わたしの独立開業日誌 #税理士・兼重鉄也


【編集部から】
士業の魅力は、独立開業できることにもあります。「将来は独立」を目標に合格を目指している方も多いのではないでしょうか。
そこで、「わたしの独立開業日誌」では、独立した先輩方に事務所開業にまつわるエピソードをリレー形式でお話しいただきます(木曜日の隔週連載)。
登場していただくのは、税理士・会計士をはじめ、業務で連携することの多い士業として司法書士や社労士などの実務家も予定しています。
将来の働き方を考えるヒントがきっと見つかるはずです。

プロボクサーから税理士へ

2016年に広島で開業した、元プロボクサーで税理士の兼重鉄也です。
高校まではサッカーをしていましたが、集団競技に飽きてしまって、大学からボクシングを始めました。
また、大学1~2年生の頃に学業を頑張りすぎた結果、2年間で単位を取得してしまい、3~4年生の頃には、ほぼフリーターのような生活になってしまいました。
昼間はアルバイト、夜はジムに通うという大学生らしからぬ生活…。
それはそれでとても楽しかったのですが、気が付けば就職活動とは程遠くなり、ボクシングでプロになったのもあり、それなら後悔しないよう今を目いっぱい楽しもうという結論に達しました。
「やり切ったら資格でも取ってなんとか食っていこう」とも考えていました。

ボクシング引退後に「税理士になろう」と決意して、当初は独立開業を夢見て勉強をスタートさせました。
町工場で働きながら2科目合格後に税理士法人へ転職したのですが、そこでの居心地が非常に良くて、いつの間にか独立開業のことは忘れてしまっていました。

開業後のプロフィール写真

独立宣言

官報合格後にすぐ税理士登録して、当初は「この税理士法人で出世していきたい」と思っていたのですが、なかなか思ったようにはいきませんでした。
組織というものは、自力だけではどうすることもできず、他力や周りの評価がどうしても影響してくるものです。
そんなことをふと感じてしまった瞬間があり、「それなら自分でやってみよう」と、勤務先には翌日に辞意を伝えました。

用意周到に独立宣言したわけではなかったので、しばらくは不安な日々を過ごしたのを覚えています。
夜中に不安から急に目が覚めてしまったりしたこともありました。
そんな時に家族の楽観的な考え方は本当にありがたかったです、「なんとかなるじゃろう」と。

なので、独立開業して本当にダメだと思ったら、夜中にコンビニや警備員のバイトをしてでも家族を守っていかないといけないとか、そういう覚悟は固まったと思います。

開業後に考案したサイン

見込み客の集め方とスタッフの雇用

とはいえ、開業後の見込み客を集めていかないといけませんから、自分にとってどのような営業戦略が向いているかを考えていくようになりました。
僕がたどり着いたのは、「いかに紹介してもらえる存在となるか」だったのですが、どのような営業戦略が自分に向いているかは、自分のことを客観的かつ冷静に見つめていく必要があると思います。
紹介してもらえる存在となるためには、とにかく好印象で認知されていく必要がありますから、最初の頃は毎晩、飲み会の席に参加しては名刺を配る、といったことをしていました。

しばらくして見込み客に目処がたち、「これだけお客さんがいれば何とかなる」と感じてからの課題は、「最初からスタッフを雇用すべきか」でした。
スタッフを雇用するということは、固定費を押し上げることとイコールですから、ここはかなり迷いました。
結果的に雇用することで入力等の作業や雑務を任せることができ、営業に専念することができて売上を順調に伸ばすことができたので、開業時にスタッフを雇用すべきかどうか迷っている方は、是非ともそれをオススメします。

それから、スタッフを増員するタイミングについては本当に勇気が必要でした。
今となってはスタッフも10名を超えたので、正直な話、スタッフを1名増員したところでほとんど負担感はありませんが、10を11にするのと1を2にするのではワケが違います。
人選を誤ってしまえば、とんでもないことになるリスクもあります。
僕は本当に人に恵まれていて良いスタッフが入社してくれたので、最初は資金繰り等で不安なところもありましたが、間もなくして経営をさらに軌道に乗せることができました。

ノリで金髪にしたこともありました

人生は決断の連続

失敗したなぁと思うことはあまりない、というか失敗事だと捉えていませんね(笑)
所得税の確定申告報酬や相続税申告報酬等でまとまったお金が入るたびに、
高級車を買ってみたり、
エステサロンを経営してみたり、
あとは投資にオールベットしてみたりで、
お金が入ったらすぐ使ってしまう(そして大損してしまうこともあります…)のは、客観的にみても「バカだなぁ」と思うことはありますし、健全な経営方針ではありません。

が、どうせ人生一回きりです。
アラフォーにもなってくると人生の残り時間を意識するようになります(個人差はあると思いますが)。
「就職活動をしない」と決めたときも、「税理士試験合格を目指す」と決めたときも、「独立開業する」と決めたときも、全て自分で決断したことであって誰かに相談したわけではありません。
みなさんの人生も決断の連続でできています。

必要なのは、「勇気」と「責任感」と「何とかなるさ」です。
税理士試験や公認会計士試験って本当に難しい試験だと思いませんか?
その試験を乗り越えることができたなら、きっと何だってできてしまうと思うのです。
そして、大抵のことが「何とかなり」ます。

「独立開業が全て」ではありませんが、みなさんが決断した道を、後悔することのないよう楽しく生きてもらいたいと思っています。

【執筆者紹介】
兼重 鉄也(かねしげ てつや)

1983年生まれ。広島県広島市出身。学習院大学卒業で元プロボクサー。
2013年 税理士試験合格(簿・財・消・住・所)
2014年 税理士登録(登録番号126465)
2016年 広島でかねしげ会計事務所開業。
相続税対策・申告や医師・歯科医師関連の税務や手続きを得意としている。
2020年 働きながら5年で税理士試験に官報合格したのをネタに、自身の勉強方法やノウハウ等を偉そうにYouTubeチャンネル「税理士かねしげてつやせんせー」で配信開始。
現在楽しみにしていることは、自身の書籍出版と広島市内での飲食店オープン。
ハイボール好きで人見知りの3児の父。
事務所ホームページ 
Twitter(@HiAT2020)

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