正しくリスク評価ができる会計士になろう!


“コロナショックに負けない!
会計人への応援メッセージ⑳”
坂上 学(法政大学教授)

1 新型コロナウイルス検査で陽性反応が出た!どうする?

 巷ではまだまだ新型コロナウイルス禍の収束が見えず、無症状の感染者がウイルスをばら撒くのを防ぐためにも、症状が出ていない人にも新型コロナウイルス検査を徹底しろと主張する専門家やコメンテーターは多い。

 そこで何の症状も出てはいなかったけれど、とにかく心配なので、誰でも受けられる民間のドライブスルー検査を受けることにした。
 この検査方法の精度は高く、感度(感染者に陽性反応が出る確率)と、特異度(非感染者に陰性が出る確率)は、ともに90%あるという。
 
 数日後に検査結果を受け取ると、なんと陽性反応が出ているではないか。
 90%の確率で新型コロナウイルスに感染してしまったのだ。
 あぁ、なんということだ!

2 検査の感度と的中率は違う!

 少し冷静になったところで、以前に読んだ『リスク・リテラシーが身につく統計的思考法-初歩からベイズ推定まで』(ゲルト・ギーゲレンツァー著、ハヤカワ文庫)に書かれていた内容を思い出した。

 この検査を受けて陽性反応が出た場合に、実際に感染している確率は、ベイズの定理を使えば正確に計算できる。
 しかも多くの場合、直観とは異なる結果が得られるということだった。絶望に打ちひしがれながらも、計算してみることにした。
 
 人口あたりの感染者数がもっとも多い国のひとつであるアメリカで、ランダムサンプリング調査をした結果、人口の5%弱が感染していることが判明した。
 つまり有病率(事前確率)は5%と仮定することができる。
 
 症状のない人を含め、広く1,000人を対象にこの検査を実施した場合、有病率が5%なので50人が感染していることになる。
 この50人の感染者のうち、正しく陽性反応がでる真陽性は45人、逆に陰性反応が出てしまう偽陰性は5人いることになる。
 また非感染者は950人になるが、このうち正しく陰性となる真陰性は855人、間違って陽性反応がでてしまう偽陽性が95人いることになる。
 
 ということは、陽性反応が出るのは真陽性45人+偽陽性95人=140人であるが、そのうち本当に感染しているのは45人なので、陽性反応が出たときの的中率は32.1%と計算される。
 つまり感染している確率は90%あると思っていたが、実際には3分の1にも満たないということなのだ!
 
 逆に、陰性の結果が出た場合を考えてみる。
 陰性反応が出るのは真陰性855人+偽陰性5人=860人であるが、そのうち本当に感染していないのは855人なので、陰性反応が出たときの的中率は99.4%と計算される。
 偽陰性は10%ではなく、実際にはわずかに0.6%しかないことになる。
 とはいえ、1,000人あたり5人の無症状の感染者が、世に放たれることになるのだ!


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