【「並木流」会計用語辞典】第2回:会計用語の始まりは会計公準?


並木秀明
(千葉経済大学短期大学部教授)

【編集部より】
「会計人コースWeb」でおなじみの並木秀明先生に、会計用語や勘定科目について、多様な視点を踏まえて、ゆるりと解説していただく連載です。

会計用語の始まりは会計公準?

第2回は、企業会計原則の中で使用されている会計用語のウンチクを語ろうと思った。

しかし、会計の前提には企業の存在があり、企業は永遠に存続するという仮定で会計期間がある。この会計期間での営業活動の結果を「円」という単位で財務諸表に公表する。

上記の財務諸表作成の基盤、会計の諸原則が存在するための前提が会計公準である。したがって、すべての会計用語が誕生するとき、そこには会計公準が存在した。

そこで今回は、この会計公準なるものについて私見を書いてみることにしたい。

会計公準とは何者なのか?

会計公準なる会計用語は、多くの会計書籍で説明されているが、法律等で規定されていない。
長く会計学とお付き合いしていると、会計公準なる用語の説明は、時代の変遷とともに、その意味あいの変化を読み取ることができる。

初めて会計書籍(書名の記憶はない)を購入し、第1章で躓いた記憶がある。
なぜなら、会計公準が7つあり「さっぱりわからん状態」に陥ったからである。
時が昭和、平成と移りゆく過程で、会計公準は3つに集約されていった。
そして集約されたと感じた1999年(平成11年)に、税理士試験で出題されたのである。
問は、「会計公準を挙げ、その意味を簡潔に述べよ(要約)」

集約された現在の会計公準

会計公準とは、企業会計を成立させる基本的な前提であり、会計原則の形成基盤をなすものをいう。建造物にたとえれば土台である。土台の上に企業会計原則・会計基準が設定されている。

企業会計を成立させる基本的な前提は、一般に以下の3つに集約されている。

①企業実体の公準(business entity)

この公準は、会計の範囲ないし対象を「企業」に限定することである。

要約すれば企業(業を企てる個人商店・会社)がなければ、会計そのものの存在はないのである。

なぜか、当たり前すぎて、ピンとこないのが本音である。

②継続企業(会計期間)の公準(going concern)

この公準は、期間を人為的に区切って期間計算を行い、会計範囲ないし対象を「一会計期間」に限定することである。

企業は倒産せずに永遠に継続するものと仮定すると、この企業は「儲かっているのか」などを知るためには、期間を区切って計算・報告しなければならない。

この期間を会計期間といい、1年分の利益を損益計算書で、1年後の資産・負債・純資産を貸借対照表に記載して報告することとなる。

この公準名が確立された頃は、企業の会計期間は6か月であった。1974年(昭和49年)の中間配当制度の成立により、1年決算となった。

会計上、「認識」という言葉は、この公準があって誕生したといえる。

③貨幣的評価の公準(monetary valuation)

この公準は、会計の範囲ないし対象を「貨幣数値に換算できるもの」に限定し、貨幣数値をもって統一的に測定・記録・表示する尺度に関することである。

貸借対照表、損益計算書には、(単位:千円)などと記載される。

我が国でいえば「円」単位で測定できないものは認識できないということである。

おまけ~認識と測定について

会計学では、「認識」と「測定」という用語が多くの論点を説明するときに使用される。

ここで、通常使われる「認識」「測定」と、会計学でいう「認識」「測定」との意味の違いを見てみよう。   

国語辞典の「認識」
……物事をはっきり知り、その意義を正しく理解すること。

会計学の「認識」
……企業は永遠に継続すると仮定するため、たとえば分割払いで売った「売上高」は、どの会計期間の売上げにすればよいのかを決定しなければならない。この決定を「認識」といい、「期間帰属」させることと定義する。

国語辞典の「測定」
……計器や装置を用い、ある現象を特徴づける数量を読みとること。

会計学の「測定」
……測定は、金額を決定することである。

<執筆者紹介>
並木 秀明
(なみき・ひであき)
千葉経済大学短期大学部教授
中央大学商学部会計学科卒業。千葉経済大学短期大学部教授。東京リーガルマインド講師。企業研修講師((株)伊勢丹、(株)JTB、経済産業省など)。青山学院大学専門職大学院会計プロフェッション研究科元助手。主な著書に『はじめての会計基準〈第2版〉』『日商簿記3級をゆっくりていねいに学ぶ本』『簿記論の集中講義30』『財務諸表論の集中講義30』(いずれも中央経済社)、『世界一わかりやすい財務諸表の授業』(サンマーク出版) などがある。


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