💐春休みに読みたい! 諸角崇順先生(かえるの簿記論・財務諸表論講師)がオススメする課題図書📚


【編集部より】
新年度スタート目前! 「スキルアップがしたい!」、「キャリアやプライベートで新しい発見がしたい!」と考えている人も多いのではないでしょうか。そこで、本企画では、実務家・講師などの読書愛好家から、会計人コースWeb読者の皆さんにオススメする「春休みの課題図書」をご紹介いただきました(1日お一人の記事を順不同で掲載します・不定期)。
受験勉強はもちろん、仕事や人生において新しい気づきを与えてくれる書籍がたくさんラインナップされています。ぜひこの機会にお手にとってみてください!
今回の記事では、諸角崇順先生(かえるの簿記論・財務諸表論講師)に課題図書をお薦めいただきました!

オススメ書籍①『塩狩峠』(三浦綾子、新潮社)

三浦綾子『塩狩峠』(新潮文庫刊)

私は小学4年生で公文式教室に通い始めました。小学5年生の頃には、高校3年生までの数学がすべて解けるようになっていて、周りの大人からは「神童」と呼ばれ、「灘中を受験するか?」とも言われたことがありました。しかし、他の科目は特に秀でたものがなかったので、そのまま地域の公立中学に進みました。

「おまえらより頭がいいんだぞ」

きっと、私は言葉にしなくてもそういう雰囲気を出してしまっていたのでしょう。中学校に上がると同時に、いじめのターゲットにされ、ここには書けないほどのひどい仕打ちを受けました。

地獄のような中学生活も卒業を迎え、当時は何も考える余裕がなかったのでしょう。なんの考えもなく地元の公立高校に進みました。高校生になりいじめはなくなりましたが、生きている意味はわからないままでした。

何かの雑誌の書評欄にオススメの本が3冊紹介されていました。なぜかわかりませんがそのうちの1冊、三浦綾子さんの『塩狩峠』をお小遣いで買って読んでみることにしました。

高校生という多感な時期に出会えてよかったと思える本です。この本の影響で、私はいつでも3秒間の猶予が与えられるのであれば誰かのために命を捧げることができる覚悟を持つことができました。

「今まで育ててくれてありがとう」と心の中で両親に伝える3秒間さえもらえれば、いつでも誰かのためにこの命を捧げることができます。

命を「捨てる」のではなく、命を「捧げる」。誰かのためにこの命を使おう。だから、あのとき生かされたのだな、と思わせてくれた1冊です。

学生、特に高校生までは、学校という狭い世界がすべてだと思います。その唯一と言っていい世界で生きる希望がなくなったら、死を選択しようとするかもしれません。

ただ、絶対に命を「捨て」ないでほしい。
将来、あなたにも自分の命を「捧げ」て守りたい人が絶対に現れるから。

オススメ書籍②『知の技法』(小林康夫・船曳建夫 編、東京大学出版会) 

小林康夫・船曳建夫編『知の技法』(東京大学出版会) 

大学生になり、キャンパスの購買でふと目にとまった本。人を納得させる文章の書き方、資料の調べ方、論文の書き方など、卒業論文を控えた大学生や修士論文を控えた大学院生にぜひ読んでもらいたい1冊です。

「高校生までの教育はあくまでも、知る者が知らない者に知識とその獲得の方法を与えるという、関係の不均衡と能力の落差が前提でした。しかし大学での教育は、教師と学生が同等に立つことを目標とし、同時に最初からそれが実現されているとの仮説の枠組みで「教育」を行う~」

この一文を見たことで、大学生という学生ですら、自分から課題を見つけて能動的に動かないといけないのだから、大学を卒業した後の社会人ならなおさら、と気づかせてくれました。

