【誰かに話したくなる税金喫茶】第1回:家族旅行を経費にしようとしてはいけません


髙橋 創

世間では7月くらいから夏休みムードが高まるようですが、受験生だったり講師をやったりと税理士試験にどっぷり浸かっていたせいか、いまだに「税理士試験が終わったらようやく夏休み」という感覚が抜けません。そこから夏がスタートするとなると海に行ってももうすっかりクラゲ三昧、お盆の時期は旅行もべらぼうに高い。というわけであまり夏は好きではありません。そもそも暑いのイヤだし。

人様の旅行話を聞くのは嫌いではありませんが

とはいえお盆明けなどにお客さんと会うときには「夏休みはいかがお過ごしでした?」などとにこやかに打ち合わせをスタートする芸風の私としては、お客さんファミリーの旅行話を聞いたりしながらうらやましい気分になるのもこの時期の風物詩です。

そんな中ちょっと真顔になるのが「この家族旅行代って経費になりませんかね?」と冗談めかしつつも眼だけは真剣な社長に聞かれるとき。和やかな雰囲気を壊すのも無粋ですので「いやあ、やっぱり家族旅行ですからねぇ」などとやんわり躱すわけですが、さらに「どうにか名目つけたらいけるんじゃないですかね!」と食い下がられたりするとさすがにお説教をしなければなりません。

そんなやりとりはうちだけなのかと思っていましたが、税務署にダメと言われても、国税不服審判所にダメと言われてもくじけず、家族旅行費用を経費にすべく裁判所で戦った強者がいました。

色々と理由をつけてはみましたが

個人事業主である夫は妻に事務作業等を頼んでおり、妻は週6日朝から夕方までしっかり働いていました。その妻を慰労すべく、毎年夏休みには夫婦と子供2人で軽井沢へ旅行に行っていたのですが、その費用が夫の確定申告上必要経費とされていたため、税務調査の際に問題となりました。夫側は「慰労し、その勤労意思を高揚するためにされたものであり、その費用は、事業主である夫が主宰したレクリエーションの費用であり、美術の鑑賞などは今後の業務に活かすためのもの」と主張したのですが、裁判所は「夏休み期間中に観光地を旅行したことは、客観的には生計を一にする夫婦、親子がその良好な家族関係を維持発展すべく企画実行したもの」「旅行先で行つた美術鑑賞等は事業に必要な知識経験を得ることを目的として行なわれたものではない」と一蹴されてしまいました。個人的には「まあそりゃそうだよな……」といった感じです。  

うちも事務所で一緒に、しかも馬車馬のように働いている奥様の慰労をしなければならないわけですが、何もせずに夏は終わってしまいました。繁忙期になる前にどうにかしないと謀反が怖いですね… …。

〈執筆者紹介〉
髙橋 創(たかはし・はじめ)
税理士
税理士講座の所得税法講師、会計事務所勤務を経て、新宿で独立開業。新宿ゴールデン街のバー・無銘喫茶のオーナーでもある。著書に『フリーランスの節税と申告 経費キャラ図鑑』『税務ビギナーのための税法・判例リサーチナビ』(ともに中央経済社)、『図解 いちばん親切な税金の本 19-20年版』(ナツメ社)がある。YouTubeで『二丁目税理士チャンネル』を運営中。

※ 本稿は、『会計人コース』2019年10月号に掲載した記事を編集部で再編成したものです。


記事一覧
第1回:家族旅行を経費にしようとしてはいけません
第2回:絶妙な言い訳なのか、苦しい言い訳なのか
第3回:世の中は「原則」と「特例」だけでできている?
第4回:悩み多きユーチューブ
第5回:有名人の話は妄想がはかどります
第6回:タイミングは大事というお話
第7回:I Love サンゴ礁
第8回:「ごめんなさい」で許される?
第9回:税金もウイルスには勝てないようです
第10回:おしゃれオフィスに引っ越したいけれど
第11回:テレワークの最大の敵は布団
最終回:次は酒場でお会いしましょう


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