直前期の必須ツール! 「模試」「過去問」フル活用術(後編)


税理士 岩下尚義

【編集部から】
直前期に実力を図るツールとして「模試」「過去問」が挙げられますが、より短期間で効果的に「模試」や「過去問」を活用するためには、どうしたらよいのでしょうか。

ここでは、大手専門学校元講師の岩下尚義先生(税理士)にアウトプットの心構えについてアドバイスをいただきました。

ここから巻き返すためにも、ぜひ学習のヒントを見つけてください!

前編はこちらから。

合格レベルかどうか? 「実力」を判定する過去問

過去問は、唯一の公式問題です。試験を問わず必須のツールですね。

過去問を解く目的は本番の「疑似体験」であり、目標は「合格点」を取ることです。

この点は、前回取り上げた「模試」と同じですが、違いを少し意識すると、より効果的です。前回紹介した答練・模試・過去問の比較図をもう一度ご覧ください。

答練・模試は「教材」なので、実力判定だけが目的ではなく、その後の学習につながるような設計がされています。一方で過去問は、知識・能力が合格レベルか否かを「判定」するための問題です。

この「税理士に必要な学識及び応用能力」をどう判定するか。たとえば、

  • 非常に難解な問題で応用力を評価する
  • 狭い範囲のなかで細かい知識を有することを評価する
  • 網羅的な基礎力の高さを評価する
  • ボリュームのある問題で計算の処理能力を評価する

など。上記のポイントをバランスよく取り入れることもあれば、難易度やボリュームに特徴が出ることもありえます。「教材」ではないので当然、未学習の論点だって出題されます。近年の税理士試験でいえば、論理的な思考展開が評価される傾向があるように思います。

このように過去問は、難易度やボリューム、問題の表現や解答に必要な情報の与え方などで、模試や答練よりバラつきが出やすいです。

そのため、過去問は模試を解くときよりも、「時間配分」や「取捨選択」など、より“戦略的な”テクニックが問われていることを意識するとよいでしょう。

過去問では「理解度」ではなく「戦略」を高める

続いて、過去問を解きなおすときのポイントをお伝えします。

模試の復習は、「教材」の一部として答練と同じ位置づけでした(前編を参照)。日頃の学習の軸として「網羅的に実施していく」というものです。

一方で、過去問は「教材」ではありません。もちろん過去問から学ぶ論点もたくさんありますが、それよりも初見時と同様に、「疑似体験」のツールとして何度も活かしていくほうがよいでしょう。

過去問の表現に慣れる。ボリュームがあった年の対策をする。応用論点が多い年の対策をする。いずれも「理解力」の確認というよりも「戦略」の確認です。

試験は本来、知識・思考力を有する人から順に合格できれば理想的かもしれません。しかし、予備校や教材が充実しているなかでは、知識・思考力の他に、解くためのテクニックもまた求められていると思います。そして、このテクニックを身につけるには「訓練」が必要です。

図のように理想は、答練・模試→過去問→答練・模試→…と循環させて取り組むことです。

過去問ばかり解くと、論点を網羅できない可能性もありますし、答練・模試ばかり解いていると、特殊な難易度や構成の問題への対応力に不安要素が残るためです。

繰り返しになりますが、模試は復習の際、「しっかり理解できているかどうか」を確認しましょう。過去問は復習でも、「良い点」を取るのではなく、「合格点」を取れるか否かを確認しましょう(合格ラインが50点の過去問で80点を目指す必要はありません)。

「出題者の意図がわかる」を目指そう!

なぜ解くか。解くことで何を確認し、何を高めていきたいか。

模試も過去問も、それぞれのツールに目的意識をもつこと、同じ問題でも初見・復習時で意識を変えることで、より効果を実感できるはずです。

また、どんな問題でも解いた後は、解答だけではなく出題意図・解説をよく読みましょう。

たとえば過去問は、国税庁ホームページに7年分の「出題のポイント」が掲載されています。

参考:令和3年度(第71回)税理士試験出題のポイント

私も講師時代に答練などを作成した際は、解説に「どんな趣旨で、どんな点を評価しようと思って作成したか」が伝わるようポイントを書いていました。問題を作る側には「どんな点を評価するか」というストーリーがあります。

知識・思考力、そして解法テクニックが身についてくると、過去問を解いた後、出題のポイントを「うん、うん」と頷きながら読めるようになってきます。「意図がわかる=問題が読めている」証です。

問題を解きながら出題者の意図が読み取れるようになってくると、メンタル面でもプラスです。ぜひ、本試験でも試験委員と対話できることを目標に、これからの学習に取り組んでみてください。ファイト!

【執筆者紹介】
岩下 尚義(いわした・たかよし)
税理士・ファイナンシャルプランナー
TAC税理士講座にて財務諸表論、4年制専門学校にて法人税法の講師を経験。実務のほか、顧客や税理士向けの研修講師、小学生から大学生まで各課程での租税教室講師を担当。税務の専門誌をはじめ、「お金の専門家」として子育て情報誌のお悩み相談を担当するなど、伝える活動の幅を拡げている。noteにて、税務や子育てに関する記事も掲載中。


関連記事

ページ上部へ戻る