【論述に強くなる!財表理論講座】第24回:事業分離会計


長島正浩
(茨城キリスト教大学経営学部教授)


全31回のプログラムで、税理士試験・財務諸表論に強くなる! 
論点ごとに本試験に類似したミニ問題を用意しました。まずは問題1にチャレンジし、文章全体を何度か読み直したところで問題2(回によっては問題3も)を解いてみましょう。そして、最後に論述問題を解いてください。


まずは問題にチャレンジ!

事業分離は,( ① )や事業譲渡,現物出資等の形式をとり,( ② )が,その事業を分離先企業に移転し( ③ )を受け取る。( ② )から移転された事業と分離先企業(ただし,新設される企業を除く。)とが1つの( ④ )に統合されることになる場合の事業分離は,企業結合でもある。この場合には,分離先企業は結合企業にあたり,事業分離日と( ⑤ )とは同じ日となる。

問題1
文中の空欄( ① )から( ⑤ )にあてはまる適切な用語を示しなさい。

問題2
事業分離会計上,「事業分離」とは何か,説明しなさい。

解答

問題1

① 会社分割
② 分離元企業
③ 対価
④ 報告単位
⑤ 企業結合日

問題2

「事業分離」とは、ある企業を構成する事業を他の企業(新設される企業を含む。)に移転することをいう。なお、複数の取引が1つの事業分離を構成している場合には、それらを一体として取り扱う。

基本的な考え方

事業とは、企業活動を行うために組織化され、有機的一体として機能する経営資源をいう。

事業分離日とは、分離元企業の事業が分離先企業に移転されるべき日をいい、通常、事業分離を定める契約書等に記載され、会社分割の場合は分割期日、事業譲渡の場合は譲渡期日となる。

・分離元企業では、移転損益を認識する会計処理移転損益を認識しない会計処理の2通りがある。

論述問題にチャレンジ!

持分の継続・非継続の基礎となっている考え方とは?

【持分の継続】
同種資産の交換の会計処理のように、これまでの投資がそのまま継続しているとみて、移転損益や交換損益を認識せず、事業分離や株式の交換によっても投資の清算と再投資は行われていないと考え、移転や交換直前の帳簿価額が投資原価となる。

【持分の非継続】
売却や異種資産の交換の会計処理のように、いったん投資を清算したとみて移転損益や交換損益を認識するとともに、改めて時価にて投資を行ったとみる場合、事業分離時点や交換時点での時価が新たな投資原価となる。

分離元企業で移転した事業に関する投資が清算されたとみる場合、どのように会計処理を行うか?

移転した事業に関する投資が清算されたとみる場合には、その事業を分離先企業に移転したことにより受け取った対価となる財の時価と、移転した事業に係る資産及び負債の移転直前の適正な帳簿価額による純資産額との差額を移転損益として認識するとともに、改めて当該受取対価の時価にて投資を行ったものとする。

分離元企業で移転した事業に関する投資がそのまま継続しているとみる場合、どのように会計処理を行うか?

移転した事業に関する投資がそのまま継続しているとみる場合、移転損益を認識せず、その事業を分離先企業に移転したことにより受け取る資産の取得原価は、移転した事業に係る資産及び負債の移転直前の適正な帳簿価額による純資産額に基づいて算定するものとする。

〈執筆者紹介〉
長島 正浩(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師、会計事務所(監査法人)、証券会社勤務を経て、資格予備校、専門学校、短大、大学、大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後、松本大学松商短期大学部准教授を経て、現在に至る。この間30年以上にわたり、簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。

※ 本記事は、会計人コース2020年1月号別冊付録「まいにち1問 ポケット財表理論」を編集部で再構成したものです。

〈バックナンバー〉
第1回:キャッシュ・フロー計算書
第2回:1株当たり当期純利益
第3回:金融商品会計①
第4回:金融商品会計②
第5回:金融商品会計③
第6回:棚卸資産会計①
第7回:棚卸資産会計②
第8回:収益認識会計
第9回:固定資産会計①
第10回:固定資産会計②
第11回:ソフトウェア会計
第12回:研究開発費会計
第13回:繰延資産
第14回:退職給付会計
第15回:資産除去債務
第16回:税効果会計
第17回:ストック・オプション会計
第18回:自己株式
第19回:準備金の減少
第20回:純資産の部の表示
第21回:株主資本等変動計算書
第22回:企業結合会計①
第23回:企業結合会計②


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