【税理士】科目免除だけが魅力じゃない! 編集部が帝京大学大学院の授業を徹底取材!


みなさん、こんにちは! 「会計人コースWeb」編集部です。

税理士試験の受験生なら一度は考えたことがあるかもしれない「科目免除」。

大学院に進学して修士論文を作成し、その研究内容が国税審議会に承認されれば、税理士試験の試験科目が一部免除されるという制度があります(税法に関する論文であれば税法2科目が、会計学に関する論文であれば会計1科目が免除されます)。

この会計人コースWebでもたびたび取り上げてきたテーマですが、実際に大学院とはどのような場所なのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。

授業の雰囲気は? 修士論文の作成ってどんな感じ? 大学院で身につく力は?

ギモンに思うところ、たくさんありますよね!

そこで今回、「帝京大学大学院経済学研究科」(霞ヶ関キャンパス)にお邪魔し、会計人コースWebで記事をご執筆いただいたこともある岩﨑健久先生(教授、公認会計士・税理士)の授業を取材させていただきました。

社会人でも通いやすいプログラム

はじめに、帝京大学大学院の税理士試験科目免除を目指すプログラム(時間割)がどのようなものか見ていきましょう。

岩﨑先生に以下の4パターンのプログラム(社会人向けの例)を作成していただいたので、ご紹介します。

①・②の「税法コース」は税法2科目免除を目指すプログラム、③・④の「会計システムBコース」は会計1科目免除を目指すプログラムです。

履修パターン(例)

① 税法コース(履修パターンA)

② 税法コース(履修パターンB)

③ 会計システムBコース(履修パターンA)

④ 会計システムBコース(履修パターンB)

※ 社会人学生がより通学しやすくなるように、2022年度より6限を18:15~19:45、7限を19:50~21:20に変更予定。

上記の時間割でいうと、「特講」や「特論」、「総説」で講義が、「演習」でゼミが行われます。ゼミでは、修士論文の執筆に向けた発表や学生同士による意見交換、担当教員による作成指導が行われるということです。

いずれも夜間や土曜日に開講されており、社会人の方でも通いやすいプログラムとなっています。

今回取材した授業は…

さて、数ある授業のなかでも今回取材したのは、毎週火曜19時40分~21時10分に霞ヶ関キャンパスで開講されている、岩﨑先生による「会計監査論特講」という授業。

履修している学生は4名で、全員が修士論文の提出を控える2年生です。

まず、岩﨑先生が履修生から修士論文に関するさまざまな質問を受け付け、個別に指導を実施します。

大学院では、学部と比べると学生の数も少ないため、教授と学生が臨機応変にコミュニケーションをとりあって、このように学生のニーズに応じた授業が行われます。

◆教室の風景。ホワイトボードの手前に座るのが岩﨑先生。

なお、岩﨑先生は、公認会計士・税理士としての実務経験もあり、大学院では税法と会計学の両方の分野に関する講義を担当されております。

修士論文の作成指導はどんな雰囲気?

指導を受ける学生は、岩﨑先生に修士論文の進捗状況、疑問や不安に思っている点などを報告します。

一方で、自分のターンを待つ学生は、パソコンに向かって修士論文の執筆に取り組みます。このようなわずかな時間も修士論文の作成には欠かせません。

今回取材したのは10月上旬。帝京大学大学院にかぎらず、一般的に大学院では、1年生から修士論文のテーマや構成を考えたり、資料を収集したりしているため、2年生の10月ともなると、修士論文の全体像も見えてくる時期。

「完成」に近づけば近づくほど、「もっと自分の修士論文をよくしたい!」という思いがわくようで、積極的に岩﨑先生に質問する姿がみてとれました。

岩﨑先生も学生が書いた修士論文をじっくり読み、「なぜこのような考察をしたのか」「根拠は何か」など、学生に問いかけます。

この「対話」がとても大事で、学生の皆さんは、岩﨑先生と話すことによって自分自身の考えを振り返り、修士論文をよりよい方向に固めていっているように思いました。

「伝わる修士論文」にするために

また、修士論文の指導を見て印象的だったのが、「読み手に正確に伝わるかどうか」を意識しているということ。

たとえば、見出し(章・節のタイトル)と内容が合っているか、脚注は内容に適しているか、といった基本的な部分から、「一方」と「対して」のように似た表現のどちらを使うか、句読点の位置をどうするか、といった細かい部分まで、岩﨑先生はじっくり丁寧に指導されていました。

このきめ細やかな指導の目的は、すべて「伝わる修士論文」にするため。

税理士試験の科目免除を目指す場合、大学院に修士論文を提出するだけではなく、国税審議会に修士論文を提出し、「科目免除に足る」と認められなければいけません。

修士論文は、論文の主旨、内容を相手に伝えることができるよう、読み手の側に立って自分の考えを述べる必要がある、と岩﨑先生はおっしゃいます。

この点を岩﨑先生は学生に伝え、わかりにくい部分があれば、「なぜこのように書いたのか」と学生に意見を聞きながら、よりわかりやすい内容となるようにフォローされていました。

会計学の分野を専門的に幅広く学ぶ

修士論文の作成指導が終わった後は講義に突入!

