長島 正浩(茨城キリスト教大学教授)
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Q1(空欄補充)
退職給付債務から年金資産の額を控除した額を( ① )として計上する。
退職給付債務は,退職時に見込まれる退職給付の総額(退職給付見込額)のうち,期末までに( ② )していると認められる額を割り引いて計算する。
勤務費用は,退職給付見込額のうち当期に( ② )したと認められる額を割り引いて計算する。
利息費用は,( ③ )の退職給付債務に割引率を乗じて計算する。
年金資産の額は,期末における( ④ )により計算する。
A
① 負債
② 発生
③ 期首
④ 時価
*退職給付会計基準13項,16項,17項,21項,22項
『退職給付費用=勤務費用+利息費用-期待運用収益±未認識項目の費用処理額』(桜井23版,245頁「設例10」)
Q2 退職給付債務から年金資産の額を控除した額を負債として計上する処理をする理由を述べなさい。
A
年金資産は退職給付の支払いのためのみに使用されることが制度的に担保されていることから,これを収益獲得のために保有する一般の資産と同様に企業の貸借対照表に計上することには問題があり,かえって,財務諸表の利用者に誤解を与えるおそれがあると考えられるから。
*退職給付会計基準69項
『資産とは報告主体が支配している経済的資源でなければならない』
Q3 数理計算上の差異とは何か?
A
「数理計算上の差異」とは,年金資産の期待運用収益と実際の運用成果との差異,退職給付債務の数理計算に用いた見積数値と実績との差異及び見積数値の変更等により発生した差異をいう。なお,このうち当期純利益を構成する項目として費用処理されていないものを「未認識数理計算上の差異」という。
*退職給付会計基準11項
『見積と実績の間には必ず差異が生じる』(桜井23版,245頁「設例10」)
Q4 過去勤務費用とは何か?
A
「過去勤務費用」とは,退職給付水準の改訂等に起因して発生した退職給付債務の増加又は減少部分をいう。なお,このうち当期純利益を構成する項目として費用処理されていないものを「未認識過去勤務費用」という。
*退職給付会計基準12項
『退職給付制度の新設や支給水準の引上げが行われた場合,退職給付引当金の残高が不足する』(桜井23版,243頁)
Q5 退職給付とは?
A
退職給付とは,一定の期間にわたり労働を提供したこと等の事由に基づいて,退職以後に従業員に支給される給付をいい,退職一時金及び退職年金等がその典型である。
*退職給付会計基準3項
『退職年金までも含まれる』
Q6 退職給付の性格とは?(3つ)
A
賃金後払説:従業員が提供した労働の対価として支払われる賃金給与の後払いである。
功績報償説:従業員の功績に対する褒賞としての報酬である。
生活保障説:退職後の従業員の生活保障のための給付である。
*退職給付会計基準53項
『基準は賃金後払説に立っている』
◎復習しましょう!
1.CF計算書
2.一株当たり当期純利益
3₋1.金融商品会計①‐⑦
3₋2.金融商品会計⑧‐⑭
3‐3.金融商品会計⑮‐⑳
4-1.棚卸資産会計①‐⑥
4-2. 棚卸資産会計⑦‐⑫
5‐1.収益認識会計①‐⑦
5₋2.収益認識会計⑧-⑫
6.リース会計①‐⑥
7.固定資産の減損①‐⑩
8.ソフトウェア会計①‐⑥
9.研究開発費会計①‐⑦
10.繰延資産①‐⑦
〈執筆者紹介〉
長島 正浩(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師,会計事務所(監査法人),証券会社勤務を経て,専門学校,短大,大学,大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後,松本大学松商短期大学部准教授を経て,現在に至る。この間35年以上にわたり,簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。
*本連載は,『会計人コース』2020年1月号付録『まいにち1問ポケット財表理論』に加筆修正したものです。