件や実務補習の要件の充足の観点から、試験合格者の多くは監査法人に就職します。
但し、昔と異なり監査業務以外にも、起業家を目指す、会社のCEOやCFO を目指す、コンサルタントを目指す、税理士として独立するなど、活躍できる場の広がりとともに、様々な目的によって監査法人以外の就職先を選ぶ人も増えています。
監査業務と税務業務の決定的な違いは、税務業務ではクライアントの経理担当者との関与がほとんどであるのに対して、監査業務では経理担当者の他に役員との面談等もあり、会社の業務について、より広範な経験を得ることができることかと思います。
また、監査業務にはIPO のほか、フォレンジック調査等、更に専門的な業務分野もあり、会社のCEOやCFO を目指す場合やコンサルタントを目指す場合であっても、まず監査法人で監査業務を経験することは非常に有用でしょう。
企業の会計不正や、サイバー攻撃・情報漏えい等の問題がこれまでになく社会的な問題となりつつある昨今では、監査業務の有用性や業務範囲がより高まっていると言えます。
Big4での働き方
監査法人もいわゆるBig4の監査法人から準大手、中堅と様々ありますが、Big4は監査法人以外にも税理士法人、コンサルティング、アドバイザリー業務に特化した法人等がグループの法人として存在し、監査法人から他の法人への異動ができることや、試験合格後に監査法人以外の法人に就職した場合も、監査法人の監査業務に従事することで業務補助等の要件を満たすことができる等、有利な点もあります。
大手監査法人では監査のDX化が進み、監査も在宅でできる時代です。又、男女問わず育休取得も積極的な推奨がされており、特に女性の労働環境は大幅に改善されたと思われます。
昔の監査はクライアント先で行う(往査)ことが通常でしたので、その都度出先が変わり、保育園に子供を預けての勤務は、育児支援ヘルパーを活用しても、かなり大変だったはずです。
日本企業では3月決算が多いため、Big4でも監査の繁忙期は4月から6月末、税務は(外資系企業の)12月決算対応で、12月から3月ごろが繁忙期となります。繁忙期が決まっているため、年間の計画も立てやすくなります。
これに比べると、コンサルティング、アドバイザリーの法人での業務は、プロジェクト単位で仕事をするため、繁忙期は特定されていないことが多いです。
昔はBig4がブラック企業の代名詞のように言われていた時期がありましたが、今は随分ホワイト化が進んでいます。
年間の有給の他にリフレッシュ休暇や育休、介護休暇制度等も導入されています。
また、会計士の終了考査の試験休暇も、監査法人に限らず一定期間取得が認められています。
人材投資に関しては、私の所属していた法人グループでは、年間の研修スケジュールで所属法人を問わずWEBでの研修を受講でき、そのうちの一部は会計士資格登録後のCPE(継続的専門研修)制度に対応できる単位の取得として認められます。
研修の内容は、会計、税務に限らず、法務、AI等に幅広い分野にわたり、非常に充実した研修内容となっています。
これ以外に、Big4特有と思われる相当な量のコンプライアンス研修が毎年義務付けられており、この点は中堅の監査法人や税理士法人と比べて業務における負担が大きいものと感じられるかも知れません。
グローバル人材の育成
公認会計士試験では英語の試験が導入されますが、日常業務では税務の方が英語の必要性がより高い場合が多いでしょう。
税務業務でもクロスボーダーの取引が関係する場合は、海外ファームやクライアントの海外法人とのやり取りも必要となり、海外の税制の理解も必要となります。
日本企業の監査は一部の上場企業がIFRSや米国基準を採用している他はほとんどが日本基準(日本の会計処理)を採用しているため、IFRSや米国基準の知識が必須という事には至りません。
しかしながら、税務については、クロスボーダーの取引において海外税制の知識が無いままストラクチャーを組成した場合には、思わぬ税務コストや税務リスクが生じることがあるため、少なくとも関連する取引についての海外税務の理解はしておく必要があります。
このためにも、海外ファームやクライアントの海外法人とのやり取りができる英語のスキルは求められることになります。
この英語スキルの対応のため、TOEICの受験や海外への短期学習(1か月未満)制度がある他、希望による海外ファームへの出向の制度があります。
現地では、日本企業の現地法人へのアドバイスをすることも業務の中心ですが、現地の税制を理解し、日本への帰国後は日本での窓口として日本企業の海外進出のアドバイスに出向時の経験を活かすことができます。
【プロフィール】
荒井優美子(あらい・ゆみこ)
公認会計士・税理士
一橋大学法学部卒業後、コンサルティング会社勤務を経て公認会計士資格を取得。大手監査法人、大手税理士法人勤務後、米国留学(コロンビア大学国際公共政策大学院(MIA)、ニューヨーク大学ロースクール(LLM))を経て、大手税理士法人勤務。2025年7月より非常勤として勤務。 日本公認会計士協会の租税調査会専門委員(出版部会)、租税調査会法人税部門専門委員、修了考査委員(税務実務担当、2021年~2025年)。