公認会計士・税理士の資格をもつ岩﨑先生によって、税理士試験の勉強や税法の研究をしているだけでは学ぶことができない話が繰り広げられます。

たとえば、税務署等による税務調査と、公認会計士・監査法人による会計監査の違いをわかりやすく説明されていました。会計監査に関しては、監査基準の意義について理論的な解説も。まさに、税法と会計の両分野を横断した講義です。

「監査」や「公認会計士」に関する話は、近い世界のようでいて、税理士を目指す勉強のなかでは、なかなか知ることはないのではないでしょうか。学生の皆さんも、興味津々といった様子で講義を聴いていました。

岩﨑先生によると、帝京大学大学院では、税法関連の科目のみならず、「会計学の分野を専門的に幅広く学ぶ」という観点から、「会計監査論特講」などのような講義を設けているそうです。

また、地方公共団体監査制度には、公認会計士や弁護士のみならず税理士も入っているとのこと。そのため、今後このような監査の分野において税理士が業務を行う際、学んだことが役立つときもあるのではないか、と岩﨑先生はおっしゃっていました。

興味関心のあるテーマを深く学ぶだけではなく、隣接する分野を専門的に、理論と実務を融合させて勉強できる。

このような知識の幅を広げる勉強を税理士になる前からしておくと、大学院を修了して税理士法人などに勤務してからも、おおいに役立つのではないでしょうか。

学生に帝京大学大学院の魅力をアンケート!

最後に、授業に参加していた大学院生の方々に、大学院に入ったきっかけや大学院の魅力について伺ったので、ご紹介いたします。

T・Nさん(男性・40代・塾講師)

独学で税理士試験の学習を続けていましたが、知人の紹介を受け、大学院に入学することに決めました。

大学院に入学してよかったことは、判例を読む重要性を知り、その読み方を身につけることができたことです。税理士試験の勉強だけを行っていた頃は通達を読むことはありましたが、判例を見るという経験はありませんでした。そのため、大学院に進学していなければ、実務についても判例を読むことはなかったかもしれません。

M・Mさん(女性・30代・会計事務所勤務)

税理士試験を受験していましたが、税法科目に合格することができず、税法2科目を免除できることに興味をもち、大学院に入学しました。また、税法の論文を書くだけではなく、仕事で知識が必要となりそうな国際会計基準の勉強もしてみたいと思ったこともきっかけです。

大学院では、一般的な税法の知識で不足している部分の勉強ができたことがよかったと思います。租税法の基本原則や、試験科目にない国税通則法が勉強できました。論文を書くことによって、さまざまな判例を知るきっかけも得られたと思います。また、税理士を目指す仲間と知り合うことができ、いい刺激になりました。

S・Eさん(男性・25歳)

親が税理士で、親も大学院を修了していたため、自分自身も大学院に入学しました。

帝京大学院大学院の私が所属する岩﨑先生のゼミには、私を含めて学部からそのまま大学院に入ったのが2人、社会人の方が2名います。そのため、学生だけではなく社会人の方の意見などを聞くことができ、とてもためになることが多いです。

Nさん(男性・23歳)

学部生時代に帝京大学の「5年一貫プログラム」(4年次に大学院の授業を受講することで修士課程を1年で修了できる制度)の対象に選出され、かつ、もともと税理士に興味をもっていたことから進学しました。

大学院に入学してみて思ったのは、もちろん科目免除も魅力ではありますが、単純に論文執筆のための研究が面白いということです。普段の授業に関しても、実践的な内容や演習、発表、レポートなどがあるため、血となり肉となっていると感じます。

また、学部生のとき、岩﨑先生の授業は受講していましたが、ゼミは異なる先生でした。そのため、大学院に入るまでは岩﨑先生の人となりは知らなかったのですが、私たち学生のために多くの時間を割いてくれる先生です。ここで学べて本当によかったと思います。


【編集後記】

帝京大学大学院経済学研究科への訪問記、いかがだったでしょうか?

これまで大学院生の方や大学院を修了した方のお話を聞くなかで、大学院は「調べる力」を身につける場所だと感じていました。

しかし、それだけではないのかもしれません。

「調べる力」はもちろんですが、今回の取材を終えて、大学院では「伝える力」も身につくのだと実感しました。

実務の世界に出てからも、わからないことがあれば調べて、自分の答えや考えを導き、そして人に伝えるということが大切になってくる、と岩﨑先生はおっしゃいます。

今回お邪魔した岩﨑先生の授業では、そういった将来を見据えた力が身につくような取り組みがなされていました。

最後に、今回の取材を快くお引き受けいただいた帝京大学大学院経済学研究科の岩﨑先生、学生の皆さま、ありがとうございました!

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〈今回の取材でお世話になった先生〉
岩﨑 健久(いわさき・たけひさ)
帝京大学経済学部教授 博士(法学)・公認会計士・税理士
早稲田大学理工学部応用化学科卒業、筑波大学大学院修士課程経営・政策科学研究科修了(経済学修士)、筑波大学大学院博士課程社会科学研究科法学専攻修了(博士(法学))。太田昭和監査法人(現新日本有限責任監査法人)にて監査・会計業務に従事した後、帝京大学に勤務し、専任講師、助教授を経て現職。コーネル大学、East Asia Programにて在外研究(2007年8月から2009年7月まで)。
日本簿記学会簿記実務研究部会部会長、日本公認会計士協会租税業務協議会・租税相談専門委員会委員長、同協会租税調査会副委員長、同協会租税政策検討専門部会専門委員、同協会学術賞審査委員会委員を歴任。

【主な著書】
『消費税「増税」の政治過程』(中央経済社、2019年)
『消費税の政治力学』(中央経済社、2013年)
『租税法』(税務経理協会、2011年)
『会計監査論』(税務経理協会、2010年)
『レクチャー財務諸表論』(共著、中央経済社、2017年)
『設例でわかる財務会計論』(共著、中央経済社、2010年)


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