税理士試験【簿記論】合格発表をうけて今後の学習アドバイス


渡邉 圭(千葉商科大学准教授)

【編集部より】
さる11月30日(木)、令和5年度税理士試験の合格発表が行われました。合格発表をうけて、受験戦略を再検討する人、同じ科目の受験に再挑戦する人などさまざまだと思います。
来年の本試験まで、どのように学習計画を立てればよいかなどについて、主要科目ごとにアドバイスを頂きます。本記事を参考に、合格に向けてよりよいスタートを切りましょう!

合格発表をうけて

第73回税理士試験「簿記論」は、前回よりも合格率が低いですが、税理士試験全体で見ると、高めの合格率が維持されています。なお、私も、自己採点60点前後の学生から簿記論合格の報告を受けています(2023年11月30日時点)。

2024年に再チャレンジする人は、あきらめず合格に向けて受験勉強に励んでください。
まずは来年に向けて、年内は学習計画を作成し、現在の学習方法をより改善できるように検討しましょう。

税理士試験の合格発表をうけて、結果や点数が明らかになり、その成績によって学習計画が異なります。
そこで本記事では、再チャレンジする受験生向けに「復習の方法」や「学習計画」をお伝えします。私自身は、再受験で簿記論に合格をしたので、受験生のときに実践した学習方法についてもご紹介します。

結果が50点台のケース:他の科目と並行して学習!

結果が50点台の場合は、9月または1月から専門学校で開講される別科目の講座を受講し、並行して学習しましょう。簿記論は4月または5月のゴールデンウィークを目安に、応用問題集から復習を行い、資料通信などの講座を利用して模試演習をするとよいでしょう。

応用問題集は個別問題・総合問題に区別できます。個別問題は、問題の理解度を確認することができ、総合問題はメモなどのまとめ方のアプローチ方法を学ぶことができます。これらを意識して自身の課題を見つけて改善策を検討してください。

私の場合、個別問題の本支店会計では損益勘定が問われるケースもあるため、本支店で共通する決算整理事項などは、本店と支店を別々に仕訳して横並びにメモを書いていました。また、総合問題では「仮計算表」をつくり、本支店の決算整理前残高試算表の金額を合算してメモを取っていました。

そこで、4月から6月中旬までは応用問題集(必要に応じて個別問題集も学習)や前回の模試を使って復習を行い、6月下旬から7月にかけて今年度用の模試を演習できるような学習計画案を提案します。

並行している科目の学習計画も考慮してスケジュールを練ってください。例えば、応用問題集を2週間かけて復習する場合は、予備日も含めて2週間半を基準に学習計画を作成することで、急な仕事や家の事情などにより学習できない日があっても対応できます。

予備日を消費しなかった場合は、次のステップに学習を進めてもよいですし、休憩などの気分転換をする日に設定してもよいと思います。

気分転換は、友人と一緒に遊ぶ、一人の時間を大切にするなど、人によって方法が異なります。自身合った気分転換をしましょう(私はジブリ飯などの料理をしていました(^-^))。

結果が50点未満のケース:簿記論1科目に集中して学習!

12月は学習計画を練り、理解度が不十分な論点を整理するため、個別問題集から復習をしましょう。復習は年明けからでも構いません。

私は初受験の簿記論でD判定(当時は点数表示がありませんでした)を取ったことがあります。1年間学習したにもかかわらず、成果がでずにショックを受けた記憶が残っています。

経験則になりますが、受験勉強に限らず仕事などは、成果が出たときよりも、出なかったときのほうが記憶に残るものだと思います。悪い結果を受け止め、もう一度受験しようと決めたときは、1つずつ課題を整理して個別問題の復習とメモのまとめ方を改善しました。今では、このようなの経験ができたことで学生指導に活かせているためよかったと思います。

そこで、1月から専門学校で開講する経験者向けの講座を受講する場合、4月からゴールデンウイークまでは、個別問題集、基礎(総合)問題集、応用問題集を使って復習を行い、その後、資料通信を利用して模試の演習を行う案を提案します。

また、予備日も含めて学習計画を作成することで、急な仕事や家の事情により学習できない日があっても対応できます。
予備日を消費しなかった場合は、次のステップに学習を進めてもよいですし、休憩などの気分転換をする日に設定してもよいと思います。

税理士試験は長期戦、一喜一憂せず課題を発見し改善する

ネガティブな意見に負けない強い精神力を養うことも、税理士試験の受験勉強の一部でもあると考えています。心の中は自由に考えて構築することができます。その内面的な考え方が自己を成長させますが、その一方でネガティブな心になれば、マイナス成長もしてしまいます。

受験生の期間は有限であり、時間は止まってくれず、落ち込む間も進んでしまいます。自分の中には必ず良い面と悪い面があり、悪い面を消すことはできません。ですので、悪い面の自分とどうやってうまく付き合えばよいかを考えます。

成長は、友達など他人との会話から見える価値観の違い、学習量の多さ、模試の高得点などの外的な要因が多いのですが、未学習期間の多さ、模試の低得点、周囲の人からの意見、誘惑などのマイナス成長を引き起こす事象も外的な要因です。

マイナス成長をさせる事象が起きた時に、どのように考えるかで行動が変わってきます。例えば、友達から「点数が伸びないなら勉強やめたら?」と言われて、その意見を自分が認めて学習をやめた場合、意見を示した友達の責任ではなく、自己の責任で学習をやめたと考えなくてはいけません。

このような外的な要因を自己が成長できるようにポジティブに考えて、心を成長させていくことが税理士試験を突破するには必要です。

点数が伸びないということは、まだ伸びしろがあると考えることができます。点数が伸びない原因を分析して、それを解決することで、さらに知識を深めることができます。逆に毎回模試で高得点を取っているのに本試験で合格できない受験生もいます。

重要なのは自分のレベルを的確に把握して、それに対応した学習方法を行うことです。
つまり、本試験の前までは獲得した点数が重要なのではなく、獲得できなかった点数が重要です。獲得できなかった点数の方が獲得した点数よりも高ければ、できなかった部分を対策した方が改善しやすいです。

さいごに

本記事では、再受験者を対象に試験結果後の簿記論の学習計画案と受験生のメンタル面についてご説明しました。生活の中で受験勉強を第一優先として、学習がスムーズに行える環境をつくり合格を目指してください。

家族からの声援も感謝と同時にプレッシャーにもつながることがありますので、できる範囲で構いません。自身の中で一生懸命学習し合格を勝ち取りましょう!

<執筆者紹介>
渡邉 圭(わたなべ・けい)

千葉商科大学准教授。基盤教育機構・瑞穂会に所属。
2022年3月、千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了、学位取得(政策博士)。
瑞穂会では千葉商科大学学生を対象にした日商簿記検定3級から1級講座、税理士試験講座の運営および学生指導に従事し、2023年6月現在、日商簿記検定1級合格者194名(累計)、税理士試験簿記論合格者59名(累計)・財務諸表論合格者39名(累計)の輩出に貢献している。

<編集部からのお知らせ>
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