会計士・5月短答式試験終了! このあとどうする?


首藤洋志
(文教大学経営学部准教授・公認会計士)

【編集部より】
5月28日(日)、令和5年公認会計士試験第Ⅱ回短答式試験が実施されました。自己採点を終え、各専門学校から公表予定の合格ボーダーラインを見て、次のアクションをどうするか決める方も多いのではないでしょうか。特にボーダーライン上の人は悩ましく感じているかもしれません。
そこで、本記事では、大学教員であり公認会計士の首藤洋志先生に、特に試験後から合格発表までの過ごし方についてアドバイスをいただきました。ぜひ今後の参考にしてください!!

合格発表までどう過ごす?

こんにちは、文教大学の首藤洋志(しゅとう・ひろし)です。

公認会計士短答式試験(以下、「短答式」)を受験されたみなさん、大変お疲れ様でした。

今回の試験でも、広大な範囲から重要な論点を中心に出題され、本試験の緊張感の中で自身の力を発揮することに対するハードルは、非常に高かったのではないかと思います。

本日のコラムでは、短答式を受験したあなたが、合格発表までの時間をどのように過ごしたらよいのか、また、論文式試験(以下、「論文式」)合格に向けどのように学習を進めるべきか、について、考えてみたいと思います。

具体的には、受験生一人ひとりの現状別に、アドバイスできたらと考えています。

最後に、公認会計士試験の受験生”全員”に向けてメッセージを送ります。

日々努力を継続しているあなたが前を向くために、もしくは、さらに大きくジャンプするための参考になれば嬉しいです。

自己採点の結果、8月の論文式受験が現実的なあなたへ

努力が結果に繋がって本当によかったですね。一安心しているところでしょう。
ただ、論文式はすぐそこまで迫っています。

すぐにでも気持ちを入れ替えて、論文式の勉強・準備に全力を注いてください。これからの踏ん張り次第で、数ヶ月後の結果が大きく変わる可能性が高いです。

せっかく論文式に挑戦する権利を手にした(可能性が高い)のであれば、一気に最終合格まで手繰り寄せましょう。

これからの戦略について、得意科目はそのままに(いまの調子で勉強を継続して)、苦手科目を平均レベルにまで押し上げるような時間的リソース配分を意識してはいかがでしょうか。

苦手科目を抱えていることは、試験問題との相性などの運に大きく依存することになります。また、足きりになってしまう可能性も高いため、精神衛生上、大きなリスクを抱えていることに他なりません。

苦手科目については、せめて苦手意識を感じないレベルにまでもっていくことで、全科目平均で合格ボーダーに到達できる確率を高めることを強くおすすめします。

苦手科目の存在という精神的不安を減らして、100%の実力を発揮できる「心技体」を2ヵ月半程で整えてください。
(「心技体」については、短答式前のコラム(「短答式カウントダウンスタート!合格するための本試験2週間前からの過ごし方」)を参照。)

自己採点の結果、合格ボーダーライン付近だと予想しているあなたへ

とにかく、いますぐに論文式の勉強に全力で邁進してください。
短答式の結果に対する不安で、モチベーションの維持が難しいとは思います。

しかし、公認会計士試験では、そのような精神的な強さこそが試されているといっても過言ではありません。
残された時間は限られています。

論文式合格に近づくために、不安な気持ちと向き合いながら、少しずつでも前進すべきです。

おすすめの思考法があります。

それは、道が2つに分かれる可能性があるときには、「どちらになっても大丈夫(どっちに転んでもラッキー)」なように、「頭の中で両パターンに対する前向きな準備をしておく」ということです。

パターン1 短答式に合格していた場合

「論文式を受験するつもりで準備しておいてよかった!」となりますよね。
逆に、短答式後に切り替えがうまくいかず、勉強再開への意識が不十分だったとしたら、「貴重な時間を失ってしまった・・・」と強く後悔をすることになってしまうでしょう。
論文式を受験するつもりで、全力で勉強を継続しておくことが最善策であることに間違いありません。

パターン2 短答式の結果が芳しくなかった場合

残念ながら、今回は実力(+運)が足りなかったということです。
つまりこの場合においても、もし合格発表までの貴重な時間を無駄にしていたとしたら、次年度の論文式で合格するために「短答式後、すぐにでも実力アップを図っておくべきだった」という状況になります。

このとき、時間を無駄にしたことに対するネガティブな気持ちが残ってしまい、その後のモチベーションに悪影響が生じるかもしれません。
そのような後ろ向きな状況に陥らないようにするためにも、合格発表までの時間を無駄にして欲しくないのです。

あなたは、12月に再度、短答式を受験することになるはずです。
しかし、5月の短答式で合格ボーダー付近だったわけですので、8月の論文式が終わるまでは論文式の勉強に集中してはいかがでしょうか?

