今のチカラでどれだけ解ける? 【税理士試験】過去問チャレンジ ②


第68回(2018年)税理士試験 財務諸表論・第一問

2 企業集団の会計に関する以下の各問に答えなさい。

P社と、P社の100%出資によって前年度末に設立されたS社(100%子会社)からなる小規模な企業集団を想定する。P社による出資額は10,000であり、P社はS社設立の際、個別財務諸表上、S社株式を10,000と評価している。

(1)S社は当年度にP社以外との取引(企業集団外部との取引)を通じて純利益1,000を計上したとする。この純利益を原資として、S社はP社に配当金を400支払った。当年度末においてP社が保有しているS社株式の実質価額は、S社の業績を反映して12,000まで上昇したと見積もられている。このとき、S社ヘの投資に関運してP社が個別財務諸表上に計上する純利益の大きさとして最も適切なものを1つ選び、記号で答えなさい。

ア 0

イ 400

ウ 1,000

エ 1,400

オ 3,400

(2)前問の想定と異なり、S社は当年度に外部から仕入れた商品をP社に販売することで純利益1,000を計上したとする。この純利益を原資として、S社はP社に配当金を400支払った。当年度末においてP社が保有しているS社株式の実質価額は、S社の業績を反映して12,000まで上昇したと見積もられている。このとき、S社ヘの投資に関連してP社が個別財務諸表上に計上する純利益の大きさとして最も適切なものを1つ選び、記号で答えなさい。

ア 0

イ 400

ウ 1,000

エ 1,400

オ 3,400

(3)本来であればP社の個別財務諸表に現れるはずであった損失を、S社の個別財務諸表に移転させる効果を有する取引の例として最も適切なものを1つ選び、記号で答えなさい。

ア P社が当年度に集団外部から1,000で仕入れた商品の時価が1,200まで上昇したにもかかわらず、S社に対しこれを1,000で販売した場合

イ S社が当年度、時価に満たない金額で自社の株式をP社に発行した(有利発行した)場合

ウ P社が当年度に集団外部から1,000で仕入れた商品の時価が800まで下落したにもかかわらず、S社に対しこれを1,200で販売した場合

エ S社の借入金についてP社が当年度に債務保証を行った場合

オ P社が当年度に集団外部から1,000で仕入れ、翌年度S社に売り渡す予定の商品について、時価が600まで下落したことから自社で評価損失を計上した場合

(4)現行の会計制度において、企業集団に連結財務諸表の開示が求められている理由を説明しなさい。


【解答】

(1)イ (2)イ (3)ウ

(4)連結財務諸表の開示は、投資家に適切な投資判断が行える連結財務情報を提供するために行われ、金融商品取引法適用会社は連結財務諸表の開示が法的に求められる。連結財務諸表は、支配従属関係にある2つ以上の企業集団を単一の組織体とみなして親会社が当該企業集団の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を総合的に報告できるように作成される。
企業経営の多角化や国際化により、日本の証券市場で海外投資家が存在する現代の企業において、法的に独立の個別企業の情報ではなく、経済的に一体化した企業集団の連結財務情報に対するニーズが高まった。また、親子会社間取引の相殺消去を行うことで、当該取引による利益操作も防止することができる。

この記事で取り上げた過去問は、『会計人コース』2018年10月号別冊付録「第68回 税理士試験 問題と模範解答」でご執筆頂いた渡邉圭先生(千葉商科大学)の許可を得て、編集部にて再構成しています。

【模範解答作成者のプロフィール】
渡邉圭(千葉商科大学基盤教育機構・専任講師)
千葉商科大学基盤教育機構に属しながら、会計教育研究所「瑞穂会」にて、税理士試験講座(簿記論・財務諸表論)および日商簿記検定1級~3級講座を開講し、多数の税理士試験合格者、日商簿記検定試験合格者を輩出している。


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