「仕事を教えてもらえない」

それはきっと、あなたが社会人としてのスタートラインにも立てていないから。
大学生のときに本当の意味での「知の基礎学習」をしなかったから。

大学生のときに、このことを教えてくれた『知の技法』には本当に感謝しています。

人生でおそらく勉強に専念できる最後の時間。社会へ出るまでのモラトリアム。頭が破裂するぐらい勉強してほしいです。

オススメ書籍③『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健、ダイヤモンド社)

岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)

もしかしたら失敗してしまうかもしれない。こわい。失敗はイヤだ。
だから、人は現状にとどまってしまう。

変わろうとする勇気。

それは変わろうとする‟あなたの味方”を浮かび上がらせるフィルター。

変わろうとするあなたをバカにする人は、今まで変わりたいと思ったけど一歩踏み出す勇気のなかった人。
だから、あなたに変わってほしくないから、変わろうとするあなたをバカにするのです。

変わろうとするあなたを応援してくれる人。
それは、過去に変わろうとする勇気を持って、失敗を重ねても恥をかいても、自分を変える勇気を持ち続け、自分を変えた人。

勇気を出して変わってみよう。
あなたが変わることであなたを嫌いになる人も出てくるでしょう。
でも、その代わり、変わろうとするあなたを、過去に勇気を出して自分を変えた人は応援してくれるでしょう。

社会に出れば模範解答は存在しません。今日の正解は明日の不正解かもしれません。
常に変化する時の流れの中で、あなたは変わらなければいけないのです。

変わることで、多くの人に嫌われても、大切な人にさえ愛されていればいいと思います。

 「春」

新しいことが始まる不安と期待。

あなたの不安が少しでも少なくなりますように。
あなたの期待が少しでもふくらみますように。

ちなみに、会計に関するオススメ本ならば…

私の受験生活を支えてくれた『基本会計学』(関西学院大学会計学研究室編、中央経済社)。ただし、残念ながら今は絶版です。

当時(30年前)有名だった教授の書かれた基本書ではなく、私はこれを手に取りました。

なぜか?
それは、当時の私のレベルに最も合っていたから。

「え! あの教授の本を使っているの!!」とかチヤホヤされるために、自分のレベルを超えた基本書を使って「会計って難しいなあ」なんてことにならないように。
あなたにとって、一番わかりやすい本があなたのベストです。

「会計士試験に受かった先輩からオススメされたから」

そんな理由で基本書を選ぶ受験生がいます。受験勉強はRPG(ロールプレイングゲーム)みたいなものです。自分のレベルにあった基本書を使わないと、本来の効果は得られません。

Lv.1で「王者の剣」を使いこなせますか?
基本書を選ぶときは、書店で何冊も見比べて、今のあなたのレベルにあったものを選びましょう。

井上達男・山地範明『エッセンシャル財務会計(第4版)』(中央経済社)

この『エッセンシャル財務会計』は、基本書の中でも「基礎」レベルに属するものだと思います。しかし、講師歴30年の私が講義を組み立てる上でも充分に戦力になっています。

だからといって、受験生のみなさん全員に、この『エッセンシャル財務会計』を勧めるわけではありません。
みなさんにはみなさんに合った基本書があります。

何が言いたいのかというと、「○○さんが勧めてくれた」とか「有名な教授が書いているから」とか、そういった理由で選ぶのはやめよう、ということです。

受験生のみなさんが最高のパートナーに出会えますように。

<執筆者紹介>
諸角 崇順
(もろずみ・たかのぶ)
大学3年生の9月から税理士試験の学習を始め、23歳で大手資格学校にて財務諸表論の講師として教壇に立つ。その後、法人税法の講師も兼任。大手資格学校に17年間勤めた後、関西から福岡県へ。さらに、佐賀県唐津市に移住してセミリタイア生活をしていたが、さまざまなご縁に恵まれ、2020年から税理士試験の教育現場に復帰。現在は、質問・採点・添削も基本的に24時間以内の対応を心がける資格学校を個人で運営している。
ホームページ:「かえるの簿記論・財務諸表論」


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