【税理士試験】スキマ時間に活用しよう! 「復習ノート」の作り方①


税理士 黒木佐由里

はじめまして。税理士の黒木佐由里です。

私は、税理士事務所で働きながら7年で税理士試験に官報合格しました。受験生時代、限られた時間の中で、いかに効率よく勉強をするかを常に心がけていました。

そこで私が活用していたのが、「間違いノート」や「まとめノート」などの「復習ノート」です。このノート、合格するための最強の参考書として、私を合格まで導いてくれた立役者です。

受験生時代、すべての合格科目で、これらのノートを活用してきました。ここでは、私が作っていたノートについて、工夫した点や活用のしかたなどをご紹介します。

簿記論の間違いノートの作り方

計算で繰り返しミスをしてしまう箇所を中心に、簿記論では「間違いノート」を作成しました。以下、ノート作りの際のポイントをお伝えします。

1.まずは時間軸を書いて視覚的に理解

簿記論は、時系列で情報を整理しなければ解けない問題が多く出題されます。そのため、まずは、ノートに時間軸を書き、「いつの時点の」、「どの数字を」、「どう使って」解いていくのか、視覚的に理解できるようにまとめていきました。

2.自己分析でミスのパターンを見つける

続いて、これらの問題の自己分析を行います。「なぜ間違えたのか」や「次に間違えないためには、どうしたらいいのか」など、問題を解いていく過程で自分が何を考えていたのかをしっかりと思い出しながら、その原因と今後の対策を考え、ノートに書きこんでいきました。

ミスのたびにこれらをノートに書き記し、間違いノートのページがどんどん増えてくと、今度はあることに気づきました。自分のミスには一定のパターンがあったのです。そう、間違いノートをつけていくことで、自分にとってミスを誘発しやすい問題は何かを把握することができるようになりました。

その結果、答練や本試験でその問題が出題されたときには、「あっ、ここ、いつもこういうふうにミスをしていた問題だ!」。そんなふうに、問題を解いている際にも意識することができるようになりました。そして、注意して解答するようになったので、計算ミスも大幅に減りました

3.自分へのメッセージやマーカーで強調する

私は受験生時代、とてもケアレスミスが多い受験生でした…。頭ではわかっているけど、ついつい気を抜いてミスを繰り返してしまう。今まで数えきれないくらい悔しい思いをしました。

そこで、「何度も間違えている!!」「ここをこんなふうに間違えるな!!」など、自分へのメッセージを赤ペンや蛍光マーカーを使って強調させて書き込んで、ケアレスミスをしないように注意していました。

財務諸表論の間違いノートの作り方

財務諸表論の「まとめノート」の特徴は理論にあります。

私は理論が大の苦手でした。なんとか丸暗記をしようと「読む」「書く」「自分の声を録音して聞く」をやってはみたのですが、どんなにやってもまったく覚えられず、やっと覚えてもすぐ忘れる…、その繰り返しでした。

そこで私は「暗記すること」ではなく、「理解すること」にシフトして勉強することにしました。「理解」とは、会計基準の目的や、新会計基準がなぜ開発されたのかなど、その背景を含めて体系的に理解することです。「理解ができれば作文で書ける」、「作文で本試験に合格するんじゃないか?」、そう思いました。

そして、私は実際に、作文で合格することができました。ただし、「作文」とはいえ、試験時間内に文章を作成するのは容易なことではありません。「作文」ができるようになるためには、「対策」を行う必要があります。ここでもノートが助けてくれました。以下、理論対策のまとめノートの作り方をご紹介します。

1.声に出しながらWordで入力

私は理論が大の苦手とお伝えしましたが、まずは理論のキーワードとなる部分をインプットしないと先へ進めません。そこで、まずはテキストの内容を噛み砕き、自分が理解できる言葉に置き換える作業をしました。これをすることで、体系的に理解することができ、インプットも無理することなく続けることができます(多少時間はかかりましたが…汗)。

次は、アウトプットの練習をしてきます。問題集を解くことはもちろんですが、その他にも専門学校で行われる「答案練習」(答練)を活用することをオススメします。私は、毎回の答練が終わると、その日のうちに、Wordにその理論問題と模範解答を丸写しし、Q&A集を作りました。問題文と模範解答を一目で確認することができます。

ここでのポイントは、入力する際に「声に出して読みながら」です。声に出すことによって、「目で見て、耳で聞いて、手で書いて(入力して)」の3つの効果が得られます。

もう1つのポイントはWordを使うことです。手書きでこれをやってしまうと、とても時間がかかるうえに、腕が腱鞘炎になってしまいます。

2.Dropboxに保存してスキマ時間を有効活用

入力したまとめノートは、Dropboxなどのクラウド上に保存することをオススメします。クラウド上に保存することによって、スキマ時間さえあれば、スマホからでもパソコンからでも、いつでも、どこでも、自分が入力したWordを見ることができます。

受験生時代には、Dropboxのようなサービスの存在を知りませんでしたので、当時はUSBのフラッシュメモリーにまとめノートを保存しておいて、たとえば会社のお昼休みなど、スキマ時間にパソコンさえあれば見られるような状態にしていました。

3.プリントアウトして、声に出して読もう

Wordでまとめノートを作成したら、プリントアウトして、毎日声に出して読み上げていました。ノートを声に出して読むだけ。これは、暗記するよりもはるかに楽で、時間もあまりかけなくてすむため、貴重な時間をほかの勉強に使えます。

それに、このノートは、「問題」と「模範解答」が同じページあるため、「どんな問題」が出たら「どんな解答」を書けばよいか、ある程度パターン化していることに気づくことができました。

財務諸表論でよく出題される「穴埋め問題」や「間違いを正す問題」については、この方法で自然と得意問題になっていました。

4.答練で高い点数が取れなくても焦らない

一方、この方法で勉強をしていると、専門学校の答練ではあまり高い点数が取れなかったりします。なぜなら、専門学校の答練は予告理論というものがあり、採点も丸暗記による精度の高い文章を想定しているため、丸暗記している受験生には敵いません。

しかし、暗記に頼った学習をしていると「暗記している問題しか解けない」というデメリットがあります。「どんな問題が出ても、自分の言葉でなにかしら書ける」ことができるようになれば、本試験で白紙の答案用紙を出さなくてすみますし、「暗記していない問題が出たらどうしよう…」といった不安を本試験前に抱えなくてすみます。

ただし、注意しないといけないことがあります。

それは、この方法は財務諸表論に限り通用する話、ということです。財務諸表論は、本試験において作文で回答しても十分な時間の余裕があります。実際に私は、本試験で時間が余りました。

ですが、これは税法科目の受験ではまったく通用しないやり方です。税法の理論暗記は、一語一句、スラスラ言えるレベルの受験生が多くいるなかで、合格を勝ち取っていかないといけません。

次回(10月26日公開予定)、税法科目の受験に備えた「復習ノート」の作り方をご紹介いたします。

【執筆者紹介】
黒木 佐由里
(くろき さゆり)
黒木税理士事務所・税理士。税理士事務所で働きながら、7年をかけて2017年に官報合格。
合格科目は簿記論・財務諸表論・消費税法・相続税法・法人税法。2018年3月に税理士登録。税理士を目指す受験生を応援するブログ「税理士のたまごが集まる寺子屋」にて、受験生時代に培った勉強法を公開。

※本連載は「会計人コース」2018年11月号掲載「スキマ時間に活用しよう! 簿・財・税法「復習ノート」の作り方」を再編集したものです。


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