諸角 崇順
【編集部から】
会計人コースWebの記事を解析すると、税理士試験・会計士試験ともに独学での学習法についてPV(ページビュー)が非常に多いです。でも、独学の場合「いつ・何を・どう勉強していけばよいか」を自分自身で考えて実行しなければならず、この点が受験生の大きな悩みどころではないでしょうか。
そこで、本連載では、敏腕講師のかえる先生(諸角崇順先生)に、主に独学で税理士試験の簿記論・財務諸表論の学習をスタートする方、もしくは前回の試験までは専門学校を受講していたものの次回は独学で再チャレンジしようという方に向けて、毎月1回、その時々で実践すべき学習内容を提示して合格をナビゲートしていただきます(毎月1日更新予定・23年8月1日まで全11回予定)。
独学の方はもちろん、専門学校の講義を受講している方も是非参考にしていただければと思います。
それでは今月の学習ナビゲーション、スタート!
’22年10月の学習ナビ
みなさま、こんにちは!
私は「かえるの財務諸表論」という学校で簿記論と財務諸表論を教えているのですが、これから来年の本試験までの約1年間、独学の方を主なターゲットとして、簿記論・財務諸表論の勉強の進め方をご紹介していきます。
今回は第1回目なので、まずは簿記論・財務諸表論と区別せず、全体的なお話をしてから、簿記論・財務諸表論(計算)・財務諸表論(理論)に分けて、この時期にぜひ実践してほしいことを解説していきます。
まずは、“自分にとってベストな勉強方法”を見つける!
一般的に、資格学校の税理士コースは、8月の本試験で一区切りがつくことから、9月に開講することが多くなります。
そして、開講間もない9月~10月は、受験生に勉強のペースをつかんでもらう趣旨から比較的ゆったりとしたカリキュラムが組まれていると思います。
なので、授業の復習を比較的短時間でこなして、余った時間を旅行やカラオケ、飲み会に費やす受験生も多いと思います。
しかし、この時期、余った時間があるのであれば、ぜひともやっていただきたいことがあります。
それは、“自分にとってベストな勉強方法を見つけること”です。
今まで高校受験や大学受験で比較的長期間の受験生活を送ったことのある方も多いと思います。
まずは、その過程で身につけた勉強方法を第一に考えるのは当然なのですが、その方法がベストとは限りません。
なので、講師や合格者からさまざまな勉強方法を聞き、それらの方法を週単位で試し、今まで自分がやってきた勉強方法よりいいと思えるところがあれば取り入れ、自分にとってベストな勉強方法を確立させてほしいのです(例えば暗記なら、①黙読、②音読、③書く、④パソコンに打ち込む、⑤歩きながら、もしくはこれらの組み合わせ、など)。
もちろん結果として自分に合わない方法を試すことになってしまった場合は、その週の勉強をやり直すことになるので、かなりの時間を消費することになるかもしれません。
しかし、このような試行錯誤をカリキュラムがタイトになってくる年明けや直前期にできるはずもありません。
ですので、ぜひ比較的時間が取れるこの時期に試行錯誤して、自分にとってベストな勉強方法を見つけてほしいと思います。
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次に、簿記論・財務諸表論(計算)・財務諸表論(理論)に分けて、この時期にやっておいてほしいことを書いていこうと思います。
【簿記論】―日商簿記2級レベルを完璧にする!
一般的に日商簿記2級の知識があることを前提に、税理士簿記論のテキストや問題集は作られていることから、日商簿記2級の内容(商業簿記のみで大丈夫です)に不安のある方は、遠回りに思うかもしれませんが、1冊気に入った日商簿記2級の問題集を買って一通り解いてみてください。
そこで正解率が低ければ、日商簿記2級のテキストも購入し、とにかく日商簿記2級の内容を完璧に仕上げてください。
税理士簿記論のテキストや問題集で「解説を読んでもわからない」とか「一単元進むのに異常に時間がかかる」などは日商簿記2級レベルの知識不足がほとんどです。
急がば回れ、です。
結局、この時期に日商簿記2級の内容、すなわち基礎をしっかりとさせたほうがその後の成績の伸びが違ってきます。
税理士簿記論のテキストや問題集に苦戦している方は、だまされたと思って一度やってみてください。
1週間あたりの勉強時間の目安:11時間前後
【財務諸表論(計算)】―科目名や配列順序、表示区分など、簿記論との違いを意識する!
