【公認会計士論文式試験 財務会計論】超直前チェック 計算と理論の融合問題の特徴を押さえよう!


他に、実務家が好む論点である「会計上の変更」にも注意してもいいと思います。仮に会計上の変更に関する計算問題の後に理論問題が出題されるのであれば、「会計方針の開示」を基礎として、次の論点が狙われやすいと考えられます。

なぜ重要な会計方針の開示が必要なのか?

重要な会計方針の開示の必要性については、次の文言を参考にしてください。

重要な会計方針に関する情報は、財務諸表利用者が財務諸表の作成方法を理解し、財務諸表間で比較を行うために不可欠な情報であると考えられる。このため、本会計基準では、重要な会計方針に関する注記は、財務諸表を作成するための基礎となる事項を財務諸表利用者が理解するために、採用した会計処理の原則及び手続の概要(どのような場合にどのような項目を計上するのか,計上する金額をどのように算定しているのか。)を示すことを目的とすることとした。
会計上の変更基準44-2項

また、重要な会計方針の開示の必要性については、遡及処理基準でも具体的な内容が示されている以上、その部分が解答となる問題が出題される可能性があります。ただし、どのような場合にどのような項目を計上するのか、どのように計上する金額を算定しているのかという点については、継続性の原則にも示されているように、「採用する会計方針によって同一の会計事実について異なる利益額が算出される」という点が重要な会計方針の開示の前提となります。したがって私であれば、その点も踏まえて解答します。

【解答例】
一つの会計事実について二つ以上の会計方針の選択適用が認められている場合に、いずれの会計方針を採用するかにより、財務諸表の数値は異なる。そのため、財務諸表利用者が財務諸表を作成するための基礎となる事項を理解し、財務諸表間で比較を行うために、採用した会計処理の原則及び手続の概要を示すものとして重要な会計方針の開示が必要となる。

* この場合、企業が選択した会計方針(会計処理の原則及び手続)を開示しないと、財務諸表の期間比較を困難なものにし、企業の財務内容に関する利害関係者の判断を誤らせることになる。

なぜ会計方針は変更してはいけないのか?

継続性の原則の必要性については、次の文言を参考にしてください。

企業会計上、継続性が問題とされるのは、一つの会計事実について二つ以上の会計処理の原則又は手続の選択適用が認められている場合である。このような場合に、企業が選択した会計処理の原則及び手続を毎期継続して適用しないときは、同一の会計事実について異なる利益額が算出されることになり、財務諸表の期間比較を困難ならしめ、この結果、企業の財務内容に関する利害関係者の判断を誤らしめることになる。従って、いったん採用した会計処理の原則又は手続は、正当な理由により変更を行う場合を除き、財務諸表を作成する各時期を通じて継続して適用しなければならない。
企業会計原則注解注3

この論点についても、「採用する会計方針によって同一の会計事実について異なる利益額が算出される」という点から、会計方針の継続性が保たれなかった場合の問題点(期間比較を害する点)を示してください。

なぜ会計方針を変更したら遡及適用をするのか?

会計方針の変更を行った場合に過去の財務諸表に対して新しい会計方針を 遡及適用すれば、原則として財務諸表本体のすべての項目(会計処理の変更に伴う注記の変更も含む。)に関する情報が比較情報として提供されることにより、特定の項目だけではなく、財務諸表全般についての比較可能性が高まるものと考えられる。また、当期の財務諸表との比較可能性を確保するために、過去の財務諸表を変更後の会計方針に基づき比較情報として提供することにより、情報の有用性が高まることが期待される。
会計上の変更基準46項

最後に、念のため押えておきたい会計上の変更基準の制度的な論点があります。それは、会社法(会社計算規則)との関係です。過去の試験では、株主資本等変動計算書が導入された理由について会社法との関係で出題されています。同じような論点が会計上の変更基準にもあります。

遡及処理をすることは、過年度の財務諸表を個別上で修正することになるわけですが、会社法との関係が問題になります。この点、2006年5月に施行された会社計算規則により、これまでの商法では明示されていなかった過年度事項の修正を前提とした計算書類の作成及び修正後の過年度事項の参考情報としての提供が妨げられないことが明確化されました(「会計上の変更基準」第27項)。このような他の制度との関係などを考慮するという点は、我が国の会計基準の1つの特徴ともいえます(概念フレームワークの「副次的な利用」参照)。このような点は普段あまり対策されていないと思いますので、一応知っておいてください。

〈執筆者紹介〉
井上 修(いのうえ・しゅう)
慶応義塾大学経済学部卒業。東北大学大学院経済学研究科専門職学位課程会計専門職専攻修了、会計学修士号(専門職)。研究分野はIFRSと日本基準の比較研究、特別損益項目に関する実証研究などであり、2020年度に博士号(経営学)を取得見込み。
福岡大学「会計専門職プログラム」では、現役の大学生が多数、公認会計士試験や税理士試験簿記論・財務諸表論に在学中の合格を果たしている。本プログラムから平成30年度は10名、令和元年度は5名が公認会計士試験に合格。

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