【連載】<税理士試験簿記論&財務諸表論> 敏腕講師・かえる先生の独学合格ロードマップ2023(第5回)


諸角 崇順

【編集部から】
会計人コースWebの記事を解析すると、税理士試験・会計士試験ともに独学での学習法についてPV(ページビュー)が非常に多いです。でも、独学の場合「いつ・何を・どう勉強していけばよいか」を自分自身で考えて実行しなければならず、この点が受験生の大きな悩みどころではないでしょうか。
そこで、本連載では、敏腕講師のかえる先生(諸角崇順先生)に、主に独学で税理士試験の簿記論・財務諸表論の学習をスタートする方、もしくは前回の試験までは専門学校を受講していたものの次回は独学で再チャレンジしようという方に向けて、毎月1回、その時々で実践すべき学習内容を提示して合格をナビゲートしていただきます(毎月1日更新予定・23年8月1日まで全11回予定)。
独学の方はもちろん、専門学校の講義を受講している方も是非参考にしていただければと思います。
それでは今月の学習ナビゲーション、スタート!

「まだ、大丈夫!」を正しい意見にできるのは自分だけ

みなさん、こんにちは! 年末年始の休暇で年内の総復習はしっかりできたでしょうか?

私は現在、個人で資格学校を営んでいますが、以前は大手資格学校で毎年100人以上の生徒を指導してきました。その経験を踏まえると、年末年始に「計画通りの総復習ができました!」という方は10~20%程度でした。

このように書くと、計画通りの総復習ができなかった方は、ホッとされるかもしれませんね。
でも、「科目別の合格率」をよく考えてみてください。

年によって差はありますが、だいたい15%前後です。なので、年末年始に総復習がうまくいかなかった方というのは、現時点では非常に厳しい状況にあることになります。

周りの友人は「まだ、大丈夫だよ!」というかもしれませんね。
それは正しい意見でもあり、間違った意見でもあります。

もちろん、今からこの遅れを取り戻すために今まで以上に勉強時間を確保し、猛烈に追い上げることは可能です。そして、もちろん、ここでの遅れが最後の最後までひびくこともあります。

友人の「まだ、大丈夫だよ!」を『正しい』意見にするのは、あなた自身です。甘えた考えは捨てて、必死になりましょう。特に簿・財受験生は、科目合格がゼロという方が多いわけです。
1つでも科目合格していれば、「これぐらい勉強すれば合格ラインにのってくるんだ」ということが体感としてわかるのですが、その経験がない以上、とにかくがむしゃらに勉強するしかありません。

さあ、これを読み終わったら、すぐにやりましょう。
「明日から」ではなく、「今すぐに」です。

それでは、科目別のアドバイスをします。

簿記論・財務諸表論(共通)―過去問を解こう!

11月の記事で「過去問を一度解いてみましょう!」と提案しました。そのうえで今回、2月1日掲載の記事においても、「過去問を解くこと」を提案します。

11月の段階で過去問を解くことをおすすめした理由は、形式的な確認をするためです。
「計算用紙というものがあるのか」
「理論の解答用紙はこんな感じか」などですね。

しかし、年末年始のお休みが終わったこの時期では、「問題表現を確認する」ために過去問を解いてみましょう

資格学校では、基本的に問題作成に慣れた講師が問題作成をし、その問題を、これまたベテランの講師が校正するので、市販されているテキストや問題集の問題文は、とても読みやすくなっています。

しかし、本試験では試験委員の先生独特の表現があるので、「読みにくい」と感じるかもしれません。もし、過去問を解いて、少しでも読みにくいと感じたならば、今、メインで使っている独学用の教材を出版している資格学校とは違う資格学校の問題集も購入し、形式の多様性に慣れておくとよいと思います。
また、5月以降の直前期は、積極的に複数の資格学校の答練を受けに行きましょう。

簿記論―総合問題の演習量を増やして解法ルートの熟練度をUP!

