【税理士試験】試験にでる概念フレームワークをどう勉強すべき?


穂坂治宏

近年、税理士試験・財務諸表論で毎年出題されている「討議資料 財務会計の概念フレームワーク」。
これだけ出題されていると、受験生の皆さんも気になっている方が多いと思いますが、その内容は抽象的かつ難解で、どう勉強していけばよいか悩ましいところですよね。
そこで、人気・実力派講師である穂坂治宏先生に、学習のポイントについて解説していただきました。(編集部)

1.なぜ概念フレームワークか?

概念フレームワークは、正式名称を「討議資料 財務会計の概念フレームワーク」といいます。

「討議資料」はたたき台、「財務会計」は企業外部者に対する会計、「概念」は考え方、「フレームワーク」は枠組みですから、「財務会計の考え方のまとめ」といったあたりでしょうか。

概念フレームワークは、財務会計の考え方を示すものであり、基礎的に重要です。

ただ、基礎的とはいっても、概念フレームワークは会計基準の作成者、プロに向けて作られたものであり、難解です。

また、会計処理が書かれたものではなく、考え方をまとめたものだけに抽象的です。

このように難解で抽象的な概念フレームワークは、できるだけわかりやすく、具体的に学習する必要があります。

この学習のやっかいな概念フレームワークが試験的に重要と考えられるのは、実際に近年、立て続けに出題されているからです。

本記事では、試験で出題されるという視点から、中心的に学習すべき概念フレームワークにおける論点を考えていきます。

2.試験にでた概念フレームワーク

実際の試験では、どのような論点が出題されているのでしょうか?

税理士試験の財務諸表論における概念フレームワークの出題を示しておきましょう。

これ以外にも概念フレームワークを題材にしたとみられる出題はありますが、原文の出題に限定しています。

① 第68回(2018年) 第二問<資産と負債の定義>
② 第69回(2019年) 第一問<混合測定>
③ 第70回(2020年) 第二問<資産と負債の定義>
④ 第71回(2021年) 第一問<財務諸表における認識>

ここ4年間の出題傾向をみると、3つの特徴があります。

1つ目は、過去4年間の出題は、そのすべてが異なる出題者によるものと考えられる点です。

そのため、税理士試験の財務諸表論で概念フレームワークが出題対象と捉えられているといえます。

4年連続で出題されている会計基準はありませんので、その重要性に注目すべきでしょう。

2つ目は、その内容がかなり重複している点です。2度目の出題の際には、前回よりもパワーアップしているという特徴があります。

3つ目は、内容が第3章と第4章に集中している点です。

すでに重複論点が出題されていることからも、これらの傾向は今後も続くといってよいでしょう。

3.試験にでる概念フレームワーク

過去の試験では、第3章と第4章からのみ出題されています。

出題は第3章がやや多く、今後は第4章からの出題も多いとすると、おおむね第1章→第4章と出題の可能性が高くなっていると考えてよいかもしれません。

以下、章ごとにその概要と試験にでそうな論点をあげておきましょう。

第1章 財務報告の目的

財務報告の目的は、投資家の意思決定に役立つ財務情報を開示することにあります。

投資家と企業では、投資家が利益を予想し、企業が実績の利益を開示するという役割の違いがあります。

このような企業が開示する実績情報は、投資家の予想情報のいわば修正のための参考資料として、実際の投資家の投資判断にも影響を与えます。

これまで第1章からの出題はありませんが、会計情報が投資家の意思決定に役立つための実績情報である点が特に重要であり、概念フレームワークが重視しているのが純利益(当期純利益)である点に留意する必要があります。

第2章 会計情報の質的特性

財務報告の目的が投資家の意思決定に役立つことにある以上、会計情報も投資家の意思決定に役立つ必要があります。

最も重要な会計情報の基本的な質的特性が意思決定有用性です。

概念フレームワークでは、意思決定有用性の下位特性をあげていますが、これまでに出題はありません。

第3章 財務諸表の構成要素

概念フレームワークでは、構成要素のうち資産と負債の定義を他の構成要素の定義に先立って行っています。

資産と負債の定義はよく出題されており、今後も出題が予想されます。

もっとも財務報告の目的を考えた場合には、構成要素のうちもっとも重視されるべきは、実績利益としての純利益(当期純利益)といえます。

この意味で純利益と株主資本との関係、クリーン・サープラス関係も重要です。

クリーン・サープラス関係は、企業評価との関連(つまり投資家の意思決定に役立ちます)において欠くことができません。

クリーン・サープラス関係は、利益が資本に反映している関係ですが、資本取引による資本の変動は利益計算に含まれません。

このような意味での資本取引が株主との直接的取引に限定されている点にも留意する必要があります(資本主理論)。

第3章に関連して整理しておきたい論点は次のとおりです(〈 〉内は出題回数)。

資産と負債の定義<3回>
純利益と株主資本のクリーン・サープラス関係(資本主理論を含む)<3回>

第4章 財務諸表における認識と測定

純利益の認識の規準が投資のリスクからの解放です。

純利益の認識を投資のリスクからの解放によった場合の資産の評価は単一の測定値によることなく原価や時価といった複数の測定値によることになります(混合測定)。

また、利益計算の前提にキャッシュフローがあるのも概念フレームワークでの大きな前提です(一致の原則)。 

第4章に関連して整理しておきたい論点は次のとおりです(〈 〉内は出題回数)。

一致の原則<2回>
投資のリスクからの解放<1回>
混合測定<1回>

難解で抽象的といわれる概念フレームワーク。

「どこが出題されるかのか?」という実践的な視点からもぜひアプローチしてみてください。

〈執筆者紹介〉
穂坂 治宏(ほさか・はるひろ)
税理士試験の簿記論と財務諸表論の受験指導をしている税理士(簿財法所消)。ネットスクールで簿財(標準)を担当。月刊誌「会計人コース」(現在は休刊)への執筆も多数。著書に『ど素人でもわかる簿記・経理の本』(翔泳社)などがある。

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