【連載】<税理士試験簿記論&財務諸表論> 敏腕講師・かえる先生の独学合格ロードマップ2023(第8回) 


諸角 崇順

【編集部から】
会計人コースWebの記事を解析すると、税理士試験・会計士試験ともに独学での学習法についてPV(ページビュー)が非常に多いです。でも、独学の場合「いつ・何を・どう勉強していけばよいか」を自分自身で考えて実行しなければならず、この点が受験生の大きな悩みどころではないでしょうか。
そこで、本連載では、敏腕講師のかえる先生(諸角崇順先生)に、主に独学で税理士試験の簿記論・財務諸表論の学習をスタートする方、もしくは前回の試験までは専門学校を受講していたものの次回は独学で再チャレンジしようという方に向けて、毎月1回、その時々で実践すべき学習内容を提示して合格をナビゲートしていただきます(毎月1日更新予定・23年8月1日まで全11回予定)。
独学の方はもちろん、専門学校の講義を受講している方も是非参考にしていただければと思います。
それでは今月の学習ナビゲーション、スタート!

「願書」を期間中に必ず忘れずに提出しよう!!

みなさん、こんにちは! 先日、国税庁から令和5年度(第73回)税理士試験公告が行われました。詳しくは国税庁のホームページ(令和5年度(第73回)税理士試験公告)をご自分で確認していただきたいのですが、特に大切な部分を抜粋します。
ただし、ここではほとんどの受験生が利用すると思われる「郵送」での注意点を記しておきます。

<受験案内及び申込用紙(願書)の交付>
(1)交付期間(=願書を「請求」できる期間):
令和5年4月13日(木)から同年5月19日(金)まで(土曜日、日曜日及び祝日等を除く、午前9時から午後5時まで)
・郵送での請求期限:令和5年5月9日(火)まで
・郵送での請求方法:封筒の表面に「税理士請求」と赤書の上、返信用封筒(A4判大)を同封して、1人1部ずつ請求します。なお、返信用封筒には、郵便番号、住所及び氏名を明記し、140円分の切手を貼ること。
(2)交付場所:各国税局及び沖縄国税事務所

ひとこと補足
ちなみに、皆さんから願書を請求する際の切手代は120円(重さにより多少前後する可能性はあり)です。

<受験申込みの受付>
(1)受付期間(=願書を「提出」する期間):
令和5年5月9日(火)から同年5月19日(金)まで(当日までの通信日付印有効)
なお、封筒の表面に「税理士受験」と赤書の上、必ず一般書留、簡易書留又は特定記録郵便で送付すること。
(2)郵送先:試験を受けようとする受験地を管轄する国税局等

ひとこと補足
受験にあたり写真(縦4.5cm x 横3.5cm)が必要となるので、早めに準備をしておきましょう。ちなみに私は験を担いで、無人機ではなく、ちゃんとした写真館で撮ってもらいました(無事に簿財一発合格)。

また、受験願書の請求や提出の話ではありませんが、「今年の本試験からの主な変更点」として確認しておくことは以下のとおりです。

<今年の本試験からの主な変更点>
①会計学(簿記論・財務諸表論)に関しては、受験資格の制限が撤廃されたため「受験資格を有することを証する書面」の提出は不要となっています。
②本試験会場に持ち込める飲料が1リットル(蓋ができる容器のもの)までとなりました(ただ、1リットルとなると大きくて重いですし、一度口をつけた飲料は、常温下において爆発的に雑菌が繁殖しますので、350㎖や500㎖の飲み物にして、試験科目ごとに替えたほうがいいように思います。)。

ひとこと補足
今年からの変更点ではありませんが、スマートウォッチは使用できませんので、電子音等の鳴らない時計、たとえば、アナログの腕時計等を用意しておきましょう。

ゴールデンウィークの過ごし方が合否に影響する

さて、話は変わりまして、今、これを読んでいるのはゴールデンウィークのまっただ中。特に社会人の方にとっては、本試験までの最後のまとまったお休みだと思います。このゴールデンウィークという長期休暇をいかにうまく使うかで合否にかなりの影響が出てきます。

今年のゴールデンウィークは9連休という方もいるでしょう。なので、普段の週末程度のお休みではできないことに取り組んでいただきたいと思います。

もちろん、勉強の進み具合、苦手論点の種類によっても取り組むべき課題は変わってきますが、簿記論であれば、個別計算問題集の全ての問題を制限時間内に満点が取れるまで繰り返し解き、もう個別計算問題については復習する必要ない、と言えるレベルまでもっていくこと(解く際は、適宜、復習して下さいね)。財務諸表論であれば、重要理論を全て暗記する、などです。

とにかく、数日かけないと攻略できない大きな課題をみつけ、それをこなしてほしいと思います。勉強には、毎日1時間ずつ分けて勉強したほうが良い論点もあれば、一気に全体を仕上げたほうが良い論点もあります。自分なりに、普段はできないけれど、「越えなければいけない大きな課題」をこなしてみてください。

