TAC人気講師・宮内先生×平林先生のアドバイス!「企業法」論文式対策のコツは?~法律科目の暗記法(後編)


【編集部より】
来年の論文式受験に向けた学習を意識する人やリスタートを切る人が増えるこの時期。論文式ならではの対策をどう進めるべきか、どんな壁が待ち受けているのか気になるところです。
そこで本企画では、TAC企業法担当の宮内先生と成績・学習相談担当の平林先生による対談をお届けします。受験生からよく相談されるリアルな悩みを取り上げ、学習のヒントを探ります!

企業法は財務理論の暗記とどう違う?

平林 前編では、「受験生が覚えやすいように、テキストを作成する際には条文の趣旨を覚えやすいように一言でまとめている」と仰っていましたが、企業法の論証例の場合、趣旨はいろいろな表現でも内容が合っていれば問題なく点数が取れる、という認識で合っていますか。

宮内 はい、法律の場合は学派によっても言い方が違うので、その認識で構いません。

僕がテキストを作成する時は、基本的に判例があれば判例の表現を使うようにしています。ただ、最高裁判例でもあまりキーワードを寄せ集めていない表現もあって、そういう時には有名な学者が非常に短い言葉でパシッと表現されている時があり、それが広く使用されている場合は採用しています。

たとえば、取締役の報酬規制の趣旨は判例が「お手盛り防止」なんて表現しているのですが、わかりやすいですよね。

平林 そうですね(笑)。最初にテキストで見た時、「この表現、答案に書いていいのかな」と思いました。

宮内 僕も言われたことがありますよ。「これって宮内先生が考えたんですか?」って。「違う、違う。この世界では皆が言ってるんだ」と。

法律の世界では、誰かが非常にわかりやすい言葉で表現すると、広まって皆がそれを使い出すこともあります。僕は、多数派の学派が使っていて、どの試験委員に採点されても嫌がられないような表現で、できるだけ覚えやすい表現を選んでいます。

実は、条文の趣旨も、解釈にいろいろな方向性があって、別の趣旨を唱える人もいるので、内容的に合っていたら試験委員は丸をつけるとよく聞きます。

平林 このあたりは、財務理論や監査論と違いますね。会計基準の場合、「こういう経緯・趣旨でこの規定を作りました」という文章が明文で公表されていることが多いです。できるだけ基準上の文言を尊重したほうが高得点に結びつくので、「重要な典型論点の理屈はできればキーワードを中心に覚えてください」と伝えています。

企業法の場合は、多少自分の言葉でも点につながるというところが特徴的なので、最初の取っ掛かりとしては、やはり暗記の精度・ハードルをあまり上げ過ぎないほうがよいかもしれませんね。

宮内 思想信条の自由がちゃんと守られている世界ですから、よほどおかしくない結論なら大丈夫。忘れたら無理に思い出そうとせず、その場で考えて何か書いたほうがよいですよ。

平林 はじめの段階で深く納得してイメージがついているかで、いざという時に何かしら書ける力につながるのかもしれませんね。

宮内 だからこそ、テキスト精読が大事ですよね。

暗記の相棒はクマのぬいぐるみ⁉︎

平林 論文式対策では暗記や自力で考えて説明する場面が多く、正誤判定の短答式対策とはアウトプット方法がガラっと変わるため、しんどいと感じる受験生が多いです。

宮内先生は、司法試験受験時代どのような勉強をされていましたか。

宮内 僕が司法試験を初めて受けたのは、少し始めるのが遅くて大学4年生のときでした。就職する気もなくて、留年して1年目の時に短答式に受かって、留年2年目で最終合格することができました。

司法試験では、論証を相当、暗記するのですが、いろいろ工夫しましたよ。

「誰かに向かって話したほうがいい」とはよく言われますが、それをいろいろ試して、クマのぬいぐるみに向かって語りかけていたこともあります。「会社法369条2項の趣旨は知っている? 決議の公正を確保するっていって、これはどういう意味かっていうと…わかる?」といった調子で、ブツブツ声に出していました。

平林 機械的に話すのではなくて、やりとりしているような気持ちでぬいぐるみに向き合っていたのですね! 暗記の際文字に書き起こすのは時間が掛かりすぎるので、声に出したり頭の中で話す・エア授業するのをおすすめしているのですが、ぬいぐるみに話すというのは目からうろこでした。

