直前期の必須ツール! 「模試」「過去問」フル活用術(前編)


税理士 岩下尚義

【編集部から】
直前期に実力を図るツールとして「模試」「過去問」が挙げられますが、より短期間で効果的に「模試」や「過去問」を活用するためには、どうしたらよいのでしょうか。

ここでは、大手専門学校元講師の岩下尚義先生(税理士)にアウトプットの心構えについてアドバイスをいただきました。

ここから巻き返すためにも、ぜひ学習のヒントを見つけてください!

後編はこちらから。

模試や過去問は「疑似体験」を得られるツール

税理士試験も直前期。いよいよ各予備校で模試が始まるシーズンでもありますね。

模試に関しては、私も講師時代に受講生から相談を受けることが多くありました。

たとえば、「いろんな予備校の模試を受けたほうがよいのか」という質問。

個人の学習進捗度によるので「必須」とはいえないのですが、判断の決め手は「疑似体験の数を増やしたいどうか」です。普段受講していない予備校の問題に対し、落ち着いて合格点を目指す戦略をとれるか。その機会を設けたいか否かで判断します。

独学の場合も、「疑似体験」という過程がどうしても不足してしまうため、予備校の模試は非常によい機会になります。

このように模試、後編で取り上げる過去問は「疑似体験」のツールとして、直前期においてとても重要です。

図にしたように、答練でも模試・過去問でも、試験対策用の「総合問題」という点では一緒かもしれません。

ただ、趣旨や取り組む目的が、模試と過去問では異なります。

今回は前編「模試」・後編「過去問」に分けて、それぞれを解く際の目的や活用術を解説します。

模試は「緊張感」を味わうリハーサル

模試の最大の目的は、本試験の疑似体験(リハーサル)です。模試は6月~7月に開催されますが、この時期は学習の進捗度に個人差があるため、「とりあえず現時点でどれだけできるかチャレンジしてみよう」という感覚で受ける方も多いですね。しかし、その「とりあえず」とか「実力チェックをメインに…」といった考え方はNO!です。そのチャレンジは答練や総合問題集でもできます。

模試の目標はただ1つ。模試を受ける時点の実力で「合格点」を目指しましょう。

模試でしかできないことは、合格点を目指す緊張感を経験することです。学んできた理論、計算はどこまで通用するか。問題の取捨選択、時間配分といった解法テクニックは通用するか。そして、普段しないようなケアレスミスや問題の読み飛ばしなど、「ここぞ」という緊張感のなかで陥りやすい失敗のクセを知ることこそ模試の目的です。

まだ実力が伴っていなくても模試を受ける以上は、合格点を目指します。模試は、結果がすべての本番ではありません。結果よりも、使える知識でどれだけ食らいつけるか。2時間諦めずに必死に「できること」を探せるか、挑戦してみましょう(私もボロボロで半泣き状態のなか、模試を受けた経験がありますが、ひたすら簡単な箇所を探した経験が本番に活きました)。

また、理想を言えば、前日や当日の過ごし方、持ち物の確認など、試験時間“外”のことも疑似体験できるとよいでしょう。年に1回しかない本試験のリハーサルです。模試で気合を入れて、さまざまなシミュレーションをすることは決して大袈裟なことではないのです。

模試は最良の「解きなおし教材」でもある

模試では「体験」が重要と書きましたが、もう1つ大切なことは「再度解く」ことです。たとえ「疑似体験」ができなくても、何度も解くことで「よき教材」としましょう。

私なりに答練・模試・過去問を比較してみると以下のようになります。

表の「趣旨・目的」に書いたように、試験委員が実力判定のために作成した過去問と違い、模試や答練は、各予備校が網羅的に学習できるように用意した「教材」でもあります。

はじめて見るとき、模試と過去問が「体験」というカテゴリーであれば、復習するときは模試と答練が「教材」というカテゴリーです。特に模試は各予備校の「顔」ともいえる気合の入った問題なので、「より多く解きなおしたい答練」というイメージをもっておくとよいでしょう。

模試で全体像(マップ)が見えてくる!

直前期は「何をしてよいかわからない」「スランプだ……」と迷子になる方が非常に多いです。迷子にならないためには、受験科目の「全体像(マップ)」をイメージできるような学習を目指しましょう。

たとえば次の図は、私が講師をしていた法人税法の一部をマップ化したものです。

会計でいえば「収益-費用=利益」のように、法人税法の世界では「益金-損金=所得」が基本型で、そこから個別の論点に枝分かれしていきます。

これが応用論点になれば、次のマップ②のようにググっと世界が広がります。

たとえるなら、マップ①が日本地図、マップ②が世界地図といった具合でしょうか。

ボリュームのある科目ほど、さまざまな焦点によるマップが必要です。マップを意識することで各論点がつながり、理解が深まり、理論も計算も広範囲で抜け目のない対応ができるようになります。

このようなマップは、模試や答練のように論点が網羅的に出題される問題を解き続けることでイメージしやすくなるでしょう。

次回(後編)は、過去問を解く目的や活用術をご紹介します。

【執筆者紹介】
岩下 尚義(いわした・たかよし)
税理士・ファイナンシャルプランナー
TAC税理士講座にて財務諸表論、4年制専門学校にて法人税法の講師を経験。実務のほか、顧客や税理士向けの研修講師、小学生から大学生まで各課程での租税教室講師を担当。税務の専門誌をはじめ、「お金の専門家」として子育て情報誌のお悩み相談を担当するなど、伝える活動の幅を拡げている。noteにて、税務や子育てに関する記事も掲載中。


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