【水曜連載】消費税! 今更聞けない「インボイス制度」ってなに? #9 電子インボイス

インボイス

2023(令和5)年10月1日から、消費税の適格請求書等保存方式、いわゆる「インボイス制度」が導入されます。
受験生の皆さんも、職場などで話題にすることが増えてきたのではないでしょうか。
でも、「今さら職場の先輩に聞くのはちょっと気が引けるな…」という人もいるかもしれません。
そこで、このコラムでは、税理士の入江日和先生に、漫画やイラストをまじえてインボイス制度のことをやさしく解説していただきます(毎週水曜日掲載予定・全10回)

税理士 入江日和

電子インボイスとは

「電子インボイス」とは「適格請求書などを電子データにしたもの」です。
たとえば、メールやクラウド上でPDFファイルにした適格請求書(インボイス)をやりとりすると、それは電子インボイスとなります。

ただ、それぞれ企業が独自の形式で電子データを作成するよりも、統一して運用したほうが効率的ですよね。
そこで、グローバルな標準仕様である「Peppol(ペポル);Pan European Public Procurement Online」をベースにインボイスの標準仕様策定に向けた取り組みが進められています。
形式が統一されれば国際的な取引も楽ですね。

電子帳簿保存法

まずは喫緊の課題として、電子帳簿保存法における適格請求書(インボイス)の取り扱いについて確認しましょう。
といっても、特に心配することはありません。
電子インボイスの記載内容は、紙媒体と全く同じです。

電子インボイスを提供又は受領する場合に、以下のいずれかの措置が求められています。

  1. 提供する前にタイムスタンプを付し、その電磁的記録を提供すること
  2. 提供した後すぐ、又は規定に定めた業務処理に係る通常期間経過後、速やかにタイムスタンプを付すこと
  3. 電子計算機処理システム(訂正又は削除の確認ができる or 訂正又は削除ができない)を使用して適格請求書に係る電磁的記録の提供及びその電磁的記録を保存すること
  4. 訂正及び削除の防止に関する事務処理規程を定め、当該規程に沿った運用を行い、当該電磁的記録の保存に併せて当該規程の備付けを行うこと

上記は、いずれにせよどこかのタイミングでタイムスタンプを付与して保存するということで、手間としては同じくらいと思われます。
タイムスタンプはファイルの改ざん防止に使われる仕組みですね。
のシステム導入が一番手っ取り早く、欧米でもこちらが主流になっているらしいです。
は簡単にいってしまえば、ルールをしっかり決めて守ることで、データの改ざんを防ごうということです。
国税庁のホームページに事務処理規定のひな型があるので、それを参考にするとよいでしょう。

電子データについては、基本的に電子データのまま保存しなければならないとされています。
しかし、実は消費税に関してのみ紙にアウトプットして保存することが認められています。
これは消費税が大規模事業者に限らず、広範に影響するため、少し緩くしているのだろうと思われます。

Peppolについて

「標準化」と言っても、何が嬉しいのかピンとこない人も多いと思います。
これをわかりやすくいえば、「仕訳から仕入税額控除までの業務を自動化できる」ようになるかもしれない、ということです。
たとえば、電子データといってもPDFで受け取った場合、それをシステムに自動取込するのは容易ではありません。
もし規格統一された仕様のデータを受け取ることができれば、各社のシステムが対応することで、取込が可能となります。

さらに、電子インボイスには電子署名の導入が検討されているため、改ざんの防止措置が取れます。
また、Peppolを導入している国(オーストラリア、シンガポール等30カ国以上)とのやり取りが可能となり、諸外国とのビジネスを後押しすることにもなります。

まとめ

まだ先の話でどうなるかはわかりませんが、Peppolに基づく電子インボイスの導入が進めば、大幅な業務効率化、保管の簡易化が見込めるでしょう。
期待したいところです。

【執筆者紹介】
入江 日和
(税理士)
1988年奈良県生まれ。普通高校中退後、通信制高校を卒業。地元の食品スーパーにてフリーターを数年した後、独学で簿記を学び、税理士試験簿記論・財務諸表論まで独学で合格。その後、税法科目に1年1科目ずつ合格し、第67回税理士試験にて官報合格。2018年7月税理士登録。個人税理士事務所にて4年勤務した後、現在は、都内税理士法人に勤務。
主な著書に、『フリーター、税理士になる! 簿・財独学&税法一発合格法』(中央経済社)がある。

バックナンバー一覧
【水曜連載】消費税! 今更聞けない「インボイス制度」ってなに?
#1 スケジュール
#2 発行事業者の登録
#3 届出
#4 2年縛り
#5 不動産業
#6 交付義務の免除
#7 古物営業等
#8 帳簿のみの保存


関連記事

ページ上部へ戻る