石川景子(資格の大原 財務会計論担当)
【編集部より】
さる12月10日(日)、令和6年公認会計士試験第Ⅰ回短答式試験が実施されました。各専門学校においても速報で模範解答が公表され、自己採点を行う受験生も多いことでしょう。
専門学校ではより多くの情報を基に情報の精度を高めていくようなので、最新の情報をチェックしつつ、来年1月19日の合格発表までは自己採点結果を基に学習プランを立てることになると思います。
そこで、資格の大原財務会計論担当の石川景子先生に、当面の学習についてアドバイスをいただきました!
12月短答式試験を受験された皆さん、本当にお疲れ様でした。
解放感に溢れている方は、頑張った証拠だと思います。
会計士試験の学習を始めても、短答本試験までたどり着かずに学習断念する人はたくさんいらっしゃいます。結果に関わらず、ここまで頑張った自分を褒めてあげてください。
今回の本試験は、例年に比べると全体としてやや易化した印象です。中でも企業法と監査論は取りやすい問題が多い傾向にありました。
財務理論も含め、理論科目は予備校の教材をしっかり復習し、基本的なことをきちんと理解・暗記している人は高得点が狙える問題であったと思います。
計算科目は、難度の高い問題が含まれていたものの、取捨選択がしやすく、取りやすい問題を確実に取って点数を積み重ねることがポイントでした。
まずは自身の現状を把握するために自己採点をして、合格予想ラインと自分の位置を確認することから始めましょう。手応えが良くなかった人も、自己採点をすることで次に向けての自身の課題が見えてきます。
具体的な合格予想ラインについては、各予備校が公表する情報を参考にしてください。
気持ちを切り替えよう!~自己採点結果別アドバイス
合格予想ライン付近&それ以下の人へ
ケアレスミスをして落ち込んでいる人、合格予想ライン付近の点数でモヤモヤしている人、合格予想ラインには程遠くて絶望している人…いろいろな人がいらっしゃると思います。
ただ、次の5月短答式試験まで約5ヵ月しかないことを考えると「合格発表までの約1ヵ月」も貴重な時間です。長く落ち込んでいる暇はありません。
皆さん、1ヵ月前の自分と今の自分を比べてみてください。この1ヵ月で数えきれないほど多くの知識を身につけ、大きく成長したと思います。毎日勉強を続ける受験生の皆さんにとって「1ヵ月」はとても大きな時間です。
仮に今回の結果が良くなくても5月にもう一度チャンスがあります。
そのため、一日も早く気持ちを切り替えて、もう今から直前期だと思って、全速力で走り続ける!
それが5月短答に合格する方の特徴です!
合格予想ラインを超えた人へ
とりあえずホッとしていると思います。
燃え尽き症候群でしばらく勉強したくなくなる人もいると思います。
しかし、短答式試験後すぐに切り替えて論文式試験に向けて全力疾走するライバルもたくさんいますし、リベンジに燃える短答免除生もたくさんいます。
その上、5月短答の難関を突破してくる強者たちもいます。
皆さんのライバルはみんな手強いです。
「過去の栄光は一早く水に流して未来を見ること」が成功の鍵となります。
気持ちの切り替えができて走り出す方が具体的に何をすべきか
自己採点の結果にかかわらず、今やるべきことは基本的には皆さん共通です。
①租税法、選択科目のインプット
②計算科目の苦手論点つぶし
③自分に合う論文対策学習法さがし
①租税法、選択科目のインプットについて
この新たな2科目は、まず講義を受けて復習を丁寧にやる、というこれまで皆さんがやってきたインプット法で良いと思います。講義の復習方法に自信がない方は、講師や身近な成績優秀者に相談してみてくださいね。
この2科目は短答式試験になく苦手とする受験生が多いので、得意科目にすると有利になります。特に租税法は計算科目であるため、しっかり基礎を作れば高得点が狙え、差をつけられる科目だと思います。
②計算科目の苦手論点つぶしについて
計算科目は基本的に短答対策も論文対策も勉強法に大差はありません。財務会計も管理会計も論点が多いので苦手論点が残っている方も多いと思います。苦手論点を学習するのは時間がかかるし効率が悪いと感じて避ける方が多くいらっしゃいます。私自身もかつてはそうでした。
しかし、会計士試験はどの論点からAランク問題(基本問題)が出題されるかわかりません。自分の苦手論点からAランク問題が出て、取らなきゃいけなかった…となりかねません。
「苦手論点=訓練不足+理解不足」と捉えて、この時期に徹底的に向き合って訓練を重ねて苦手意識を無くすことが大事です。テキストを丁寧に読んで理解をしたうえで量をこなせば、誰でもどんな分野でも得意になるはずです!!