意識しておいて欲しいのは、12月の短答式と来年8月の論文式で、圧倒的結果(目指すレベルは合格者の中のトップ10%以内)を出して余裕で合格する実力を身につける、ということです。

今のレベルであれば、短答式の勉強は、今年の論文式後からでも十分間に合うのではないでしょうか(論文式の勉強も、当然短答式のレベルアップに繋がります)。

あくまでも考え方の一つではありますが、来年8月の論文式で圧倒的結果を出すためには、今年の論文式の捉え方が肝になると思います。

私のおすすめは、以下のとおりです。

・8月までは、論文式に合格するつもりで、論文式の勉強に集中すること

・8月の試験終了後、早々に論文式の問題を入手

・自主的に本試験スケジュールと同じように時間を計って受けてみること
(なお、同じ状況の受験仲間を見つけて一緒に取り組むことができれば、モチベーション維持にも有効でしょう。)

これは、来年の論文式を”初”受験にしないという大きな意味があります。

繰り返しになりますが、①論文式試験を「本気で」受験するつもりで勉強を継続し、②本番同様の環境、気持ちで自主的に受験できるかどうか、この2点が勝負です。

すべては、現時点で想定可能な最速スケジュールで論文式に受かるための準備をしておく、という「考え方」に他なりません。

以上のように考えて準備しておけば、どちらのパターンだったとしても、「休んでいる暇などなかった」、となるのではないでしょうか?

とはいえ、適度に休憩やリフレッシュをすることはもちろん大切です。
心が折れないよう、定期的に楽しみな予定やリフレッシュ・デーを作ることも大事にしてくださいね。

自己採点の結果、不本意な状況にあるあなたへ

本気で合格するつもりだった受験生にとっても、最初からお試し受験のつもりだった受験生にとっても、非常に悔しい思いをしていることでしょう。

私にも短答式不合格の経験があるので、その悔しさはよくわかります。
簡単ではないということはわかっていますが、それでも前を向いてください、と伝えたいと思います。

前(か上)を向かずして、何も変えられないからです。
チャンスには、前(か上)を向いていないと気づくことができません。

一刻も早く立ち上がり、次のチャンスを手にするために、努力を再開しましょう。

公認会計士試験の受験生”全員”に向けて

あなたは、何のために、いま、公認会計士試験の勉強をしているのでしょうか?

― お金を稼ぐため?

― 地位・名声のため?

― 社会に貢献するため?

― 親を安心させるため?

おそらく、これらはすべて、あなたの人生の“目的”にとって、一つの“手段”でしかありません。
ほとんどの人にとって、人生の“目的”は「(自分と、近くにいてくれる人たちと一緒に)幸せになること」、に集約されるのではないでしょうか。

目先の“手段”のみに目を向けるのではなく、「公認会計士になって何を成したいのか」、「どのような人生を送りたいのか」といったプロセスにも目を向け、自身の志や情熱を念頭に置きつつ、「幸せな人生を築く」という最終“目的”を、常にしっかり見据えておくことが大切です。

公認会計士になることは、あなたにとって重要な人生の目的”を達成するための“手段”(選択肢)の一つにしか過ぎません。

だからこそ、いまのうちから、公認会計士になってどのようなキャリアを歩んでいきたいのか、志や情熱を再確認しておいて欲しいのです。

多くの受験生が、論文式合格後には監査法人に所属し、会計監査に従事すると思います。公認会計士の独占業務とされている会計監査は、資本市場や経済・社会にとって非常に意義深い仕事であるため、大きな志をもって従事するに値する仕事です。

また、会計監査以外にも、公認会計士には以下に挙げるような、様々なキャリアの選択肢が存在します。

<公認会計士の多様なキャリアの一例>

独立開業、税理士、行政書士、経営コンサルタント、ベンチャー企業のCFO、 M&Aサポート(アドバイザリー業務)、海外勤務、執筆活動、組織内会計士(事業会社、金融機関etc.)、専門学校や大学の教員

公認会計士を志しているあなたには、是非、いまの受験勉強時代を有意義に過ごして欲しいと強く願っています。

いま、努力して身につけている知識や経験は、公認会計士になった後のキャリアにおいて、非常に重要な糧になることは間違いありません。

どうせやるのであれば、(目先の)試験に受かることのみを目指すのではなく、合格後に拡がる無限の可能性にも目を向け、高いモチベーションをキープしてください。

自分を信じて、悔いの残らない受験ライフを過ごしてください。

あなたが、明るい未来へのモチベーションを維持し、大きな志や情熱をもちつつ、自分の力を100%引き出せるような努力を継続できることを、心から願っています。

Good luck!!!

【執筆者紹介】

首藤 洋志(しゅとう ひろし)

文教大学経営学部准教授・博士(経済学・名古屋大学)・公認会計士
九州大学経済学部卒業、九州大学大学院経済学府修士課程修了、名古屋大学大学院経済学研究科博士後期課程満期退学。2011年~2020年、大手監査法人にて会計監査業務に従事。2020年より現職(大学教育及び財務会計研究(会計利益観、公認会計士と多様性及びパーパス等)に従事)。
<主な論文>
「資産負債観に基づく歴史的原価会計―収益認識会計基準を手がかりにして―」『簿記研究』第3巻第2号, 11-22頁, 2020年。
「大手監査法人の監査品質向上に向けた取り組み―ジェンダー・ダイバーシティの推進とデジタル化の加速―」『産業經理』第83巻第1号, 123-135頁, 2023年。

メールアドレス:shuto☆bunkyo.ac.jp (編集部注:☆を@に変更してください。)
※ご質問やご相談がありましたら、お気兼ねなくご連絡ください。

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