今日は第71回(令和4年度)税理士試験の合格発表。試験結果は以下のとおりでした。
【簿記論】 受験者 11,166名 → 合格者 1,841名(合格率 16.5%) 【財務諸表論】 受験者 9,198名 → 合格者 2,196名(合格率 23.9%) 【所得税法】 受験者 1,350名 → 合格者 170名(合格率 12.6%) 【法人税法】 受験者 3,532名 → 合格者 453名(合格率 12.8%) 【相続税法】 受験者 2,548名 → 合格者 325名(合格率 12.8%) 【消費税法】 受験者 6,086名 → 合格者 726名(合格率 11.9%) 【酒税法】 受験者 470名 → 合格者 59名(合格率 12.6%) 【国税徴収法】 受験者 1,702名 → 合格者 234名(合格率 13.7%) 【住民税】 受験者 378名 → 合格者 48名(合格率 12.7%) 【事業税】 受験者 302名 → 合格者 38名(合格率 12.6%) 【固定資産税】 受験者 941名 → 合格者 130名(合格率 13.8%) |
これから徐々に結果通知書が届くことでしょう。この結果通知書には、残念な結果となってしまった場合、点数が示されます。
合格率が10%~20%ということは、8割~9割の受験生が涙をのむということ。しかし、どんなにつらくても、立ち直ってリスタートをきる必要があります。
そこで、来年の税理士試験でリベンジを目指す受験生に向け、結果通知書の点数を受けて今後どのようにしていけばよいか、並木秀明先生(千葉経済大学短期大学部教授)にアドバイスをいただきました!
59点~50点だった方へ
この点数の方にはよく聞かれる、「何が悪かったのか」と。
運も実力のうちである。59点で不合格となった場合は、運がなかったと思おう。
ただ、それは「次こそ合格できるチャンスがある」ということだ。
野球やサッカーの試合では、対戦相手や日にちが変わると勝てることがある。それと一緒である。
しかも、税理士試験の場合、野球やサッカーと違って、相手(試験問題)が格段にレベルアップすることはない。スポーツだと、相手も自分と同じように練習して仕上げてくるが、税理士試験のレベルは基本的に一定である。
だからこそ、最低限、現状を維持し、プラスαの学習をしていこう。
プラスαの学習というのは、1日に解く問題を1問増やす、1論点でも多く勉強する、ということだ。
対戦相手のレベルが一定なら、勉強することで、運と自信はおのずとついてくる。
税理士試験に「たられば」はないが、問題が少しでも違っていたら、緊張していなかったら、合格していたかもしれない。やけくそにならず、勉強を続けてほしい。
もうひとつ、この点数の方に振り返っていただきたいことがある。
本試験で1か所に時間をかけすぎてはいなかっただろうか。これは、税理士試験をはじめて受験した方が陥りがちなミスである。
問題を飛ばす勇気、現場で意思決定する力を身につけよう。
49点~40点だった方へ
この点数の方は50点をとれていない。60パーセントを落としている。この時点で完全に勉強不足である。
ただ、実力がないということではない。1か所にこだわってしまうと、このレベルに陥りやすい。
知識を均等化する努力をしていこう。
会計科目であれば、テキストの最初から最後まで勉強したか、税法科目であれば、絶対に覚えなければいけない条文を暗記したか。
私も受験生時代、税法をこんなに覚えるのかと驚愕した。
しかし、努力は無駄にならない。必要なのは「意識改革」である。
39点~30点だった方へ
受験したのが1科目でこの点数となった方は、とりあえず学習範囲が終わったから受験した、といったところだろうか。職業柄忙しく、追いつくのに苦労したパターンかもしれない。
同じテキストや同じ問題集を繰り返さないと、こうなる。市販の教材だろうと専門学校の教材だろうと、それは変わらない。
決して、異なる問題を何問も解く必要はない。手元にある教材でかまわないので、その回転数を上げていこう。
29点以下だった方へ
厳しい見方をすると、はなから「合格」を狙っていなかったことが考えられる。それか4月以降に勉強を始めたなど、短期間しか勉強していないパターンか。なんにせよ、しっかり1年間勉強していれば、通常はこの点数にならない。
私が受験生時代、消費税は物品税といった。条文もすごく短い。高を括って3か月で受験した。そのときは運よく合格できたが、今の税法科目は1年は勉強しないと合格できない。
テキストを読むのはもちろんだが、国税庁ホームページ「税理士試験 出題のポイント」を見てみるのもよいだろう。
会計科目なら簿記2級、場合によっては3級のテキストを振り返ろう。
基本書の熟読も必要である。ぜひ拙著『はじめての会計基準』(中央経済社)などを読んでいただきたい。
また、独学をしてきた方もいるかもしれない。税理士試験がどういうものかよく把握せず、確固とした勉強法を身につけないまま受験した可能性もある。必要であれば、専門学校の門をたたくことも考えよう。
<執筆者紹介>
並木 秀明(なみき・ひであき)
千葉経済大学短期大学部教授
中央大学商学部会計学科卒業。千葉経済大学短期大学部教授。LEC東京リーガルマインド講師。企業研修講師((株)伊勢丹、(株)JTB、経済産業省など)。青山学院大学専門職大学院会計プロフェッション研究科元助手。主な著書に『はじめての会計基準〈第2版〉』、『日商簿記3級をゆっくりていねいに学ぶ本〈第2版〉』、『簿記論の集中講義30』、『財務諸表論の集中講義30』(いずれも中央経済社)、『世界一わかりやすい財務諸表の授業』(サンマーク出版) などがある。