2020年度の税理士試験で、収益認識会計基準は出題される?


この記事は、『会計人コース』2020年3月号の特集「試験への影響は? 今年の改正ポイントはココだ!」を編集部で再構成・編集したものです。

知っておきたい「収益認識会計基準」

経営活動や資金調達のグローバル化に伴い、企業が開示する会計情報の透明性が国内外から強く求められ、わが国の企業会計制度もドラスティックな変革を遂げてきている。

近年、次々に新設・改訂される新会計基準に共通する特徴は、国際的な会計基準と整合性を備えるとともに、企業の経済的実態を可能な限り明らかにし、利益操作の余地を排除することにより企業会計の透明性を促進し、財務諸表の比較可能性を高めることにある。

その一連の流れの中「収益認識に関する会計基準」(以下、収益認識会計基準という。)が2018年3月に公表された。
収益認識は、国際会計基準審議会とアメリカの財務会計基準審議会が共同開発した会計基準で、世界の主要国で会計処理が統一されようとしている。

我が国の収益認識会計基準は、国際財務報告基準(IFRS)の規定を翻訳したものであるが、パブリックコメントにより、国際的な比較可能性を損なわない範囲で、国際基準とは異なる代替的な会計処理(従来の実現主義による収益認識)を追加的に認めると規定された。

本記事では、この会計基準の基本的な内容と、表題のとおり2020年税理士試験への影響、すなわち出題可能性について筆者の考えを説明する。

1 収益認識会計基準の適用時期

収益認識会計基準は、令和3年4月1日(2021年4月1日)以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。ただし、平成30年4月1日(2018年4月1日)以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から本会計基準を適用することができる。

●適用時期による出題可能性
適用時期をもとに出題可能性を考える場合は、過去問が参考になる。
計算問題は、強制適用となる2021年からの出題となると考えられる。出題されても総合問題の一決算整理事項ではなく簿記論の仕訳または収益の測定額を問う問題程度であろう。
理論問題は、収益認識会計基準の用語の穴埋め問題(記号で答える形式)、企業会計原則の実現主義との関係など容易な問題であろう。

2 収益認識会計基準の適用企業の範囲

(1)上場企業など金融商品適用会社
(2)会社法上の大会社など会社法会計監査の対象会社
※会社法上の大会社とは、会社法上の大会社とは、次に掲げる要件のいずれかに該当する株式会社をいう。
①最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上であること。
②最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上であること。

上記以外の中小企業には、適用義務はないが収益認識会計基準の任意適用は可能である。また、親会社を持つ中小企業では、連結決算手続きの関係から任意適用をしなければならない場合も想定できる。

●適用企業の範囲による出題可能性
簿記論の第一問と第二問は、学者試験委員の出題である。2019年に出題された連結会計に見られるように、会社の規模は度外視し会計基準の理解を問う問題が多い。したがって、強制適用となる2021年からは、出題は必然である。2020年は、ここで取り上げる基本的問題の理解で十分であろう。
財務諸表論の理論は前述したとおりであるが、第三問の計算問題は、実務家試験委員の出題であることから「出題はない」と考えてよいだろう。

3 収益認識会計基準の位置付け

収益認識会計基準1項には、「本会計基準は、本会計基準の範囲(第3 項及び第4 項参照)に定める収益に関する会計処理及び開示について定めることを目的とする。なお、本会計基準の範囲に定める収益に関する会計処理については、「企業会計原則」に定めがあるが、本会計基準が優先して適用される。」と規定されている。すなわち、収益認識会計基準は、企業会計原則で規定する実現主義に優先して適用される。
また、収益認識会計基準は、「顧客との契約から生じる収益」に適用される。すなわち、通常の営業取引による収益が適用範囲となる。
したがって、以下の取引は適用範囲(3項の一部)から除外される。

・ 金融商品に関する会計基準の範囲に含まれる金融商品に係る取引
・ リース取引に関する会計基準の範囲に含まれるリース取引
・ その他、固定資産の売却取引

収益認識会計基準は、主たる収益、すなわち売上高の認識と測定に関するものであるから、営業外収益や特別利益に属する損益に影響はない。
また、リース取引に関する会計基準の範囲に含まれるリース取引は、リース契約があるが貸手の収益計上については従来どおりと解釈してよいであろう。


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