1月の記事では、「新しい知識を習得する勉強以外に戦略面も鍛えてほしい」とアドバイスしました。本試験に合格するためには、新しい知識の習得と並行して、知識を得点に結びつける練習(戦略の練習)が必要となります。

この時期、順調に学習が進んでいる方は、一時的に成績が下がることになります。知識が増えてくると、正解にたどり着くルートを複数持てるようになります。それにより、今までは反射的に解いていた問題を、解法ルートを複数持ってしまったがゆえに、迷いながら解くことになるからです。

でも、それは学習が順調に進んできている証拠。ロールプレイングゲームでもそうですよね。この敵には剣がよく効くけど、あの敵には剣よりも魔法の呪文のほうがよく効く、そんな状態です。

今は、本試験攻略のための武器をせっせと増やしている状態ですが、その武器の使い方まで押さえきれていない、一番歯がゆい時期です。
ここで腐らず、とにかく総合問題の演習量を増やして、それぞれの武器(解法ルート)の熟練度を上げてください。数ヵ月もすれば、爆発的な得点力となるはずです。

1週間あたりの勉強時間の目安:16時間前後

財務諸表論(計算)―気持ちを切らさないように勉強時間の調整を!

財務諸表論でも簿記論と同じく1月の記事で、「総合問題を解いてください」とアドバイスしました。

ただ、この時期は暗記すべき理論の量がかなり増えてくるとともに、会計事務所にお勤めの方は繁忙期に入るので、総合問題を解くのは1週間に1問程度にして、その分、理論暗記に時間をあててもいいと思います。

仕事が繁忙期に入る、この時期が財務諸表論の受験を諦める方の最も多くなる時期です。気持ちを切らしてしまっては終わりなので、自分でうまく計算に割く勉強時間を調整してくださいね。

1週間あたりの勉強時間の目安:8時間前後

財務諸表論(理論)―理論のつながりを意識する!

10月の記事で、「月1回のペースで基本書の通読をしてください」とアドバイスしましたが、実践できているでしょうか?

実践している方は、そろそろ理論における「点」の知識が「線」につながり始めると思います。講師のアドバイスを受けても、聞くだけで行動まで移せていない人は、やはり受験が長期化します。
愚直に淡々と受験のプロである講師のアドバイスをこなすことが合格への最短ルートです。

企業会計原則と新しい会計基準のつながりを基本書で補うことで知識がつながります。この時期は特に個々の理論のつながりを意識しつつの暗記をがんばりましょう!

1週間あたりの勉強時間の目安:12時間前後

最後に…

最近、特に気になっていることがあるのですが、「講師のアドバイスを素直に聞かない方」があまりにも多いような気がします。

今はさまざまな媒体で講師が学習アドバイスを提供してくれています。講師は、皆さんに受かってもらうために、もっと言えば、「受かってもらえる可能性が最も高くなるアドバイス」をしています。
受験生にアドバイスをしてきた回数では、あなたの周りの受験生仲間の数百倍の経験値があります。

合格するためにはやっぱり最低限やるべきことをやらないといけない。
だから、厳しいアドバイスをすることもある。

本試験が近づけば近づくほど、厳しいことを言うことになります。
あとは、あなたがそれを素直に聞いて実践するか。

SNSで知り合った、会ったこともない友人(?)からのアドバイスは素直に受け入れるのに…。
「まだまだ間に合うよ!」
「〇〇ちゃんなら受かるよ!」
「理論はキーワードだけ覚えたら大丈夫!」とか。

耳に痛くないから、そちらのアドバイスを採用するのかもしれませんが、結局、本試験の直前になって後悔するのはあなた自身であって、その友人は一切責任をとってくれません。

講師は、その時期、その人に合ったアドバイスをできるからこそ「講師」という職業をしているのです。もっと素直に講師の意見を聞いていただけたら、と思っています。

さまざまな媒体で公開されている「講師」のアドバイスの中で、あなたが自分に合うものを選べばいいのです。
決して安易な方向に流れないように。

第6回は3月1日(水)にUP予定です。
ご期待ください!

<執筆者紹介>
諸角 崇順
(もろずみ・たかのぶ)
大学3年生の9月から税理士試験の学習を始め、23歳で大手資格学校にて財務諸表論の講師として教壇に立つ。その後、法人税法の講師も兼任。大手資格学校に17年間勤めた後、関西から福岡県へ。さらに、佐賀県唐津市に移住してセミリタイア生活をしていたが、さまざまなご縁に恵まれ、2020年から税理士試験の教育現場に復帰。現在は、質問・採点・添削も基本的に24時間以内の対応を心がける資格学校を個人で運営している。
ホームページ:「かえるの簿記論・財務諸表論」

【書籍紹介】

『次こそ!税理士試験に合格する方法』(中央経済社)
本記事の執筆者である諸角崇順先生の学習アドバイスをはじめ、合格体験記や独立開業日誌など会計人コースWebの記事に加筆・編集をしてまとめた1冊です。
ぜひご覧ください!

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