簿記論と異なり、科目名や配列順序、表示区分など覚えるべきことがたくさんありますので、なるべく早い時点で覚えなければいけないことは覚えてしまいましょう。
英語でいえば英単語にあたるこれらの論点に不安を抱えたままだと今後の学習に自信を持てなくなってしまいます。
また、「簿記論をやっていれば財務諸表論の計算はそれほど勉強する必要はない」という話を聞いたことがあるかもしれませんが、もし、簿記論の内容で財務諸表論の計算がカバーできるのであれば、財務諸表論は理論だけの科目になるはずです。
簿記論と異なることをするからこそ財務諸表論でも計算が出題されるわけですから、簿記論を学習している方も謙虚に財務諸表論の計算に取り組んでください。
科目名や配列順序、表示区分など、簿記論との違いを意識してしっかりおさえてくださいね!
1週間あたりの勉強時間の目安:6時間前後
【財務諸表論(理論)】―月1ペースで基本書を通読する!
この時期に限らず月1回のペースで、いわゆる基本書を通読してほしいと思います。
この際、わからない言葉があっても特に調べたりせず、さっと読む程度でかまわないので、この基本書の通読を本試験まで毎月継続してほしいと思います。
この通読を繰り返すことによって、会計用語にも知らぬ間に慣れることができますし、点の知識が線につながっていくことになります。
急激な成績の上昇にはつながりませんが、直前期になると、絶対にやっておいてよかった、と思えるはずなので、早速始めましょう。
また、理論の学習を始めて間もないこの時期は、今、自分が理論の世界のどのあたりを学習しているのかが見えないため、勉強しても勉強しても力がついてきている実感が持てず、どうしても不安な気持ちになると思います。
ですが、1つひとつ理解した論点を増やしていくことで、突然パッと視界が開けることがあります。
それまでは「理論暗記しても意味ないなぁ」とは思わず、コツコツ勉強を続けましょう。
今は、「習うより慣れよ!」の気持ちでなるべく理論に時間を割いて、理論に慣れていってほしいと思います。
1週間あたりの勉強時間の目安:8時間前後
(編集部注)基本書の具体的な選び方・読み方については、以下のバックナンバーをぜひご参照ください。
◎【税理士・財務諸表論】“自分だけの1冊”を見つけよう! かえる先生が教える「基本書」の選び方
◎【税理士・財務諸表論】理論が1本の線になる! かえる先生が教える「基本書」の読み方
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第2回は11月1日(火)にUP予定です。
ご期待ください!
【連載バックナンバー】
第1回(10月の学習ナビ)
第2回(11月の学習ナビ)
第3回(12月の学習ナビ)
第4回(1月の学習ナビ)
第5回(2月の学習ナビ)
第6回(3月の学習ナビ)
第7回(4月の学習ナビ)
第8回(5月の学習ナビ)
第9回(6月の学習ナビ)
第10回(7月の学習ナビ)
第11回(8月の学習ナビ)
<執筆者紹介>
諸角 崇順(もろずみ・たかのぶ)
大学3年生の9月から税理士試験の学習を始め、23歳で大手資格学校にて財務諸表論の講師として教壇に立つ。その後、法人税法の講師も兼任。大手資格学校に17年間勤めた後、関西から福岡県へ。さらに、佐賀県唐津市に移住してセミリタイア生活をしていたが、さまざまなご縁に恵まれ、2020年から税理士試験の教育現場に復帰。現在は、質問・採点・添削も基本的に24時間以内の対応を心がける資格学校を個人で運営している。
ホームページ:「かえるの簿記論・財務諸表論」
【書籍紹介】