【解答】
(問1)
X社の株式交換直前の発行済み株式総数が40,000株であった場合、株式交換後のX社に対する、旧Y社株主の持株比率は20%となる。すなわち、本件株式交換はX社による取得となる。そこで、X社の個別財務諸表においては、X社株価1,000円×交付株数10,000株より、10,000,000円を子会社株式の取得原価として計上し、同額を資本金等として処理する。また、X社の連結財務諸表作成にあたって資本連結を行い、取得原価とY社の資本(資産および負債の時価評価差額を含む)との差額をのれんまたは負ののれん発生益として処理することとなる。(参考:238字)
(問2)
X社の株式交換直前の発行済み株式総数が2,500株であった場合、株式交換後のX社に対する、旧Y社株主の持株比率は80%となる。すなわち、本件株式交換はY社による逆取得となる。そこで、X社の個別財務諸表においては、株式交換直前のY社の適正な帳簿価額による株主資本の額をもって子会社株式を計上し、同額を資本金等として処理する。
他方、X社の連結財務諸表作成においては、Y社を取得企業とした連結修正を行う必要がある。その際、X社の株主が株式交換後のX社に対して有する議決権比率(20%)と同じだけの議決権を保有するのに必要な数のY社株式を、Y社が発行したとみなして交付株式数を算定し、これにY社の株価を乗じて取得原価を計算する。したがって、Y社によるX社の取得原価は、Y社株価5,000円×みなし交付株式数500株より、2,500,000円となる。この取得原価とX社の時価評価後の資本との資本連結を行うことで、のれんまたは負ののれん発生益の金額を求める。ただし、連結財務諸表上の資本金等については、X社の計上額を用いなければならないため、修正に際しては資本剰余金を用いることとなる。(参考:467字)
【解説】
株式交換を題材に、取得と逆取得の判定を問う問題です。出題の趣旨は、取得か逆取得かについての適切な判定ができるかという点にありますので、その後の処理の説明については、取得原価の計算過程が明示されていればよいでしょう。
(問1)
取得か逆取得かは、株式交換後のX社に対して、従来のX社株主と従来のY社の株主とが、どの程度の議決権比率を有することとなるかによって判定されます。X社が株式交換前に40,000株を発行していたのであれば、旧Y社株主の株式交換後のX社に対する議決権比率は、次のように計算されます。
旧Y社株主の議決権比率:10,000株÷(40,000株+10,000株)=0.2
そこで、このケースの株式交換は、X社によるY社の「取得」であると判定されますので、あとはパーチェス法による処理について説明すればよいということになります。
(問2)
X社が株式交換前に2,500株を発行していた場合、旧Y社株主の株式交換後のX社に対する議決権比率は、次のように計算されます。
旧Y社株主の議決権比率:10,000株÷(2,500株+10,000株)=0.8
これによって、このケースの株式交換は、Y社によるX社の「逆取得」であると判定されます。解答にもあるように、逆取得では、X社の個別財務諸表上ではなく、連結財務諸表上でパーチェス法が適用されます。その際、取得原価は「実際の議決権比率と同じになるように、Y社が株式を発行する」という状況を仮定して計算します。株式交換前のY社の発行済み株式総数は2,000株とあり、Y社による株式発行後にこれが全体の80%となればよいわけですから、Y社によるみなし交付株式数は、2,000株÷0.8×0.2=500株と計算できます。
つぶ問は、2018年9月号~2019年8月号までの連載「独学合格プロジェクト 簿記論・財務諸表論」(中村英敏・中央大学准教授/小阪敬志・日本大学准教授)に連動した問題です。つぶ問の出題に関係するバックナンバーはこちらから購入することができます。
【つぶ問】一覧
つぶ問1-1(財務諸表論)
つぶ問1-2(財務諸表論)
つぶ問1-3(財務諸表論)-概念フレームワーク
つぶ問1-4(財務諸表論)-企業会計原則
つぶ問2-1(財務諸表論)-棚卸資産の評価
つぶ問2-2(財務諸表論)―棚卸資産の評価
つぶ問2-3(財務諸表論)―固定資産の減損
つぶ問2-4(財務諸表論)―棚卸資産
つぶ問3-1(財務諸表論)―リース
つぶ問3-2(財務諸表論)―資産除去債務
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