【論述に強くなる!財表理論講座】第17回:ストック・オプション会計


長島正浩
(茨城キリスト教大学経営学部教授)


全31回のプログラムで、税理士試験・財務諸表論に強くなる! 
論点ごとに本試験に類似したミニ問題を用意しました。まずは問題1にチャレンジし、文章全体を何度か読み直したところで問題2(回によっては問題3も)を解いてみましょう。そして、最後に論述問題を解いてください。


まずは問題にチャレンジ!

ストック・オプションを付与し,これに応じて企業が従業員等から取得するサービスは,その取得に応じて( ① )として計上し,対応する金額を,ストック・オプションの権利の行使又は( ② )が確定するまでの間,貸借対照表の純資産の部に( ③ )として計上する。
ストック・オプションが権利行使され,これに対して( ④ )を発行した場合には,( ③ )として計上した額のうち,当該権利行使に対応する部分を払込資本に振り替える。
役員賞与は,発生した会計期間の( ① )として処理する。

問題1
文中の空欄( ① )から( ④ )にあてはまる適切な用語を示しなさい。

問題2
太字部「貸借対照表の純資産の部」のどこに表示されるか,ひな型を示しなさい。

解答

問題1

① 費用
② 失効
③ 新株予約権
④ 新株

問題2

基本的な考え方

自社株式オプション」とは、自社の株式(財務諸表を報告する企業の株式)を原資産とするコール・オプションをいう。新株予約権はこれに該当する。

権利不行使による失効が生じた場合には、新株予約権として計上した額のうち、当該失効に対応する部分を利益として計上する。

論述問題にチャレンジ!

ストック・オプションとは?

ストック・オプションとは、自社株式オプションのうち、特に企業がその従業員等に、報酬(企業が従業員等から受けた労働や業務執行等のサービスの対価として、従業員等に給付されるものをいう。)として付与するものをいう。

費用認識(株式報酬費用を認識する)の根拠は何か?

従業員等に付与されたストック・オプションを対価として、これと引換えに、企業に追加的にサービスが提供され、企業に帰属することとなったサービスを消費したことに費用認識の根拠がある。企業に帰属し、貸借対照表に計上されている財貨を消費した場合にも費用を認識するのが整合的である。企業に帰属したサービスを貸借対照表に計上しないのは、単にサービスの性質上、貯蔵性がなく取得と同時に消費されてしまうからに過ぎず、その消費は財貨の消費と本質的に何ら異なるところはない。

役員賞与が費用処理されることとなった根拠は何か?

類似性
役員報酬は、確定報酬として支給される場合と業績連動型報酬として支給される場合があるが、職務執行の対価として支給されることにかわりはなく、会計上は、いずれも費用として処理される。役員賞与は、経済的実態としては費用として処理される業績連動型報酬と同様の性格であると考えられるため、費用として処理される。

支給手続
役員賞与と役員報酬は職務執行の対価として支給されるが、職務執行の対価としての性格は、本来、支給手続の相違により影響を受けるものではないと考えられるため、その性格に従い、費用として処理される。

〈執筆者紹介〉
長島 正浩(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師、会計事務所(監査法人)、証券会社勤務を経て、資格予備校、専門学校、短大、大学、大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後、松本大学松商短期大学部准教授を経て、現在に至る。この間30年以上にわたり、簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。

※ 本記事は、会計人コース2020年1月号別冊付録「まいにち1問 ポケット財表理論」を編集部で再構成したものです。

〈バックナンバー〉
第1回:キャッシュ・フロー計算書
第2回:1株当たり当期純利益
第3回:金融商品会計①
第4回:金融商品会計②
第5回:金融商品会計③
第6回:棚卸資産会計①
第7回:棚卸資産会計②
第8回:収益認識会計
第9回:固定資産会計①
第10回:固定資産会計②
第11回:ソフトウェア会計
第12回:研究開発費会計
第13回:繰延資産
第14回:退職給付会計
第15回:資産除去債務
第16回:税効果会計


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