長島正浩
(茨城キリスト教大学経営学部教授)
全31回のプログラムで、税理士試験・財務諸表論に強くなる!
論点ごとに本試験に類似したミニ問題を用意しました。まずは問題1にチャレンジし、文章全体を何度か読み直したところで問題2(回によっては問題3も)を解いてみましょう。そして、最後に論述問題を解いてください。
まずは問題にチャレンジ!
「取得」に対しては,ある企業が他の企業の( ① )を獲得することとなるという経済的実態を重視し,( ② )により会計処理することとなる。これは,企業結合の多くは,実質的にはいずれかの結合当事企業による( ③ )と同じであり,交付する現金及び株式等の投資額を( ④ )として他の結合当事企業から受入れる( ⑤ )を評価することが一般的な購入取引の会計処理と整合するからである。他方,企業結合の中には,いずれの結合当事企業も他の結合当事企業に対する( ① )を獲得したとは合理的に判断できないものがあり,このような「持分の結合」に対しては( ⑥ )により会計処理する。この考え方は,いずれの結合当事企業の持分も( ⑦ )が断たれておらず,いずれの結合当事企業も( ① )を獲得していないと判断される限り,企業結合によって( ⑧ )のリスクが変質しても,その変質によっては個々の( ⑧ )のリターンは( ⑨ )していないとみるものであり,ある種の非貨幣財同士の( ⑩ )を会計処理する際にも適用されている( ⑨ )概念に通ずる基本的な考え方でもある。しかし,( ⑥ )は廃止され,「持分の結合」に対しても( ② )により会計処理をせざるを得なくなった。
問題1
文中の空欄( ① )から( ⑩ )にあてはまる適切な用語を示しなさい。
問題2
上記文章をまとめると,結局,取得の会計処理はどのように方法によるか,簡潔に説明しなさい。
解答
問題1
① 支配
② パーチェス法
③ 新規の投資
④ 取得価額
⑤ 資産及び負債
⑥ 持分プーリング法
⑦ 継続
⑧ 投資
⑨ 実現
⑩ 交換
問題2
共同支配企業の形成及び共通支配下の取引以外の企業結合は取得となり、この場合における会計処理は、パーチェス法による。
基本的な考え方
取得原価が受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を下回り、負ののれんが生じる場合には、当該負ののれんが生じた事業年度の利益として処理する。
論述問題にチャレンジ!
(正の)のれんはどのように処理するか?
のれんは、資産に計上し、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却する。
なぜのれんについて規則的な償却を行う方法を採用したのか?
「規則的な償却を行う」方法によれば、企業結合の成果たる収益と、その対価の一部を構成する投資消去差額の償却という費用の対応が可能になる。のれんは投資原価の一部であることに鑑みれば、投資原価を超えて回収された超過額を企業にとっての利益とみる考え方とも首尾一貫している。さらに、取得したのれんは時間の経過とともに自己創設のれんに入れ替わる可能性があるので、取得したのれんの非償却による自己創設のれんの実質的な資産計上を防ぐことができ、「規則的な償却を行う」方法に一定の合理性があると考えられる。
〈執筆者紹介〉
長島 正浩(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師、会計事務所(監査法人)、証券会社勤務を経て、資格予備校、専門学校、短大、大学、大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後、松本大学松商短期大学部准教授を経て、現在に至る。この間30年以上にわたり、簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。
※ 本記事は、会計人コース2020年1月号別冊付録「まいにち1問 ポケット財表理論」を編集部で再構成したものです。
〈バックナンバー〉
第1回:キャッシュ・フロー計算書
第2回:1株当たり当期純利益
第3回:金融商品会計①
第4回:金融商品会計②
第5回:金融商品会計③
第6回:棚卸資産会計①
第7回:棚卸資産会計②
第8回:収益認識会計
第9回:固定資産会計①
第10回:固定資産会計②
第11回:ソフトウェア会計
第12回:研究開発費会計
第13回:繰延資産
第14回:退職給付会計
第15回:資産除去債務
第16回:税効果会計
第17回:ストック・オプション会計
第18回:自己株式
第19回:準備金の減少
第20回:純資産の部の表示
第21回:株主資本等変動計算書
第22回:企業結合会計①