【日商簿記1級うかる勉強法】平井孝道先生にきく 最近の傾向と学習法



2020年11月15日(日)に第156回日商簿記検定試験が実施されました。コロナ禍で第155回が中止となったこともあり、今回の試験は特別な思いで臨まれた方も多いかもしれませんね。そんな第156回、受験された皆さんの手ごたえはどうだったでしょうか?

今回は【日商簿記1級うかる勉強法】と題して、ここ最近の出題傾向とそれを踏まえた学習法を、簿記のプロの先生方にお話しいただきました☆ 

この記事では、平井孝道先生(株式会社M-Cass 代表取締役)にお話をお聞きしています。

今年度は、6月試験が中止になったため、2月に1級も実施されることが予定されています。次の受験を考えている方は、これからどんな対策をすればよいか、ぜひ簿記学習の参考にしてみてください♪


Q 日商簿記1級の傾向を教えてください。

2級と1級の差がどんどんなくなってきています。

2級で学習した論点が1級にも登場し、1級では、それにプラスアルファの問題が出題されます。

1級に合格するには、2級の学習範囲をしっかり押さえたうえで、2級より複雑な計算処理や1級に特有の論点に対応することがポイントになっています。

Q これからどう学習すればよいのでしょう?

商業簿記
→まずは典型論点をしっかり押さえよう!

第156回試験の商業簿記・第1問では、「純資産勘定」に関する取引が出題されました。「ストックオプション」や「自己株式」、「新株予約権の行使」など、1級で学習する典型論点です。このような典型論点は、しっかり学習することで対応できるので、疎かにしないようにしましょう。

第2問は、「連結会計」が出題されました。ここは、基本的には典型論点が出ているのですが、「コンサルティング料金の支払」や「広告費への振替」といったような、細かいところで見慣れない論点も出ていました。

商業簿記は、細かい論点が出てくることもありますが、決して「難しすぎる!」という論点が出ているわけではありません。まず、典型論点をしっかり押さえるようにしましょう。

会計学
→絶対に押さえておくべき典型論点を完ペキに!

第156回試験では、会計学の第二問に「有価証券」が出題されました。

「有価証券」は、1級だけではなく2級にも3級にも出てきますし、税理士試験や公認会計士試験でも出題されます。まさに、会計を学ぶのであれば、必須の論点です。

会計学には、このような「典型論点のなかの典型論点」といったものが登場するので、必ず押さえておくようにしましょう。

工業簿記
→2級の計算問題がしっかり解けるなら問題ない!

2級の工業簿記は計算がほとんどですが、1級には理論も出ます。押さえておくべき理論は、しっかり覚えておきましょう。

計算のほうは、複数の材料費を計算させるなど、2級に比べて細かい処理が求められますが、やるべきことは2級で学んだことと同じです。

この「材料費」の計算はもちろんですが、「労務費」の計算も2級から登場します。

1級になったからといって、見たことも聞いたこともない計算をやるわけではありません。工業簿記の計算に苦手意識のある方は、まず2級の内容をしっかり押さえることをオススメします。

原価計算
→1級特有の論点を押さえよう

「原価計算」では、「活動基準原価計算」という、1級に特有の論点が登場します。これは、現代の生産プロセスに即した原価計算で、まさに「2級の先をいく」学習内容といえます。 

日商簿記1級は、基本的には2級で学んだ知識をベースに対策できますが、このような「1級ならでは」の論点も忘れずに押さえておくようにしましょう。

最後に…
工業簿記・原価計算のプラスαアドバイス

工業簿記・原価計算は、今回の第156回試験は基本的な内容でしたが、過去には難問が出題されている回もあります。

また、昔から日商簿記1級の工業簿記・原価計算は、非常に練られた「現場思考」の応用問題が出題される傾向にあります。

そのため、まずは基本的な論点を確実に解けるように練習するとともに(勘定記入と計算)、その計算や会計処理について、「どうしてこうなるのか?」を「説明できる」ようにしておきましょう。

説明できなければ、それは理解していないということであり、単に計算方法を覚えているだけです。「わかったつもり」になっている可能性があります。

この「わかったつもり」が、試験に失敗する最大の要因です。

日商簿記1級で「現場思考」の応用問題に対処するためには、「わかったつもり」ではなく、「理解する」ことを目指しましょう。

部門別計算は、原価計算における全体の中でどの部分を計算しているのでしょうか?

そもそも、なぜ部門別計算が必要ですか?

部門別計算がなかったら、製品原価計算はどうなるのでしょうか?

こういったことを説明できるようにしておくことが、「現場思考」の応用問題に対処できる力となります。

日商簿記1級は難しく、受験生は本当に大変だと思いますが、いまビジネスの現場では、管理会計(工業簿記・原価計算)をちゃんと理解し、仕事に活かすことができる人材が求められています。

適切な原価管理や予算管理、設備投資の経済計算ができる人材が必要とされており、その内容を勉強するのが、まさしく日商簿記1級なのです。

あなたが勉強していることは必ず武器になります。勉強は大変ですが、頑張って日商簿記1級の内容を身につけてください!

<お話を聞いた人>
平井 孝道(ひらい・たかみち)
株式会社M-Cass 代表取締役
日商簿記検定1級合格、税理士試験2科目合格、公認会計士試験合格。専門学校や大学で、簿記検定講座(3級~1級)や税理士講座(簿記論)、公認会計士講座(財務会計論・管理会計論)などの15年を超える指導キャリアをもつ。


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