長島 正浩(茨城キリスト教大学教授)
*税理士、会計士論文式試験直前の総復習として、本連載の復習問題を再掲載します。
Q1(空欄補充)
「会計方針」とは,財務諸表の作成にあたって採用した会計処理の原則及び( ① )をいう。
「表示方法」とは,財務諸表の作成にあたって採用した表示の方法( ( ② )も含む。)をいい,財務諸表の科目分類,( ③ )及び報告様式が含まれる。
「会計上の見積り」とは,資産及び負債や収益及び費用等の額に( ④ )がある場合において,財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて,その( ⑤ )を算出することをいう。
A
① 手続
② 注記による開示
③ 科目配列
④ 不確実性
⑤ 合理的な金額
*補足
・会計方針の変更とは,従来採用していた一般に公正妥当と認められた会計方針から他の一般に公正妥当と認められた会計方針に変更することをいう。
・表示方法の変更とは,従来採用していた一般に公正妥当と認められた表示方法から他の一般に公正妥当と認められた表示方法に変更することをいう。
・会計上の見積りの変更とは,新たに入手可能となった情報に基づいて,過去に財務諸表を作成する際に行った会計上の見積りを変更することをいう。
*会計方針会計基準4項
『企業会計原則注解(注1-2)の会計方針の定義に含まれていた表示方法を抜き出し、別々に定義することとなった!』
Q2(空欄補充)
「遡及適用」とは,( ① )を過去の財務諸表に遡って適用していたかのように( ② )することをいう。
「財務諸表の組替え」とは,( ③ )を過去の財務諸表に遡って適用していたかのように表示を( ④ )することをいう。
A
① 新たな会計方針
② 会計処理
③ 新たな表示方法
④ 変更
*会計方針会計基準4項
『図表12-16で会計処理することと表示することの違いを明らかにしておこう!』(桜井23版,320頁〔図表12-16〕)
Q3 企業会計原則注解における「会計方針」と会計方針会計基準における「会計方針」の相違を簡潔に述べなさい。
A
企業会計原則注解の「会計方針」は会計処理の原則及び手続のみならず,表示方法を包括する概念であったが,会計方針会計基準では,会計方針と表示方法を別々に定義したため,会計方針には表示方法が含まれていない。
*会計方針会計基準36項,37項
『企業会計原則注解では「表示方法⊂会計方針」で,会計方針会計基準では「表示方法⊄会計方針」ということでしょう!』
Q4 会計上の変更とは?
A
会計上の変更とは,会計方針の変更,表示方法の変更及び会計上の見積りの変更をいう。過去の財務諸表における誤謬の訂正は,会計上の変更には該当しない。
*会計方針会計基準4項(4)
『過去の利益計算と関連した事象は,会計上の変更と誤謬の訂正に大別される!』(桜井23版,320頁)
Q5 誤謬とは何か?
A
誤謬とは,原因となる行為が意図的であるか否かにかかわらず,財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったことによる,又はこれを誤用したことによる誤りをいう。
*会計方針会計基準4項(8)
『具体的には ① 財務諸表の基礎となるデータの収集又は処理上の誤り,② 事実の見落としや誤解から生じる会計上の見積りの誤り,③ 会計方針の適用の誤り又は表示方法の誤り,などである!』
Q6 過去の財務諸表における誤謬が発見された場合は?
A
表示期間より前の期間に関する修正再表示による累積的影響額は,表示する財務諸表のうち,最も古い期間の期首の資産,負債及び純資産の額に反映し,表示する過去の各期間の財務諸表には,当該各期間の影響額を反映する。
*会計方針会計基準4項(11),21項
『過去の財務諸表における誤謬が発見された場合は,過去のその財務諸表を訂正する。これを修正再表示という!』(桜井23版,321頁)
◎復習しましょう!
1.CF計算書
2.一株当たり当期純利益
3₋1.金融商品会計①‐⑦
3₋2.金融商品会計⑧‐⑭
3‐3.金融商品会計⑮‐⑳
4-1.棚卸資産会計①‐⑥
4-2. 棚卸資産会計⑦‐⑫
5‐1.収益認識会計①‐⑦
5₋2.収益認識会計⑧-⑫
6.リース会計①‐⑥
7.固定資産の減損①‐⑩
8.ソフトウェア会計①‐⑥
9.研究開発費会計①‐⑦
10.繰延資産①‐⑦
11.退職給付会計①‐⑥
12.資産除去債務①‐⑥
13.税効果会計①‐⑥
14.ストック・オプション会計と役員賞与(報酬)会計①‐⑧
15.自己株式①‐⑦
16.準備金の減少①‐⑥
17.純資産の部の表示①‐⑦
18.株主資本等変動計算書①‐⑤
19-1.企業結合会計①‐⑦
19-2.企業結合会計⑧‐⑫
20.事業分離会計①‐⑤
21.連結会計①‐⑥
22.外貨換算会計①‐⑤
〈執筆者紹介〉
長島 正浩(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師,会計事務所(監査法人),証券会社勤務を経て,専門学校,短大,大学,大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後,松本大学松商短期大学部准教授を経て,現在に至る。この間35年以上にわたり,簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。
*本連載は,『会計人コース』2020年1月号付録『まいにち1問ポケット財表理論』に加筆修正したものです。