連載 『会計士・税理士・簿記検定 財務会計のセンスが身につくプチドリル』(第119回)ー 資産除去債務①‐⑥の復習


長島 正浩(茨城キリスト教大学教授)

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Q1(空欄補充)
資産除去債務は,(  ①  )の取得,建設,開発又は通常の使用によって(  ②  )した時に負債として計上する。資産除去債務は,(  ③  )日後1年以内にその履行が見込まれる場合を除き,(  ④  )の区分に資産除去債務等の適切な科目名で表示する。(  ③  )日後1年以内に資産除去債務の履行が見込まれる場合には,(  ⑤  )の区分に表示する。

A
① 有形固定資産
② 発生
③ 貸借対照表
④ 固定負債
⑤ 流動負債
※資産除去債務の発生時に,当該債務の金額を合理的に見積ることができない場合には,これを計上せず,当該債務額を合理的に見積ることができるようになった時点で負債として計上する。
*除去債務会計基準4項,5項,12項
『残存価額がマイナスになるような場合を考えてみる』

Q2 「資産除去債務」とは何か,説明しなさい。

A
資産除去債務とは,有形固定資産の取得,建設,開発又は通常の使用によって生じ,当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるものをいう。
*除去債務会計基準3項(1)
『原子力発電施設の解体費用が典型例』

Q3 有形固定資産の「除去」とは何か,説明しなさい。

A
有形固定資産の「除去」とは,有形固定資産を用役提供から除外することをいう(一時的に除外する場合を除く。)。除去の具体的な態様としては,売却,廃棄,リサイクルその他の方法による処分等が含まれるが,転用や用途変更は含まれない。
なお,有形固定資産が遊休状態になる場合は除去に該当しない。
*除去債務会計基準3項(2)
『原子力発電所を解体するには20~30年かかると言われている』

Q4 資産除去債務を引当金処理せずに資産負債の両建処理する理由は?

A
引当金処理の場合には,有形固定資産の除去に必要な金額が貸借対照表に計上されないことから,資産除去債務の負債計上が不十分である。資産負債の両建処理は,有形固定資産の取得等に付随して不可避的に生じる除去サービスの債務を負債として計上するとともに,対応する除去費用をその取得原価に含めることで,当該有形固定資産への投資について回収すべき額を引き上げることを意味する。この結果,有形固定資産に対応する除去費用が,減価償却を通じて,当該有形固定資産の使用に応じて各期に費用配分されるため,資産負債の両建処理は引当金処理を包摂するものといえるから。
*除去債務会計基準33項,34項
『両建処理を実際に仕訳でやってみる』(桜井23版,247頁「設例11」)

Q5 除去費用を有形固定資産とは別の資産にしなかったのはなぜか?

A
除去費用は,法律上の権利ではなく財産的価値もないこと,また,独立して収益獲得に貢献するものではないことから,別の資産とはしていない。当該除去費用は,有形固定資産の稼動にとって不可欠なものであるため,有形固定資産の取得に関する付随費用と同様に処理するため。
*除去債務会計基準42項
『将来の除去費用を固定資産の取得原価に含めるとはおもしろい!』

Q6 土地の原状回復費用は?(どう費用計上されるか)

A
土地に関連する除去費用(土地の原状回復費用等)は当該土地が処分されるまでの間,どのように費用計上するのかが問題となるが,土地の原状回復等が法令又は契約で要求されている場合の支出は,一般に当該土地に建てられている建物や構築物等の有形固定資産に関連する資産除去債務であるため,当該有形固定資産の減価償却を通じて各期に費用配分されることとなる。
*除去債務会計基準45項
『別に土地を減価償却しているわけではないので大丈夫!』

◎復習しましょう!
1.CF計算書
2.一株当たり当期純利益
3₋1.金融商品会計①‐⑦
3₋2.金融商品会計⑧‐⑭
3‐3.金融商品会計⑮‐⑳
4-1.棚卸資産会計①‐⑥
4-2. 棚卸資産会計⑦‐⑫
5‐1.収益認識会計①‐⑦
5₋2.収益認識会計⑧-⑫
6.リース会計①‐⑥
7.固定資産の減損①‐⑩
8.ソフトウェア会計①‐⑥
9.研究開発費会計①‐⑦
10.繰延資産①‐⑦
11.退職給付会計①‐⑥

〈執筆者紹介〉
長島 正浩
(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師,会計事務所(監査法人),証券会社勤務を経て,専門学校,短大,大学,大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後,松本大学松商短期大学部准教授を経て,現在に至る。この間35年以上にわたり,簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。

*本連載は,『会計人コース』2020年1月号付録『まいにち1問ポケット財表理論』に加筆修正したものです。


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