参考までに、私が受験生時代にやっていた「苦手克服法」について後述します。
合格発表までの1ヵ月を利用して苦手論点を1つでも減らすことは非常に有意義だと思いますので、時間がかかってもしっかりと向き合ってみてください。
③自分に合う論文対策学習法さがしについて
理論科目の勉強法は短答式と論文式で変わります。短答式は細かな知識を覚えることが要求されましたが、論文は本質を理解しているかが問われます。
予備校の基礎の論文演習については、論証例を暗記するだけでも高得点が取れますが、論文式試験において論証例をそのまま用いて解答できる問題はほんの一部であって暗記だけでは合格点は取れません。
上述した通り、論文本試験では本質の理解や論点間の繋がりの理解などが問われます。
そこで、私がやっていたのは「自問自答法」です。テキストを読みながら自分で自分に問い掛けて、自分の言葉で自分に説明してみる、という方法です。
一つ一つの文章(特に論証例)について「この文章がつまりどういうことか理解できているか」を意識しながら問うようにしました。周りに受験仲間がいる方は仲間同士で問題を出し合うことも効果的です。その上で、専門用語やポイントとなる基準の言い回しは丁寧に覚えて使うようにしました。
理論科目の論文対策学習法は十人十色で、自分に合う方法が見つかった人から伸びるように感じます。皆さんも、自分に合う論文対策学習法を早めに見つけて理解や知識を深めてください。
私が実践した計算の苦手克服法について
STEP1 苦手論点(問題)のなかの「具体的にどの部分が理解できていないのか」を突き止める
漠然と難しい・ややこしいと感じるものであっても、それを少しずつ砕いていって(紙に書き出すと効果的です)、自分が理解できていない点・整理できていない点を突き止めます。
STEP2 STEP1で突き止めた「理解できていない部分」について丁寧に理解する
該当部分(周辺論点含む)について、テキストや基準を読んでみて、それでも理解できなければ講師に質問してください。
※ネット検索も有効な手段ではありますが、ネット情報は全てが正確とは限らないため、情報源に留意してご活用ください。
STEP3 見やすく、ミスをしにくい、下書きを考える
丁寧に理解ができたら、その理解に基づいて自己流の見やすい下書きを考えてみます。上手く思いつかないときは成績優秀者や講師に相談してみましょう。
STEP4 たくさん問題を解く
下書きが固まったら、ひたすら問題を解きます。
ここまできたら、量をこなせば「得意」になります!
さいごに
この記事を読んでくださった皆さんは、合格発表までの1ヵ月も全力で勉強に向かってくれることを信じています!
短答式試験の合格発表後、「結果をうけての学習アドバイス」について記事を執筆しますので、またご一読頂けますと幸いです。
【執筆者紹介】
石川 景子
資格の大原 公認会計士講座 財務会計論(理論)講師
横浜国立大学経済学部卒業。2013年公認会計士試験合格。
大手監査法人にて監査業務に従事後、夫の海外駐在帯同を経て、資格の大原にて常勤講師として活動中。受験生時代に短答式試験の突破に苦労したものの、「自分改革」に成功して上位合格を果たした経験を踏まえて、受講生へ学習方法や学習計画、意識の持ち方など全般的な相談・指導を行っている。