【誰かに話したくなる税金喫茶】第6回:タイミングは大事というお話


髙橋 創

私が苦手なものに「明日やろうは馬鹿野郎」という言葉があります。怠惰な私はつい「明日でも良いことであれば明日やれば良いじゃないか!」などと考えたりしてしまいます。それによって痛い目にも遭っているはずなのですが、その検証すらも後回しにしているせいか、改善される兆しがなかなか見えないまま46歳を迎えようとしています。

いつもギリギリですみません

そんな私は物事に取りかかる際にはすでに切羽詰まる状況になっていることが多いわけです。たとえばこの原稿。諸般の事情で今日のうちに送らねばなりません。昨日一昨日にやっておけばこんなにプレッシャーを感じることはなかったはず。そう考えると、日々のストレスの大部分はこの怠惰さから来ているのか。文字にしてみるとちゃんとしないといけない気がしてきますね。

税務の世界においても同じ。しかるべきタイミングでやっておけばOKだったのに、ちょっとずれてしまったから税務署にNOと言われてしまうようなこともあります。

しばらく前に、貸金業を営んでいる会社についてこんな争いがありました。その会社は、貸し付けてから何十年もほぼ弁済がなく、しかもまったく資力がないと判断できる貸付先に対する貸金をあきらめ、ある年に貸倒損失を計上しました。億単位の貸付けをなぜそんな長い期間ほうっておいたのか、そんな条件なら私も借りたい、などなどの想いはさておき、実際に回収できない状態にあるのであれば、貸倒損失をたてるのは会計の考え方としては間違えていません。

タイミング違いで億単位の損

しかしこの取扱いには税務署から物言いがつきました。問題は、「なぜ今このタイミングで?」という点。貸倒れは「貸倒れとなった時点」で計上するルールになっています。任意のタイミングでの計上を許してしまうと「貸し倒れたけど今年は赤字だから利益が出た年に計上しよう」といった感じに利益の調整に使えてしまいます。裁判所でまで争われたこの事件は結局税務署の勝利に終わり、会社は多額の貸し倒れがあるにもかかわらず、タイミングを誤ったがためにまったく経費として計上できないという、とてもつらい結果に終わってしまいました。なかなか恐ろしい話です。

皆さんも、日々「今日やらないと!」と「明日で良いんじゃね?」の狭間で揺れ動いていることと思います。自分を律するのはなかなか大変ですが、新年はなにかをスタートするには良いタイミング。ともに頑張りましょう。私も締切の5日前までには原稿を完成させようと思います!

〈執筆者紹介〉
髙橋 創(たかはし・はじめ)
税理士
税理士講座の所得税法講師、会計事務所勤務を経て、新宿で独立開業。新宿ゴールデン街のバー・無銘喫茶のオーナーでもある。著書に『フリーランスの節税と申告 経費キャラ図鑑』『税務ビギナーのための税法・判例リサーチナビ』(ともに中央経済社)、『図解 いちばん親切な税金の本 19-20年版』(ナツメ社)がある。YouTubeで『二丁目税理士チャンネル』を運営中。

※ 本稿は、『会計人コース』2020年2月号に掲載した記事を編集部で再編成したものです。


記事一覧
第1回:家族旅行を経費にしようとしてはいけません
第2回:絶妙な言い訳なのか、苦しい言い訳なのか
第3回:世の中は「原則」と「特例」だけでできている?
第4回:悩み多きユーチューブ
第5回:有名人の話は妄想がはかどります
第6回:タイミングは大事というお話
第7回:I Love サンゴ礁
第8回:「ごめんなさい」で許される?
第9回:税金もウイルスには勝てないようです
第10回:おしゃれオフィスに引っ越したいけれど
第11回:テレワークの最大の敵は布団
最終回:次は酒場でお会いしましょう


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