「基礎固め」からスタート! 専門学校講師が教える 簿記論・財務諸表論 初学者の1年間の過ごし方


9月になり、新たに税理士試験の勉強を始めた方もいらっしゃると思います。

専門学校などでも、来年度の試験に向けて税理士試験講座がスタートしています。

ここでは、毎年多くの合格者を輩出している 資格の学校TAC で財務諸表論の講師をされている加茂川 悠介先生に、はじめて税理士試験(簿記論・財務諸表論)の勉強を始めた方に向け、1年間の心構えや学習で大切にすることなど、アドバイスをいただきました。

加茂川 悠介

はじめまして! TACで講師をしている加茂川です。

今回は、はじめて税理士試験、とくに簿記論・財務諸表論の勉強をされる方に向けてお話をさせていただきます。

はじめての学習となると、「どのように勉強すればいいのかな」とか、「何に気をつけて勉強したらいいのかな」など、不安もあることでしょう。

基本的に専門学校を利用されていることが前提のお話になりますが、初学者の方にとって、少しでも助けになれば幸いです。

基礎期(9月~12月):しっかり「基礎固め」をする

ご存じのように、税理士試験は例年8月に行われます。そのため、9月から学習するとなると、おおよそ1年ぐらい勉強することになります。

だからこそ、この基礎期においては、文字どおり「基礎固め」を徹底してください。

具体的には、多くの専門学校などで、この時期から税理士試験講座が開講するでしょう。

年内(12月まで)は、ほとんどの学校で基本的なことを学習します。

たとえばTACでは、毎回の講義の復習および確認として次回の冒頭でミニテストを、またテキストを1冊終えるごとに実力テストを行っています。

「復習」中心でかまいませんので、ぜひ、これらのテストで100点満点を取れるように準備してほしいと思います。

もちろん、100点を取ることは簡単ではありませんが、目標を高く設定することが合格への近道だと思います。

100点を取れなかったからといって落ち込む必要もありません。間違えた箇所はしっかり復習しましょう。それが「基礎固め」につながります。

また、財務諸表論には「理論」があり、ある程度理解しながら暗記をしなければいけません。

よく「いつから、どのくらいのペースで覚えていけばいいですか?」と聞かれます。

私は講義のなかで、「年内は計算を徹底的にやって、年明けから少しずつ、演習(応用期を参照)の出題範囲に合わせて覚えていく」ように伝えています。

「理論」といっても、計算とまったく異なることを覚えるわけではなく、計算の知識が大いに役立ちます。

また、税法科目も含めて理論のある科目は、本試験に近づけば近づくほど、「理論暗記の時間」が増えていきます。

したがって年内は、ミニテストおよび実力テストの対策として必要最小限の理論暗記で大丈夫です。

本試験直前にたっぷりと理論暗記に時間を割けるように、基礎期は、簿記論・財務諸表論ともに「計算力」を可能なかぎり高めてください

応用期(1月~4月):「準備」と「復習」を大切に

税理士試験の合格発表が例年12月に行われます。上位2割ぐらいの方が合格するとしても、8割ぐらいの方は残念な結果となってしまいます。

そのため、多くの専門学校で、年明け1月から再度の試験合格を目指すコースが始まります。たとえばTACでは「上級コース」が開講し、9月からはじめて勉強している方(初学者)も受験経験者と一緒に、本試験を想定した演習(テスト)を解くことになります。

これまで積み上げてきた「努力」や「勉強時間」が圧倒的に異なりますから、初学者の方は戸惑うこともあるでしょう。でも、大丈夫です。

毎回の演習で高得点がとれるようにしっかりと準備をし、演習後はしっかりと復習をすることにより、知らず知らずのうちに実力がついてきます。焦らず、着実に、一歩一歩進んでいきましょう!

直前期(5月から8月):最後の1ヵ月の「諦めない」気持ちが合格のカギ

多くの専門学校で「直前対策」や「試験委員対策」が始まり、「もうすぐ本試験だなあ」と感じられると思います。

また、とても大切な「受験申込」も例年4月~5月にあるので、忘れずに、早めに、行うようにしましょう。常日頃の努力が水の泡にならないように!

この時期になれば、初学者の方も受験経験者の方との差を感じながら、「演習に向けてどのような準備をすればよいのか」わかってくることでしょう。油断することなく、直前期も、毎回の演習に向けてしっかりと準備をし、演習後は時間をかけて復習をしていただきたいです。

また、多くの専門学校では、講義が7月中旬で終わるかと思います。しかし、ここから本試験までの「最後の1ヵ月」が初学者の方にとっては、とても重要です。私自身、何度も、この最後の1ヵ月間で実力をグッと上げて、見事に合格された方を見てきました。初学者の方は特に、「最後まで諦めない」気持ちが大切だと思います。

最後に

何よりも大切なことは「健康」です。本試験当日、体調不良で本来の実力を発揮できないのはもったいないので、疲れているときは無理をせず、しっかりと体を休めてください。健康管理も受験勉強のうちです。

また、「AIの発達によって税理士業務はなくなるのではないか」などと言われることもあります。しかし、実際にクライアントと直接話し、「何を考え、何を求めているのか」を把握することは、まだまだ生身の人間にしかできないことだと思います。AIによって我々の生活が豊かになり、それとともに既存の仕事がなくなるのではないかという不安は、なにも税理士業に限った話ではありません。それならば、「税理士試験の勉強をする」という新たな道を進んでみるほうが、人生がより充実したものになるのではないかと思います。

ここまでお読みいただき、どうもありがとうございました。勉強で不安を抱いたときは、専門学校に通われている方は講師や友人に、独学の方も知り合いの受験経験者や友人に相談してみるのがいいでしょう。皆さまのご健闘を心よりお祈り申し上げます。

【執筆者紹介】
加茂川 悠介(かもがわ・ゆうすけ)
税理士。中央大学法学部、早稲田大学大学院法学研究科修了後、大手専門学校で教鞭をとる。その後、立命館大学大学院法学研究科で税法を学び、税理士事務所勤務、河合塾ライセンススクール講師を経て、財務捜査官採用試験に合格、宮城県警にて勤務。立命館大学大学院では成績および論文を評価され、奨学金全額返還免除を受ける。現在、資格の学校TAC税理士講座のほか、近畿大学等でも講義を行う。


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