公認会計士・税理士 加藤大吾
本連載では、税理士試験の簿記論・財務諸表論において、執筆者の指導経験上、誤答が多かった論点を取り上げます。【問い】に対する【解説】のなかに誤りを含む部分があるので、「ここが間違いじゃないかな?」と指摘してください。電卓をたたかなくても、スキマ時間に間違いさがしは可能です。この連載を解くことで、簿記の勉強はもちろん、実務において取引記録を見ながら誤りを発見するという職業体験もすることができます。ぜひチャレンジしてみてください。
本連載は、会計人コース2020年3月号別冊付録「読んで考えて総復習 間違いだらけの計算問題」を再編集したものです。
難易度 | ★★☆☆☆ |
問題13 貸倒引当金
【問】 次の〔資料Ⅰ〕および〔資料Ⅱ〕に基づき,当期末(X2年3月31日)の貸借対照表の流動資産に計上される貸倒引当金はいくらか,求めなさい。
〔資料Ⅰ〕 決算整理前残高試算表
〔資料Ⅱ〕 決算整理事項
1.決算手続中に,得意先A社が会社更生法を適用したので,A社に対する債権を破産更生債権等に区分する。残高試算表の売掛金には,A社に対する債権500,000円が含まれている。また,保証や担保はなく,1年以内に回収の見込みはない。
2.A社以外の債権はすべて一般債権であり,金銭債権残高に対して貸倒実績率3%に基づき,貸倒引当金を計上する。
【間違いを含む解説】
1.決算整理仕訳
(1) 破産更生債権等
(借) 破産更生債権等 500,000
(貸) 売掛金 500,000
(借) 貸倒引当金繰入額 500,000
(貸) 貸倒引当金 500,000
(2) 一般債権
(借) 貸倒引当金繰入額 70,000
営業外貸倒引当金繰入額 40,000
(貸) 貸倒引当金 110,000
(注1) 貸倒引当金
{500,000円(電子記録債権)+3,000,000円(売掛金)+2,000,000円(長期貸付金)}×3%-55,000円(整理前T/Bの貸倒引当金)=110,000円
(注2) 貸倒引当金繰入額の販売費と営業外費用は,設定対象の金銭債権残高の割合で按分する。
2.B/S流動資産の貸倒引当金(解答の金額)
500,000円(A社に対する貸倒引当金)+3,500,000円(営業債権)×3%=605,000円
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