
平林 黎(TAC公認会計士講座講師)
【編集部より】
読書の秋、スポーツの秋など、何かに取り組むのによい季節になりましたね。読者の方の中には、今年は「勉強の秋」として、資格・検定への挑戦を考えている人もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、これから勉強を始める方に向けて、学習初期にぶつかりやすい壁とその乗り越え方をご紹介いただきます。公認会計士受験生だけでなく、税理士や簿記検定の受験生にも参考になる内容です。学習を軌道に乗せるために、ぜひ参考にしてください!
前編では、学生・専念生が学習初期に直面しやすい「時間はあるのに継続できない」というお悩みと、やる気に頼らない環境・仕組み作りやコンディションの整え方についてご紹介しました。今回は、「社会人編」です。

<社会人受験生からよく伺うお悩み>
Q 睡眠を削って、体調を崩しました。
Q 残業や急な業務で、学習計画どおりに進められません。
Q 会計士受験を職場の同僚に伝えていないため、外出先で教材を広げられません。
Q スキマ時間がうまく活用できていないと感じます。
Q 何度も講義を見直していて、計算演習ができていません。
社会人受験生の場合には、そもそもの可処分時間が限られる中で、いかに効果的に学力を伸ばすかが課題となります。
社会人受験生こそ、財務計算が最優先
社会人の場合、学生や専念生とは異なり、直前期であっても勉強時間を増やすことが困難です。
直前期1~2ヵ月は毎日全科目に触れるのが理想ですが、平日3~4時間ほどの場合、財務計算・管理計算の演習に割ける時間は1日合計30~40分程度になります。いかに「現状維持」だけで手一杯になるか、想像できると思います。
働きながら合格するには、単に時間を確保するだけでなく、早期に計算科目、特に短答論文ともに配点が大きい財務計算を得意にし、短時間で維持できる状態にすることが必要です。
昔から「財務会計論を制する者は、公認会計士試験を制する」と言われますが、社会人受験生こそ意識すべき言葉です。一度身につけた計算力は、短答・論文直前期にメンタル/成績面の双方で必ず支えになります。
限られた時間で戦う
フルタイム勤務の場合、週30時間弱確保が一つの目安です。数学が得意な場合には一部の分野の演習時間(管理会計論のCVP分析など)を圧縮できますが、やはり財務会計論計算や原価計算分野の演習は積む必要があります。
ただし、時間を捻出するために睡眠を削ると、一時的に勉強時間は増えても、集中力の低下やその後の長期的な体調不良に繋がりかねません。寝不足だと、勉強の方向性・時間配分などを間違えたまま長期間進めてしまい、あとで修正が難しくなるおそれがあります。
下記を意識して、まずは計算を優先することと、毎日数分でも継続できる環境・仕組み作りなどを意識しましょう。計画が大きく崩れたり、ブランクが空いてしまった際には、前回の記事もご参照ください。
<仕事と両立するための工夫>
・睡眠は削らない
・毎日1分でも勉強を継続(テキスト目次や、ミスまとめでも)
・突発的な仕事が入る前提で、週の半ばや後半に予備日
・「1週間の中で、ある程度帳尻が合えばOK」と捉える
・既習分野を長く放置しない/各単元からかいつまんで復習
・講義当日よりも、翌日の復習を重視
・曜日や場所によって、取り組み方・科目をある程度決める
(例)
平日:机を使える時間は、計算演習・理論科目はスキマ時間
土日:いろんな科目・分野に取り組む、1時間以上のテスト
★何に取り組むか悩む時間やストレスを減らす
スキマ時間の活用
会計士受験を職場で明かせずにいる多くの社会人にとっては、出先で教材を広げにくいため、おそらく一番身近な学習ツールはスマートフォンと考えられます。学生や専念生の場合はロッカーに入れるなど物理的な距離を取るように工夫することが多いですが、社会人はスマートフォンを味方につける必要があります。
「1分あればこれができるな、3分なら…」と、あらかじめ時間と場所に応じた勉強方法のラインナップを持っておきましょう。例えば以下が考えられます。
<スキマ時間とスマートフォンの活用例>
・スキマ時間・場所の棚卸し
例 電車待ち5分、歯磨き/壁を見ながら2〜3分、など
・スキマ時間に取り組む内容を、週単位である程度決めて試す
例 朝は前日の講義の科目
・テキスト目次や覚えたい重要ページを写真保存
➤科目別のアルバムを作る
・ミスや気づきを、スマホに単元ごと一元化
私の場合
修了考査は講師として働きながらの受験だったため、校舎移動時などスキマ時間で下記のように進めていました。
自分だけのLINEグループを作り、「トーク」をピン留め(探す時間をできるだけゼロに)
➤勉強日誌や科目別の覚え書き、苦手論点リスト、覚えたいページの写真、気になること、できればやりたいこと、質問したいことなど、頭によぎったことは自分宛にLINE送信(勉強がゼロにならない)
タブレットやPDF教材の起動よりも早いのと、スキマ時間で少しでも触れておくことで、いざ机が使えるタイミングで計算演習にすぐ着手できるメリットを感じました。
理解と反復の双方を意識
社会人経験がある方は、長文の読解力や情報を階層化して理解する力、問に対して端的に答える説明能力が業務を通じて高まっていることが多く、いったん構造化して納得した内容は忘れにくい傾向があります。直前でも勉強時間を増やせず最後の詰め込みがしにくい社会人にとって、具体例をイメージして丸暗記の量を減らすことは重要です。
ただし、学習を始めて1年弱は、理解の深さよりも、計算演習の反復回数の影響が大きいです。具体例をイメージした上で、「取引を見た瞬間、反射的に仕訳ができる・下書きが書ける」まで体に叩き込む必要があります。講義後に問題演習に取り組んだら、その後も1ヵ月半ほど以内に3回以上「同じ単元に」取り組んでみてください。復習スパンが長くなり過ぎないように、毎回全ての問題をベタ解きするのではなく、単元ごとに問題をかいつまんで解きましょう。3~4回目から、ようやく論点ごとに気をつけるポイントが徐々に定着してきます。
あとで伏線回収が待っていることも
公認会計士試験では、学習が進むにつれて、以前取り組んだ分野の理解が深まることがよくあります(特に、連結会計)。理論科目も最初から全てを深掘りして理解しきろうとせず、重要な概念を押さえて先に進むことで、目下の計算演習の時間も確保できます。最近だとAIで気になった都度理屈など調べる方もいらっしゃると思いますが、立ち止まり過ぎないように注意しましょう。机を使えるなら、問題演習が優先です。
計算問題がうまく解けず何度も講義を見直してしまう方は、こちらの記事も参考にしてみてください。講義の受け直しは最終手段です。
さいごに
やる気に頼らず自然と取り組めるよう「自分を仕向ける」環境・仕組み作りや時間配分/コンディション面の見直しは、合格後にもきっと役立つはずです。今回の連載が、少しでも受験生の皆さんの参考になれば嬉しいです。
体調には気をつけて、学習を進めてくださいね。応援しています!
【プロフィール】
平林 黎(ひらばやし・れい)
TAC公認会計士講座講師(フォローチーム主任、学習相談/学習法セミナー/受講生向け公式LINE/財務会計論-理論質問対応)
1986年東京都多摩市生まれ。国際基督教大学教養学部国際関係学科卒業。体調を崩し、公認会計士試験を一度撤退。
2014年独学で保育士資格取得後、公認会計士を再度志す。
2016年論文式試験に合格し、現職。
2020年以降、オンラインでの相談対応・セミナーを開始。
下記SNSで主に受験生に向けた情報発信を行っている。
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