宮内 そうそう(笑)。声に出すのは効果的なんですよ。だから、僕は自習室で勉強できなくて、自分の部屋でブツブツ言いながら勉強していました。

でも、そのうち喉が痛くなってくるので、「キオークマン(音声フィードバックヘッドセット)」というツールも導入するなどいろいろ試しましたよ。

平林 そんな便利グッズがあったんですね。私も耳を塞いで声を出すと頭に響いて残りやすいように感じていたので、散歩の時は片耳だけイヤホンをして、ぶつぶつ言っていました。キオークマン、探してみます。

体力作りが成績アップにつながる⁉︎

平林 他に実践していた勉強習慣などはありますか。

宮内 毎晩寝る前には必ず、翌朝勉強するものを机の上に用意していました。ちゃんと鉛筆もセットしておいて、朝起きたらすぐ椅子に座って、1時間は勉強するようにしていましたね。

スイッチが入るように、機械的に解ける短答式の問題をよく広げていました。

平林 朝のスイッチ、重要ですね! 起きてから何をやろうか考えていると、すぐ過ぎてしまいますから・・・。会計士受験生だと、朝一に軽く始められるような計算問題を広げておくとよいですね。

宮内 この習慣を真面目に始めてから、「まず1時間やったぞ」と、自分に自信を持てるようになりました。

つくづく思ったのは、20歳を超えてからの勉強は本当に難しいということです。大学受験まではあんなに勉強に取り組めたのに、一度やめるとできなくなってしまって、人生が決まるというのに頑張れないんですよね。

「頑張るためにどうするか」は「工夫」だとよく言っていて、自分でイベントを作らないとなかなか続きません。だから、朝起きたら1時間勉強と決めたり、タイムタイマーのようなツールを使ったりして、勉強を積み重ねる工夫が大事なのだろうと思います。

平林 そうですね、モチベーションを「高めよう」と考えるより、やる気がなくてもできるようにする工夫を取り入れるのが大事ですね。「常に工夫をする人」「淡々と取り組む人」が強いなと感じます。

宮内 それと、「最後は体が大事」とつくづく思いますね。僕は受験生時代、1日に5~6回はラジオ体操をやって、最後の1年は曜日と時間を決めてプールにも通っていました。

真面目にコツコツと決めたことをやるようにしていましたよ。

平林 1日5・6回ラジオ体操とは、結構ハードですね・・・! 体を動かすのは確かによいですよね。特に、論文式リスタート生は真新しいインプットも少ないので勉強がマンネリ化しがちですが、不思議と、体を鍛え始めるとメンタルが安定して、集中力・成績も上がるケースを頻繁に見かけます。特に論文式は3日間と長丁場の試験なので、体力づくりはオススメですね。

中でも企業法は、問題文を読む時に視野を広くしておく必要もあるので、メンタルや体を整えるのも受験に必要なことと感じます。

本日は論文のコツだけでなく先生の受験生時代のお話も伺って、受験生の励みになったことと思います。ありがとうございました!

(おわり)

【対談者のプロフィール】

宮内 康浩(みやうち・やすひろ)

1962年、徳島県南部の小さな漁村で出生。大学入学で上京し、1986年、司法試験合格。翌1987年に一橋大学法学部を卒業した後、2年間の司法修習を終了。1989年4月に弁護士登録をして現在に至る。20年以上前から弁護士業務を休業し、資格の学校TACで講師を務める(現在は公認会計士講座企業法・民法を担当)。犬(クララ)と猫(レモン)を飼育中。

平林 黎(ひらばやし・れい)
平林
TAC会計士講座講師(財務会計論-理論、個別成績/学習方法相談、質問対応、オンラインセミナー担当)。
1986年生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。体調を崩し、会計士受験を一度撤退。2014年独学で保育士資格取得後、会計士を再度志す。2016年論文式試験に合格し、現職。2020年以降、オンラインでの相談対応・セミナーを開始。下記SNSで主に受験生・合格者に向けた情報発信を行っている。
・Xアカウント(@hirabayashi_tac
・Instagram(hirabayashi_tac

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