連載 『会計士・税理士・簿記検定 財務会計のセンスが身につくプチドリル』(本試験直前総復習21)ー 純資産の部の表示


長島 正浩(茨城キリスト教大学教授)

*税理士、会計士論文式試験直前の総復習として、本連載の復習問題を再掲載します。

Q1(空欄補充)
貸借対照表は,資産の部,負債の部及び(  ①  )に区分し,(  ①  )は,株主資本と(  ②  ) の各項目に区分する。株主資本は,資本金,資本剰余金及び利益剰余金に区分する。
(  ②  )の各項目は,個別貸借対照表上,(  ③  ),株式引受権及び新株予約権に区分する。

A
① 純資産の部
② 株主資本以外
③ 評価・換算差額等
*純資産表示会計基準4項,5項,7項
『連結B/Sも含めてもう少し詳細に見ておこう!』(桜井23版,287頁本文および「図表11-13」)

Q2(空欄補充)
連結貸借対照表において,連結子会社の個別貸借対照表上,(  ①  )に直接計上されている(  ②  )は,持分比率に基づき親会社持分割合と(  ③  )割合とに按分し,親会社持分割合は当該区分において記載し,(  ③  )割合は(  ③  )に含めて記載する。

A
① 純資産の部
② 評価・換算差額等
③ 非支配株主持分
*純資産表示会計基準7項(2)
『親会社説がとられているのか。。。』

Q3(空欄補充)
(  ①  )には,その他有価証券評価差額金や(  ②  )のように,資産又は負債は(  ③  ) をもって貸借対照表価額としているが当該資産又は負債に係る評価差額を当期の損益としていない場合の当該評価差額や,(  ④  ),退職給付に係る調整累計額等が含まれる。当該( ①  )は,その他有価証券評価差額金,(  ②  ),退職給付に係る調整累計額等その内容を示す科目をもって表示する。

A
① 評価・換算差額等
② 繰延ヘッジ損益
③ 時価
④ 為替換算調整勘定
*純資産表示会計基準8項
『何やら難しそうな科目が出てきやがった! こういうときはあれこれ考えず “丸暗記” する!』

Q4 資本剰余金の内訳科目を2つ答えなさい。


(1) 資本準備金
(2) その他資本剰余金
*純資産表示会計基準6項(1)
『今日は知っている科目なのでほっとする…』

Q5 純資産会計基準ではなぜ貸借対照表を資産・負債・純資産と区分したのか?


資産性又は負債性をもつものを資産の部又は負債の部に記載し,それらの差額として「純資産の部」を設けた。結果,報告主体の支払能力などの財政状態をより適切に表示することが可能となると考えられたから。
*純資産表示会計基準21項
『純資産とは資産でも負債でもないものということでしょうか⁈』(桜井23版,251頁)

Q6 新株予約権はなぜ従来の負債の部から純資産の部へ表示が変わったのか?


新株予約権は,将来,権利行使され払込資本となる可能性がある一方,失効して払込資本とはならない可能性もある。このように,発行者側の新株予約権は,権利行使の有無が確定するまでの間,その性格が確定しないことから,これまで,仮勘定として負債の部に計上することとされていた。しかし,新株予約権は,返済義務のある負債ではなく,負債の部に表示することは適当ではないため,純資産の部に記載される。
*純資産表示会計基準22項(1)
『権利行使されれば払込資本で,失効すれば戻入益(利益剰余金)となる。いずれにしても株主資本になる宿命を持って生まれた!』

Q7 新株予約権はなぜ株主資本と区別して記載されるのか?


新株予約権は,報告主体の所有者である株主とは異なる新株予約権者との直接的な取引によるものであり,株主に帰属するものではないため。
*純資産表示会計基準32項
『いずれ株主資本になる宿命を負っていても現時点ではまだ株主資本に帰属していないということだね。なるほど!』

◎復習しましょう!
1.CF計算書
2.一株当たり当期純利益
3₋1.金融商品会計①‐⑦
3₋2.金融商品会計⑧‐⑭
3‐3.金融商品会計⑮‐⑳
4-1.棚卸資産会計①‐⑥
4-2. 棚卸資産会計⑦‐⑫
5‐1.収益認識会計①‐⑦
5₋2.収益認識会計⑧-⑫
6.リース会計①‐⑥
7.固定資産の減損①‐⑩
8.ソフトウェア会計①‐⑥
9.研究開発費会計①‐⑦
10.繰延資産①‐⑦
11.退職給付会計①‐⑥
12.資産除去債務①‐⑥
13.税効果会計①‐⑥
14.ストック・オプション会計と役員賞与(報酬)会計①‐⑧
15.自己株式①‐⑦
16.準備金の減少①‐⑥

〈執筆者紹介〉
長島 正浩
(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師,会計事務所(監査法人),証券会社勤務を経て,専門学校,短大,大学,大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後,松本大学松商短期大学部准教授を経て,現在に至る。この間35年以上にわたり,簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。

*本連載は,『会計人コース』2020年1月号付録『まいにち1問ポケット財表理論』に加筆修正したものです。


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