【論述に強くなる!財表理論講座】第27回:過年度遡及会計


長島正浩
(茨城キリスト教大学経営学部教授)


全31回のプログラムで、税理士試験・財務諸表論に強くなる! 
論点ごとに本試験に類似したミニ問題を用意しました。まずは問題1にチャレンジし、文章全体を何度か読み直したところで問題2(回によっては問題3も)を解いてみましょう。そして、最後に論述問題を解いてください。


まずは問題にチャレンジ!

「会計方針」とは,財務諸表の作成にあたって採用した会計処理の原則及び( ① )をいう。
「表示方法」とは,財務諸表の作成にあたって採用した表示の方法( ② も含む。)をいい,財務諸表の科目分類,( ③ )及び報告様式が含まれる。
「会計上の見積り」とは,資産及び負債や収益及び費用等の額に( ④ )がある場合において,財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて,その( ⑤ )を算出することをいう。
「遡及適用」とは,( ⑥ )を過去の財務諸表に遡って適用していたかのように( ⑦ )することをいう。
「財務諸表の組替え」とは,( ⑧ )を過去の財務諸表に遡って適用していたかのように表示を( ⑨ )することをいう。

問題1
文中の空欄( ① )から( ⑨ )にあてはまる適切な用語を示しなさい。

問題2
企業会計原則注解における「会計方針」との相違を簡潔に述べなさい。

解答

問題1

① 手続
② 注記による開示
③ 科目配列
④ 不確実性
⑤ 合理的な金額
⑥ 新たな会計方針
⑦ 会計処理
⑧ 新たな表示方法
⑨ 変更

問題2

企業会計原則注解の「会計方針」は会計処理の原則及び手続のみならず,表示方法を包括する概念であったが,過年度遡及会計基準では,会計方針と表示方法を別々に定義したため,会計方針には表示方法が含まれていない。

基本的な考え方

会計方針の変更とは,従来採用していた一般に公正妥当と認められた会計方針から他の一般に公正妥当と認められた会計方針に変更することをいう。

表示方法の変更とは,従来採用していた一般に公正妥当と認められた表示方法から他の一般に公正妥当と認められた表示方法に変更することをいう。

会計上の見積りの変更とは,新たに入手可能となった情報に基づいて,過去に財務諸表を作成する際に行った会計上の見積りを変更することをいう。

論述問題にチャレンジ!

会計上の変更とは?

会計上の変更とは,会計方針の変更,表示方法の変更及び会計上の見積りの変更をいう。過去の財務諸表における誤謬の訂正は,会計上の変更には該当しない。

誤謬とは何か?

誤謬とは,原因となる行為が意図的であるか否かにかかわらず,財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったことによる,又はこれを誤用したことによる誤りをいう。

過去の財務諸表における誤謬が発見された場合は?

表示期間より前の期間に関する修正再表示による累積的影響額は,表示する財務諸表のうち,最も古い期間の期首の資産,負債及び純資産の額に反映し,表示する過去の各期間の財務諸表には,当該各期間の影響額を反映する。

〈執筆者紹介〉
長島 正浩(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師、会計事務所(監査法人)、証券会社勤務を経て、資格予備校、専門学校、短大、大学、大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後、松本大学松商短期大学部准教授を経て、現在に至る。この間30年以上にわたり、簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。

※ 本記事は、会計人コース2020年1月号別冊付録「まいにち1問 ポケット財表理論」を編集部で再構成したものです。

〈バックナンバー〉
第1回:キャッシュ・フロー計算書
第2回:1株当たり当期純利益
第3回:金融商品会計①
第4回:金融商品会計②
第5回:金融商品会計③
第6回:棚卸資産会計①
第7回:棚卸資産会計②
第8回:収益認識会計
第9回:固定資産会計①
第10回:固定資産会計②
第11回:ソフトウェア会計
第12回:研究開発費会計
第13回:繰延資産
第14回:退職給付会計
第15回:資産除去債務
第16回:税効果会計
第17回:ストック・オプション会計
第18回:自己株式
第19回:準備金の減少
第20回:純資産の部の表示
第21回:株主資本等変動計算書
第22回:企業結合会計①
第23回:企業結合会計②
第24回:事業分離会計
第25回:連結会計
第26回:外貨換算会計


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