それでは、科目別のお話しをします。

簿記論・財務諸表論共通ー初見の問題でアウトプット練習

ゴールデンウィークが明ければ、多くの資格学校ではいわゆる「直前期」に入り、毎週模擬試験が実施されることになります。それはゴールデンウィークまでにインプットした知識を得点につなげる練習(アウトプット)をするためです。

いくら知識を増やしても正しく使えなかったら、そんな知識は邪魔になるだけです(あまり良い例ではありませんが、ロールプレイングゲームでショットガンという武器を手に入れたとします。でも、それを敵に「投げて」いいでしょうか? 「撃つ」のが正しい使い方ですよね)。

よって、独学の方も、市販の模擬試験問題集で毎週、初見の問題でアウトプットの練習をしてほしいと思います。可能であれば資格学校の直前講座だけ申し込んで、「アウトプットの練習」と「客観的な添削」を受けてほしいと思います(特に理論のある財務諸表論)。

簿記論ー「総合→個別計算問題」の流れにシフトチェンジ

今までは個別計算問題で知識を手に入れ、それを総合計算問題で試す、という流れだったと思いますが、ゴールデンウィーク明け以降は、「初見の総合計算問題(模擬試験)を毎週最低1問は解いて、間違えた論点に対して個別計算問題集に戻って確認する」という流れに変えてみてください。当然ですが、ゴールデンウィーク中に個別計算問題集を完璧に仕上げている、という前提です。

今後は、個別計算問題集で見落としていた知識の穴をあぶり出すとともに、個別計算問題が総合計算問題の中で、どんな論点同士で絡み合ってくるのか、個別論点のどれから解けば効率よく解けるのか、など戦略面の実践も必要です。そのためには、一度解いた問題ではなく、初見の問題を数多く用意してこなしていただければと思います。

1週間あたりの勉強時間の目安:18時間前後

財務諸表論(計算)ー理論の比重が増える分、一問を大切に解く

財務諸表論(計算)も簿記論と同じく総合計算問題から個別計算問題、という流れに変えてみてください。

直前期は理論の負担が一段と増しますので、計算に充てる時間をそこまで増やせないと思います。集中して一問一問を大切に解いていきましょう!

1週間あたりの勉強時間の目安:10時間前後

財務諸表論(理論)ー理論のストックを増やしていく

ゴールデンウィークまでは、覚えては忘れ、次の理論を覚えては忘れ、ということを繰り返していたと思いますが、今後は、覚えた理論を忘れないように記憶の維持をしつつ、さらに次の理論を覚えていくことになります。理論のストックをどんどん増やしていくわけです。

よって、「今まで覚えた理論を忘れていないか」を確認する時間が日々の学習時間に上乗せされるので、必然的に理論に割く時間が増えてきます。しかし、合格するためにはこの作業を避けて通ることはできません。きついとは思いますが、とにかく自分を甘やかすことなく、淡々とこなしていくようにしてください。ファイト!!

1週間あたりの勉強時間の目安:15時間前後

第9回は6月1日(木)にUP予定です。
ご期待ください!

<執筆者紹介>
諸角 崇順
(もろずみ・たかのぶ)
大学3年生の9月から税理士試験の学習を始め、23歳で大手資格学校にて財務諸表論の講師として教壇に立つ。その後、法人税法の講師も兼任。大手資格学校に17年間勤めた後、関西から福岡県へ。さらに、佐賀県唐津市に移住してセミリタイア生活をしていたが、さまざまなご縁に恵まれ、2020年から税理士試験の教育現場に復帰。現在は、質問・採点・添削も基本的に24時間以内の対応を心がける資格学校を個人で運営している。
ホームページ:「かえるの簿記論・財務諸表論」

【連載バックナンバー】
第1回(10月の学習ナビ)
第2回(11月の学習ナビ)
第3回(12月の学習ナビ)
第4回(1月の学習ナビ)
第5回(2月の学習ナビ)
第6回(3月の学習ナビ)
第7回(4月の学習ナビ)
第8回(5月の学習ナビ)
第9回(6月の学習ナビ)
第10回(7月の学習ナビ)
第11回(8月の学習ナビ)

【書籍紹介】

『税理士試験 財務諸表論 直前予想問題集』(中央経済社)
本記事の執筆者である諸角崇順先生が運営する「かえるの財務諸表論」出題の予想問題も掲載した、他流試合にピッタリな問題集です。
ぜひ「初見の問題」を解くトレーニングにご活用ください!
姉妹書に『税理士試験 簿記論 直前予想問題集』もあります。
『次こそ!税理士試験に合格する方法』(中央経済社)
本記事の執筆者である諸角崇順先生の学習アドバイスをはじめ、合格体験記や独立開業日誌など会計人コースWebの記事に加筆・編集をしてまとめた1冊です。
ぜひご覧ください!

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